第16回 いろんな親御さんがいます。でもお母さんはブレないで!

子どもの能力を引き出す、やる気にさせる上手なほめ方・叱り方

第16回 やる気を引き出す「子どものほめ方・叱り方」(2013年7月19日)

受験塾に通うようになると、それまで出会ったことのないような考え方の親御さんとも知り合うようになります。世の中、いろいろなご家庭があるものです。

「うちは小学校受験をしたけど、準備が遅くて志望校はダメだったの。だから、小学校は公立にして中学受験でリベンジよ。一年生のときから、S塾に通わせているわ」というお母さんは、なんと小学校入学時の記念写真を、志望する私立名門校の門の前で撮ったとか。「どの私立?」と聞くと、偏差値トップの超有名女子校。いい学校に行きたい気持ちがどんどんエスカレートしているようでした。

ご両親ともお医者さんのご家庭。お母さんは、「親と同じかそれ以上の学校に行ってほしい。主人はT大で、私はK大なの」。ところが息子さんは、幼い感じでのんびりタイプ。お母さんの情熱が息子さんには全然通じないみたいで、塾の成績もあがらない。焦ったお母さんは、塾の先生に裏口入学の「つて」はないかと相談したという噂(あくまで噂ですが)。その息子さんは、どうにかお母さんも納得の偏差値の学校に合格したものの、その学校の厳しい雰囲気になじめなかったらしくて不登校に。今は公立の中学に通っています。

ケンカする2組の親子

「女の子なら、そのまま大学まで行ける学校じゃないと意味がない!」と公言していたお母さん。その娘さんは第三志望の大学併設校になんとか合格。ところがその女の子、ライバル関係にあるクラスメートの女の子が、高校までしかない学校だけに合格したのを知って、「大学もない遠くの学校に入るなんて、バカみたい」と言ってしまった。もちろん言われたほうの女の子は激怒! ちょっとしたいじわるをしたものだから、2組の母娘の間で、小学校の担任の先生も巻き込んでのバトルが勃発しました。互いに別の中学校に行った今でも、冷戦は続いているようです。

どのエピソードも、中学受験から解放されて数年たつと、「そんな人もいたわね」と思い出すだけですが、中学受験前後の熱かった時期には、それなりにインパクトがあったような気がします。親は親で一緒に受験を目指す人の動向が気になり、その話や行動に影響を受けるもの。「ほめ方叱り方」がテーマのこの連載にこれらのエピソードを書いたのは、子どもより親のほうが周囲の影響を受けやすく、いろんな話を聞いて、子どもへの対応がブレたり変わったりしがちだと、私自身が反省しているから。

中学受験を目指す家庭には、その家庭の数だけ特別な思いがあり事情があります。でも、成績が似通っていたり家庭環境が似ていると、つい「あそこの子はこうなのだから」とか「あの家はこうしているのだからうちも」と思ってしまいがち。でも違うんですよね。あくまでもうちの子が、うちの事情の中で中学受験をする。以前にも書きましたが、お母さんは、受験の厳しい勉強生活に耐えているわが子だけを、しっかり見ていてほしいと思います。

<<プロフィール>>高木 潤子(たかぎ じゅんこ)
若いころから週刊誌・女性誌で、子育て・インテリア・料理など幅広い分野の記事を取材執筆。仕事量を減らして二児を育て、インターエデュはお受験ママとして活用。現在も取材・編集・執筆と幅広く活躍中。

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