進学塾を正しく選び、賢く活用する方法:エデュママリサーチ第25回

わが子の将来のために「進学塾」を賢く正しく選ぼう!2014年2月7日

おおたとしまさ著『進学塾という選択』

わが子によい教育を、と思うのは親ならば当然のこと。“つらいかもしれないけれど中学受験を”と思うのも将来のためにと思うから。そして“そのためには塾へ…”と、親の思いはつながっていきます。

でもその塾について、私たちはどれだけの情報を持っているでしょうか? もちろん友人知人の話、近所の噂からネットの情報まで、できる限りの情報を入手している親御さんがほとんどでしょう。ただ塾の場合、公教育の学校と違って塾業界全体を俯瞰的・客観的に記した資料はあまりなく、口コミ的な情報に頼らざるをえないのが現状です。

そんな中、中学受験に関する取材を続けている教育ジャーナリストのおおたとしまささんが、塾に関する包括的かつ詳細な報告書ともいうべき新著を発表されました。日経プレミアシリーズ『進学塾という選択』です。

◆冷静な目で塾を判断する手がかりに

第一章のタイトルに「塾は必要悪なのか?」とあります。おおたさんは、もちろん必要悪とは考えていません。塾に積極的な存在価値を見いだしています。そして、

「ひとつ確実なことは、もし中学受験をすると決めたのに、親が、通塾や受験勉強をするわが子のことを“かわいそう”と思っていたら、それこそその子はかわいそうだということだ。」と書いておられます。この言葉はとてもとても重いものだと思います。

さて、この本には、塾が市場規模1兆円という大きな業界になるまでの歴史から、全国規模の大手中学受験塾・人気中学受験塾の特徴や考え方、大手予備校との連携、学力最上位層が通う塾のこと、低学年へ、海外大学受験へと多様化するカリキュラム、学校と塾の連携など、塾に関するあらゆる情報が網羅されています。

ですから、今現在、中学受験・高校受験ための塾選びをしている人には、それぞれの塾が何を考え、どのように指導しているのか、その塾が業界の中でどのような位置づけにあるのかを客観的に知る手がかりになると思います。それに、こんな塾もあったの!という驚きもあるでしょう。

またわが子を塾に通わせようか、どうしようかと迷っている人には、塾通いの意義や意味、親としてどんな心持ちでいればいいのかなどの、よきアドバイスを与えてくれると思います。

◆より豊かな教育、多様な教育の場として塾を活用

――小学6年生の通塾率の全国平均は49・7%、東京都に限れば59・4%。中学3年生の全国平均通塾率は60・4%――

これもこの著書の中にあるデータ(2013年「全国学力・学習状況調査」に付随する調査結果)です。今の日本では、2人に1人かそれ以上の子どもが塾に通っています。2人に1人といえば、大学進学率とほぼ同じ。もはや「かわいそうだけど塾に通わせる」という考え方では通らない比率です。塾選びは大学選びと同等かそれ以上に、積極的な意味を見いだして行うべきものということでしょう。

わが子への思いが高じると、その思いの強さゆえに、テストの点や今の成績だけに目がいったり、自分たち親子が置かれている現状だけしか見えなくなって自縄自縛に陥ったりしがちです。そうならないために、わが子への思いを将来へつなげるために、そして塾を賢く活用するために、ぜひ、この本のご一読をおすすめします。

日経プレミアシリーズ『進学塾という選択』

日経プレミアシリーズ『進学塾という選択』
おおたとしまさ著、日本経済新聞出版社刊、893円(税込)。東大理Ⅲ合格者の約半数は同じ塾だった! 高校別の合格者数には名門の進学校が並ぶが、学力上位者が通う進学塾は実は限られていた。学校には果たせない塾の役割や名門校生御用達塾の実態、地方別有力塾などを紹介。全国の書店・ネット書店で好評発売中。…購入はこちらから

おおたとしまささん

著者のおおたとしまささん
育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー、近著は、学校研究シリーズ・中学受験 注目校の素顔『麻布中学校・高等学校』『開成中学校・高等学校』『武蔵高等学校中学校』『灘中学校・高等学校』、小説『もし中学受験で心が折れそうになったら』。そのほか『中学受験という選択 (日経プレミアシリーズ) 』『男子校という選択(同)』『女子校という選択(同)』など多数。著書一覧

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