わが子のための“先生”活用法とは?:第29回

inter-edu’s eye
小学校の先生に不信感を持つ保護者が多い昨今ですが、先生が置かれた状況を知り、接し方さえわかれば、先生と協力して子どものために動くことができます。そのヒントがたっぷり詰まった本が登場しました。

◆小学校の先生への理解が深まる

小学校の先生への理解が深まる

小学生のお子さまを持つすべてのお母さまに目を通してもらいたいと、心から思えた単行本をご紹介します。『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』です。著者は、30年以上小学校で教鞭をとってきた多賀一郎先生。多賀先生は、全学年のクラス担任をした経験を持つベテラン教諭で、今は全国で教師の育成や保護者の相談にも携わっておられる方です。

帯に、「この本を読むと、先生に腹が立たなくなる。学級でトラブルが起きた時、保護者として何をすればいいかわかる」と書いてありました。正直、読む前にはそんなに信用していなかったのですが、予想は大きくはずれました。本当に心が軽くなり、学校や先生に対して親としてどうふるまったらいいか、わかった気になったのです。

学校や先生へはちょっとしたことで不信感が生じてしまいがちですが、先生も親と同じ、欠点があるふつうの人間という原点に立ち返れば、先生との関係をよい方向に軌道修正でき、その結果子どものためになるという安心感を得ることできるのです。学校や先生への不信感が常態化する前にぜひ読んでほしい本なのです。

◆“タイプ別”先生対策がわかる!

それでは、目次を見てみましょう。

第1章 先生について知りましょう
第2章 子どもたちの心と体 6年間の成長の見通し
第3章 他の子と違う? と思ったら
第4章 願いが叶う 苦情・要望の伝え方
第5章 いじめ・学級崩壊に対して保護者ができること
第6章 先生のウラ技、教えます
第7章 ぼくが保護者からよく受ける相談


第1章は、タイトル通り、先生ってどういう人たちなのかがわかってくる章です。先生を10のタイプに分けて、タイプ別に保護者としてどう対処したらいいかが紹介してあります。なんてわかりやすいの!と感心しました。加えて、今の小学校の先生が置かれている厳しい状況がわかります。ベテラン教師がどんどん減っていること。仕事がどんどん増えていること。社会全体と教育界の変化によって、今の先生たちは時間的にも精神的にも余裕がない状態にあります。

第2章は、とても貴重な章です。小学校1年生から6年生まで、学年ごとに、子どもたちがどんな成長段階にあって、そのために何が起きているのかがわかってきます。親は、自分の子と周囲の友だちぐらいしか見ることはできません。長年小学生を間近に見てきた多賀先生でなければ語れない、とてもリアルな成長のようすが描かれていて、具体的な子どもの行動について、なるほどこういうことか、と納得することができます。

第3章は、発達障がい、学習障がいとみなされた子どもたちについて。わが子がそうだったら、あるいは友だちにそういう子がいたら、大人としてどうしたらよいのか、簡単には答えのでないことではありますが、少なくともこの章を読んでおけば間違った対応はしなくなる安心感があります。

そして第4章の「願いが叶う 苦情・要望の伝え方」。この章があるから、この本はすぐ手にとれる場所にずっと保管しておきたいのです。「授業がつまらない」「学習の速度が遅い」「連絡がない」「ひいきしている」「子どもへの言葉がきつすぎる」などなど、6年の間には、誰でも一度は先生に訴えたいと思う具体的な苦情・要望ごとに、どんなふうに伝えたら先生が聞き入れてくれるのかが書いてあります。伝えたいことは同じでも、会って伝えるか電話か、どんな言い方がよいのか、話し始めはどうするか。時間的余裕がなく、しかも分けへだてなく生徒・保護者に対応しなければならない先生への配慮とはどういうものなのか、具体的な方法がわかってきます。賢い保護者の中には、すでに実践しておられる方もいるでしょうが、親のふるまいでわが子が損をしてしまわないように、この章をチェックしておくとよいと思います。

◆親を叱らず、励ましてくれる本

さらに、第5章には、いじめや学級崩壊に出会ったとき保護者に何ができるかが書いてあり、あらかじめ読んでおくと万一のときにあたふたしなくなるでしょう。第6章は、親子関係に取り入れたい子育てのウラ技。子どもを落ち着かせる、聞く力をつける、書く力をつけるなど、先生だからこそわかる、目からウロコの内容が紹介されています。

先生が親にアドバイスする本というと、つい叱られちゃうかも?と身構えてしまう方もいるかもしれませんが、本書にはそういうところが全く見あたりません。それには子育て中の担当編集の女性の言葉もあったようで、そのことを多賀先生は「おわりに」に書いておられます。その結果、「おうちの方の不安を少しでも解消したい、学校への不信がちょっとでも弱まるように……そう思って筆が進みました。」とのことです。

そんな担当編集の福原さんから、小学生ママに贈るメッセージを最後にお届けします。

メディアが学校を取り上げるのは事件が起きた時が多く、紹介されるのは特殊な例ばかりです。ごく普通の小学校の日常、よくいる先生の性質、平均的な子どもの育ちについては、実は知っているようで知らないことが多いと思います。この本には、そうしたあまり知られていない小学校の実態が書かれています。豊富な現場経験(全学年をそれぞれ4回以上経験)があり、日々若手教師や保護者の悩みに触れ、子どものことを考えている著者ならではの、「教師」「保護者」「子ども」三者に対するフェアな視点があり、アドバイスにはどれも納得させられます。多少のことには目をつぶっても学校と協力しよう(我が子のために!)という気持ちに自然となってくるはずです。でも、ここぞという時の闘い方も書かれていますので、ご安心を。小学生のいる家庭に一冊、子育てに不安を感じたらいつでも開いてほしい本です。

学校と一緒に安心して子どもを育てる本-小学生保護者の心得-,多賀一郎,小学館

学校と一緒に安心して子どもを育てる本-小学生保護者の心得-
多賀一郎著、小学館刊、1100円+税

30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる著者が、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授。小学校生活についてのあらゆる疑問から、家庭でのちょっとした悩みまで、きめ細かくユーモアたっぷりのアドバイスがあります。読めば読むほど、子育ては「学校と一緒にできる」ということに気がつき、子育てに閉塞感を感じている人はそこから解放されるでしょう。新一年生の保護者はもちろん、どの学年であっても、いま心の中にある不安を解消する手立てが見つかる本です。著者の動画メッセージはこちらから
…購入はこちらから

多賀一郎,エデュママブック

著者の多賀一郎(たが・いちろう)先生
追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立祖湯学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。近著『多賀一郎の荒れない教室の作り方』(黎明書房)、 『女性教師だからこその教育がある!』(学事出版)、『子どものしみこむいいお話』(明治図書出版)ほか、教師向けの著書が多数。多賀マークの教室日記→http://www.taga169.com/


中学受験・子育てをよりわかりやすくサポート!エデュナビはリニューアルいたしました!

エデュナビから皆さまへ

いつもエデュナビをご覧いただきありがとうございます。
この度「エデュナビ」は、リニューアルいたしました。

URLが変更になっているので、ブックマークやお気に入りの変更をお願いいたします。
これからも、皆さまの受験や子育てをサポートできるよう、コンテンツの充実とサービスの向上に努めてまいります。

エデュママブック これまでの記事