名門校との相性がわかる!親が読む“中学受験”虎の巻 エデュママリサーチ第42回

名門校との相性がわかる!親が読む“中学受験”虎の巻2014年10月17日

麻布の先生が書いた「読解力を伸ばす本」

ご存じ、おおたとしまささんが、とてもユニークな新著を発表されました。題して『名門中学の入試問題が解けるのはこんな子ども』。副題には「問題に込められたメッセージを読み解く」とあります。

目次には、武蔵、豊島岡女子学園、聖光学院、鴎友学園女子、海城、吉祥女子、白百合学園、芝、大阪星光学院、西大和学園、渋谷教育学園幕張、東大寺学園、ラ・サールと、名門私立13校の名前が並んでいます。

そしてそれぞれの学校の章には、過去の入試問題とその解法、それに入試問題を作成した先生方におおたさんが直接取材して聞き出した出題の意図、つまりどんな生徒に来てほしいと思って先生方が問題を作成したのか?がレポートされています。

◆先生方が問題作成に込めた熱い思いとは?

第一章の武蔵中学高等学校から読み始め、「中学入試って本当に難しい」とあらためて思い知らされました。掲載されている入試問題を解こうとすればそこでつまずくし、解法の説明も一字一字しっかり読んでいかなくては頭に入ってきません。なぜ、おおたさんは、このような著書を発表されたのでしょう?

実は、「はじめに」にある4つの見出しをみるだけで、著者の意図はだいたいわかります。

・中学受験勉強は、単なる詰め込みではない
・塾で鍛えるのは、未知なる問題を解く「知恵と度胸」
・入試問題は学校からのラブレター
・偏差値だけに頼らない学校選びのために

この本を読み進むうちに、なるほどなあと納得してきます。本書に掲載された入試問題の中に、知識を詰め込んでおけば解けるタイプの問題はほとんどありません。しかも問題のタイプは千差万別です。根気よく順々に計算しないと解けない問題、基礎知識を組み合わせて考えないと解けない問題、発想力が必要で正解がひとつではない問題など、学校ごとに出題傾向には大きな違いがありました。

その違いの源泉こそ、その学校が生徒に求めている素質であり能力なのです。入試問題は、名門校の先生方が小学生の間に身につけていてほしいと思う能力と、それぞれの建学精神とが交差したところで作成されています

それが、おおたさんの言う「入試問題は学校からのラブレター」ということ。そんな各校の先生方のお話の中から、鴎友学園の大内教諭のコメントをご紹介しましょう。

「小学生までの理科は主に目に見える現象について学びますが、中学以降の理科では、だんだんと目に見えない世界のことをテーマにすることになります。だからこそ、小学生まではしっかりと周りのものを見る目を養ってほしい。たとえばアサガオをじっくり観察する、やかんから噴き出した湯気を見るなど、入試の直前に塾で詰め込んだ知識ではなく、小さな頃から、親との対話の中で育まれた『不思議だな』と思う体験の量こそを入試で確かめたいのです。(後略)」(P69)

◆入試問題との相性がわかれば、合格する確率は高まる

お子さまの志望校が掲載されている親御さんにとって、この本はまさに必読の書。運悪く志望校が掲載されていないという方も、この本にある名門13校の先生方の出題意図を知ることは、とても参考になると思います。過去問から学校からのメッセージをくみ取ることができるようになれば、受験にはとても有利ですから。

最後に著者のおおたさんから、名門を受験するお子さまをお持ちの方へのメッセージを。

「子どもが実際に過去問を解いてみると、“この学校の問題はちょっと嫌な感じだな”とか“この学校の問題はやっていて楽しい”などという感触がわかります。まるで異性とデートをしていて、フィーリングが合うとか合わないとかを感じるような感覚です。
フィーリングが合っていれば、偏差値に関係なく、合格する確率は高まります。入試問題とのフィーリングが合うということは、入学したあとの教育も、きっとお子さまに合っているということ。入試問題とお子さまの相性も、学校選びの重要な要素として考えてみてください」(おおたさん)

親子で過去問研究をして、相性がよくて受かりやすい学校を見つけてください。


名門中学の入試問題が解けるのはこんな子ども

『名門中学の入試問題が解けるのはこんな子ども』
副題「問題に込められたメッセージを読み解く」
おおたとしまさ著、日経BP社刊、本体1500円+税

最近の中学受験の入試問題はとても難しい。でも「難しい」にもいろいろな意味があり、必要とされるものが違います。センスが必要、根気が必要、とりあえずやってみるという姿勢が必要……。問題を分析していけば、学校が求めている資質、子どもの姿が浮かびます。入試問題には、「こんな子に来てほしい」という学校からのメッセージが込められているのです。受験生を持つ親、教育関係者にぜひ読んでもらいたい一冊。…購入はこちらから

おおたとしまささん

著者のおおたとしまささん
育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー。『間違いだらけの中学受験』『進学塾という選択』(日経プレミアシリーズ)学校研究シリーズ・中学受験 注目校の素顔『麻布中学校・高等学校』『開成中学校・高等学校』『武蔵高等学校中学校』『灘中学校・高等学校』、小説『もし中学受験で心が折れそうになったら』。その他『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの? 』『生きる力ってなんですか?』など著書多数。