いまどきの大学は卒業するのが難しい!?:大学リサーチ第20回

いまどきの大学は卒業するのが難しい!?2015年1月26日

inter-edu’s eye

いま、日本の大学の卒業が、難しくなりつつあるのを知っていますか? 学生が目標とする将来像に近づけるよう、また、社会に出て困らないよう、さまざまな工夫がなされているのです。そんな世の中の動きを上手に活用し、お子さまの夢を叶えさせるにはどうすればいいか。お母さま方がいま心がけておくべきことを考えてみましょう。

■2015年度! 動き出す卒業要件厳格化

2015年度! 動き出す卒業要件厳格化

しっかりした学生を社会に送りだす。いま、こうした動きが強化されています。2015年1月14日付の毎日新聞によれば、文部科学省は大学入試改革の一環として、各大学に対し入学者の「受け入れ方針」や卒業させる学生像を明確に定めた「卒業方針」の策定を義務づける方針を決めたとのこと。「卒業方針」の策定が義務づけられ、大学が育成する卒業生像が明確になることにより、その水準に達していない学生は卒業させない「卒業要件厳格化」が進む、と同記事は予測しています。

【用語チェック】
  • ・「受け入れ方針」(アドミッション・ポリシー)
    入学してほしい学生像。大学の「入口」における方針。
  • ・「卒業方針」(ディプロマ・ポリシー)
    社会に送り出す具体的な卒業生像。大学の「出口」における方針。

「入学さえすれば安心」「出席していれば卒業単位は取れる」「あとは就活さえうまくいけば」という、かつてあった日本の大学のイメージは、とっくに存在しないものに。大学が教育の質を保証することに伴い、学生も自らの質を高めるべく努力し続けなければなりません。言い換えれば、お子さまが社会に出るギリギリまで大きく成長できるチャンスといえます。

■もう始まっている! 各大学のさまざまな工夫

一方で現状の大学の卒業も、過去と比べて厳しくなっています。卒業に必要な単位(法令では4年制大学124単位以上、6年制大学188単位以上)を修得する、という点は変わりませんが、大学によってはその質を保証するため、さまざまな取り組みをしています。その一例を見てみましょう。

1.GPA(Grade Point Average)のポイント数を卒業要件の一つとする

GPAは、特定の数式に各授業科目の成績を当てはめて算出したもの。このポイントを上げるには、ただ単位を修得するだけでなく、ある程度いい成績で修得する必要があります。

横浜国立大学の例

本学では、平成15年度入学生からGPA(Grade Point Average)を導入しています。GPAはそれぞれの評価にGP(Grade Point)を与え、学生個々の履修科目のGPにその科目の単位数を乗じ、その総和を履修登録科目の総単位数で除することによって算出します。GPAが2.0以上であることが卒業要件となっています。

(横浜国立大学HPから引用)

2.学外のテスト等を卒業要件の一つとする

学内の授業科目だけでなく、学外のテストの点数等を活用する大学もあります。

山口大学の例
  • ・学部・学科によって卒業要件にTOEICスコア300~ 600点を設定
  • ・1年次の6月を含め年5回、TOEICテストの受験機会を設ける定
  • ・単位認定にも活用
  • (TOEIC公式サイトより抜粋)

3.CAP制度を導入し、各学年の履修単位数を制限している大学

CAP制度とは、学生が適切に授業科目を履修できるよう、各学年で履修できる単位数に上限を設ける制度です。「後で楽できるように、早いうちにたくさん単位を修得する」ということが不可能となります。文科省の調査によれば、近年7割を超える大学で取り入れられています。

■未来を描ける子育てを!

未来を描ける子育てを!

卒業要件の厳格化には、お子さまが社会に出る前に必要な力を身につけられる、というメリットがあります。しかし、これはあくまでも大学側が育成する卒業生像を明確にし、それを実現させるために行うこと。このメリットを活かすには、お子さま自身の努力と、それを支えるお母さまの働きかけが重要です。

では、具体的にはいま、何をすればいいのでしょうか。まず、早いうちから大学合格をゴールとせず、大学卒業後の未来を描けるようお子さまに働きかけること。また、未来の目標のために努力し続ける底力を身につけさせることが大切です。大学選びの際は、お母さまもぜひ大学の「卒業方針」をチェックし、お子さまの目標にあっているかどうか吟味してみてください。