第8回 元中受ママが伝授!国語の語彙力を身につける方法

中学受験ギモン解決所
2015年10月28日

第8回 元中受ママが伝授!国語の語彙力を身につける方法

… ごあいさつ …
はじめまして。私、かつて二人の息子で中学受験を経験しました、元中学受験ママでもあります、春野陽子と申します。
現在は受験ドクターという個別指導塾で国語講師をしております。
みなさまからお届けいただいた質問や掲示板でお困りの書き込みに対し、「先輩ママ」として、そして時には「プロ講師」としてお答えすることで、少しでも皆さまの中学受験成功の一助となりましたら光栄でございます。

国語の語彙力を身につけるにはどうしたらいいでしょうか?

 中学受験の勉強を始めて、ふと気が付くと国語の成績が低迷 。このとき、「うちの子、語彙力がない!」と慌てだすお母さまは意外に多いものです。 でも、本当に語彙力がほかのお子さまと比べて著しく低下しているのでしょうか?

語彙力が不足していることはない?

語彙の不足

実は、「うちの子、語彙力がないんです」というお悩みの大半は杞憂であることが多いのが、長年学習相談をしてきた感覚値です。

帰国子女で、海外の現地校にいた期間が長いのであれば、語彙が少ないお悩みには、ある程度の対応が必要ですが、日本にいて、小学校に通い、中学受験を決心したご家庭の場合、語彙数が小学生の平均から大きく逸脱するケースはまれなのです。大人の目から見れば、小学生の語彙数が少ないのは当たり前。

では、なぜ国語のテストのときに、語彙不足による失点が目立つのでしょうか。
それは、中学受験に出やすい語彙に関して、きちんとした学習がなされていないから
実は、中学受験に出やすい語彙はある程度決まっています。
ですから、市販の語彙を強化する類の参考書や問題集をやみくもにやるよりも、確実に「中学受験必須の語彙」を身に付ける必要があります。

中学受験対策で覚えたい語彙と対策

中学受験対策

一番覚えなければならないのが、テストに出てくる語彙ですね。とくに選択肢問題に出てくる選択文の中の語彙は、たとえ正解でない選択肢でも、不明な語彙は必ずチェックしましょう。
テストに出てくる語彙は、間違いなく中学受験国語における語彙習得の優先順位の筆頭です。

その際に、「ボキャブラリーノート(語彙帳)」を作っておき、そこに書き込んでいきましょう。そして、1週間に1回、見直して覚え直すのです。
もちろん、お通いの塾のテキストで学習する「和語」「概念語」「外来語」はしっかり押さえましょう

「和語」は、たとえば「やわらぐ」とか「いそいそと」「かいがいしい」などのひらがなでの表記が一般的な言葉。「概念語」は、対義語とともに覚えると効率的です。「抽象⇔具体」「主観⇔客観」「偶然⇔必然」「故意⇔過失」など。

これは、SAPIXから出ている『漢字の要』のSTEP1マスターブックの巻末あたりにまとめられているものが使いやすいですね。
日能研の本科テキストでも、まとめて出てくる一覧表が便利です。

そして「外来語」。いわゆるカタカナ表記の言葉です。
「オーディエンス」「プロセス」「モラル」など。
これも各塾である決まった時期にまとめてテキストに出てきますので、コピーして、いつも手元に持っているようにして覚えましょう。

入試頻出語を押さえておけば、受験本番で、それ以外の語で意味がわからなくても、ほかの受験生にもわからない、と思うことができます。

究極の語彙不足対策はコレ!

究極の語彙不足対策

そして、最後に究極の語彙不足対策をお教えいたしましょう。
それは、文脈判断をして不明な語の意味を類推し、とりあえずブルドーザーのように、力技で読み下しながら進んでいく力の養成です。

いつぞや渋谷教育学園渋谷中学で、「アイデンティティ」の話題で文章が出題されたことがありました。多くの受験生にとって、「アイデンティティ」なんて、「自己証明」とたとえ暗記していたとしても、本当のところは「分かったような分からないような」語彙であることは間違いありません。

英語と同じで、実は、知らなくても前後の文脈から意味を類推し、文章を読み砕く、設問の解答を導くことは可能です。分からない語が出ても、立ち止まらず、「仮の意味」を設定して、とりあえず先へ先へと読み砕く力。これこそが「読解力」です。

しかし、多くの小学生はこれができません。だから、もしも今、これをお読みのご家庭が、4年生以下であれば、読書というのは、やはり「読解力」を磨くのに適していると言わざるを得ません。

ただし、この場合の「読書」とは、既知の内容の文章やライトな文章を読んだ体験を指すのではなく、未知の事柄に関する硬派な文章を読む訓練をどれだけ積んだか、その体験を指します。年齢より、ほんの少し背伸びした読書が、「読解力」を磨くのです。

5年生以上は、読書で語彙力を強化する、などという悠長な方法はとれません。
ですから、テストやテキストで知らない語彙に出会ったら、すぐに意味を調べるのではなく、意味を「類推」して、それから辞書を引く、大人に聞く、という手順を踏むことをおすすめします。

意味を「類推」してから調べた時の心の動き、これこそが知らない語彙と「出会う」体験です。「そういう意味だったのか」という驚きは、あらかじめの「類推」なしには生まれません。ぜひお試しください。

中学受験ギモン解決所

春野 陽子さんプロフィール
長男はSAPIXへ通塾し巣鴨中学校から東京大学理科Ⅱ類に進学、次男は転塾(日能研→SAPIX→市進)を経て海城中学校に進学。
大学院国文学専攻博士課程後期単位取得後満期退学。近代文学専攻。元私立高校教諭。日能研にて、約10年間、中学受験国語指導を担当したのち、2012年度から「中学受験個別指導塾ドクター」 に非常勤講師として勤務し、2013年度から「株式会社受験ドクター」に入社。
国語のスーパードクターとして個別指導にあたっている。

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