総務省と文科省の取り組みからみるICT教育の今とこれから

エデュナビニュース
2015年10月5日

総務省と文科省の取り組みからみるICT教育の今とこれから

inter-edu’s eye
今、注目が集まる学校の取り組みのひとつに、ICT教育があります。エデュ編集部もさまざまな学校を取材し、ICT教育の現状を紹介してきました。
今回は、国がどのようなICT教育を目指しているのかをお伝えするべく、『ラーニングテクノロジー 2015』で行われた総務省と文部科学省による特別講演「教育の情報化と今後の総務省の取組について/教育の情報化の動向」をレポートします。

ICT教育の推進はますます本格的に

“ICT教育の推進はますます本格的に

ICT(Information and Communication Technology)とは「情報通信技術」のこと。コンピュータやネットワークの技術を活用した教育の情報化を、ICT教育と呼び、具体的な取り組みの例としては、電子黒板やタブレット端末を使用した教育があります。

国によるICT教育の推進は、技術面を総務省が、学習面を文部科学省が担っており、現在、総務省では「先導的教育システム実証事業」を行っています。

登壇した総務省情報流通行政局情報通信利用促進課長の岸本哲哉氏によれば、この事業では、生徒にどこからでもアクセスできるデジタル教材を提供し、その学習成果を先生や生徒、そして保護者と共有・活用することを目指しているそうです。

また、これからのデジタル教材の標準ルールを議論していくために、2015年2月には学校教員や教育事業者をはじめとする教育関係者が集まる団体「ICT CONNECT 21」も設立されました。

学校がICT教育で教えるべきこととは?

学校がICT教育で教えるべきこととは?

一方、登壇した文部科学省生涯学習政策局情報教育課・課長の豊嶋基暢氏によると、文部科学省では現在、2017年度まで実施する「第2期教育振興基本計画」の中で、特にICTを活用した協働型学習を推進しているとのこと。公立学校でも、まずはグループ学習で利用できるよう、子ども3.6人で1台のタブレット端末が使える環境を目指しているそうです。

そして、文部科学省では、子どもたちが“情報を活用する能力”である「情報活用能力」を身につけることを意識していると話す豊嶋氏。豊嶋氏は、科学技術が進歩している中では、情報を提供されたサービス通りに使うのではなく、その価値を見出す能力を育成する必要があると言います。例えば、学校でプログラムを学ぶ場合も、プログラミング技術だけでなく、社会の中で何がどう動いているのかを理解し、自分は能力を社会に対してどう発揮できるのかということを捉える力を磨くということです。

「“情報活用能力”を高めていくことは、ICT社会で将来、子どもたちが生きていく力を身につけさせることです。」と豊嶋氏。ICT教育は、ただ教科書をタブレット端末に置き換えることではないということを、あらためて感じた講演でした。

導入の成果と課題が見えてきたICT教育

“導入の成果と課題が見えてきたICT教育

また、文部科学省の研究成果では、タブレット端末の効果的な使い方も紹介されました。

タブレット端末を導入して行った調べ学習と発表の授業のなかで、実際に子どもたちがタブレット端末を使った時間は、授業時間45分のうち10分程度だったそうです。調べ物には、図書館を使ったりするためです。しかし、タブレット端末に記録された調査過程が共有されているため、先生は子どもたちの学習過程を把握できます。だから、先生は子どもたち一人ひとりに合わせた指導ができ、結果的に密度の濃い授業になることが明らかになったとのこと。

学習成果を共有して活用することは、総務省が目指す取り組みとも関連してきますね。

しかし、まだ総務省も文部科学省も研究しながらICT教育推進を行っているということを忘れてはなりません。今年6月には、佐賀県の公立校で導入したタブレット端末がトラブルを起こしたというニュースが報じられました。総務省の実証実験でもさまざまな問題点が見えてきており、今は“導入したけれど使えない”ということがないように対策を進めている段階なのです。

世の中はこれからもどんどん進化し、新しい技術が開発されていきます。そのため、ICT教育はこれからの時代を生きるお子さまには必要不可欠な教育です。また、ICT教育の研究が進めば環境も整い、子どもたちにとって“あたりまえの教育”になる日も来ることでしょう。
学校選びの際は、ぜひICT教育にも注目してみてください。

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