御三家に特化した塾に通っていますが、宿題のレベルが高すぎるように思います

塾・学校の実態に精通する教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、「中学受験を家族にとってのいい経験にする」というコンセプトで、中学受験のさまざまな相談にアドバイスしてくれます!
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育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.8

Q.御三家に特化した塾に通っていますが、宿題のレベルが高すぎるように思います

いつも相談室拝見しております。小学校4年生の息子の受験についてご相談させて頂きます。

息子には夢があり、それを叶えるため、4年生から御三家に特化した塾に、今年2月から通い始めました。

相談は、塾の算数についてです。授業で使うプリントは、基礎からかなり高度な応用問題まであり、授業で扱わなかった問題は、宿題として翌週の授業までにやるよう指示が出ています。応用問題は親の私が見ても、4年生でこのレベルまでやる必要があるか疑問に思うレベルであり、息子には、基礎レベルをしっかり理解することを伝え、応用問題はやらなくて良いと指示しています。

基礎の定着に主眼をおくわたしの指示は間違っていますでしょうか?(夢追い人)

回答はこちら

A.子ども、親、塾の先生は一つのチーム。塾に質問してみましょう。きちんとした塾なら納得のいく答えが返ってくるはず

4年生から御三家に特化というのは、それはすごい! しかし、塾で使用するプリントの応用問題のレベルが高すぎるとお感じなのですね。そして、夢追い人さまとしては、今は基礎固めに時間を割いたほうがいいとお考えなのですね。プリントを見て、そのレベル感がわかるということは、夢追い人さまも中学受験経験者なのでしょうか。

さて、わたしは塾の講師でも家庭教師でもないので、御三家に受かるための勉強法とか、どうしたら成績が上がるかとか、そういうことはわかりません。申し訳ございません。しかし、塾のやり方に疑問を感じたときに親としてどうすべきかという観点からお答えしたいと思います。

一般的に考えれば、夢追い人さまのおっしゃるとおり、4年生では基礎が大事でしょう。ただし、そのプリントのレベルが息子さんにとって本当に高すぎるのかどうか、わたしにはわかりません。疑問に思われるのであれば、塾の先生に質問してみたらいかがでしょうか。

責める口調ではなく、純粋に質問です。「息子にはレベルが高すぎるように感じるのですが、ここまでやらせて大丈夫なのでしょうか。基礎がおろそかになるということはないのでしょうか。ちょっと心配で」と素直な気持ちをぶつけてみれば、きちんとした先生なら、夢追い人さまの気持ちをしっかり受け取り、納得のいく答えを返してくれるはずです。

わかりませんが、たとえば、「たしかにレベルは高くて簡単には解けないと思うが、チャレンジ精神やあきらめない気持ちを今から育てるのが目的。逆に基礎基本に関しては、このタイミングで固めなくてもスパイラル方式でそのうち自然に固まる」みたいな戦術があるのかもしれません。もしそこで、答えがしどろもどろだったり、筋が通っていなかったりして、納得が得られないというのであれば、その塾はちゃんとした塾でないのかもしれません。その先生が未熟なのかもしれません。

中学受験の戦い方(決して戦いではないのですが、ここでは比喩的に戦いという言葉を使用しますね)には、塾ごとに、先生ごとに、さまざまな戦術があります。だから、一概にどんな戦い方がいいとは言えません。大事なのは、どんな戦術を使うかではなく、その塾や先生としてのしっかりとした信念があり、それをきちんと保護者に共有できるかどうかです。塾や先生としては信念をもっていながら、それをきちんと保護者に説明できないのであれば、その信念は単なる思い込みである可能性もあります。「保護者の疑問に論理的に答えられない塾や先生が、子どもの疑問に論理的に答えられるはずがない」と、わたしは塾の先生向けの講演でよく言います。これには実績のある多くの先生方が賛同してくれます。

「黙ってオレについてこい。信じる者は救われる」的な塾も中にはありますが、そういう塾を信じるかどうかは、実績で判断するしかありません。また、仮に実績はあったにしても、その塾のやり方がわが子に合っているかどうかは別問題です。そういう塾はちょっと特殊といえるでしょう。

そのような塾を除いて一般的にいうならば、わたしは、受験における塾の先生の役割は、サッカーの監督みたいな役割だと思っています。当然子どもが選手です。親は選手をサポートするトレーナーです。監督は、チームのみんなに戦術を共有し、役割分担を明確にできなければいけませんよね。そういう観点で子どもに対しても、親に対しても、丁寧なコミュニケーションがとれる塾はだいたいいい塾です。そういう塾は、仮に受験の結果が最高の結果ではなかったにしても、子どもも親も納得ができます。

子ども、もしくは親が、塾の思惑を理解できていないというのであればそれは、チームとしてのコミュニケーションがうまくいっていないからかもしれません。もちろん親の側としても、塾の戦術を理解しようとする前向きな態度が必要です。そんな観点で、塾の先生とお話をされてみたらいかがでしょうか。

一方で、夢追い人さまは、お子さまの教育に対して、しっかりとしたポリシーをおもちのようにも感じます。仮に、中学受験での合格という目標に対しては、塾の戦術が合理的であったとしても、単なる点取り虫を養成するような戦術であれば、賛同できないという骨太なポリシーをおもちなのかもしれません。それはそれで立派な教育方針だと思います。

わたしは中学受験勉強には大きな意味があると考えています。しかし、中学受験勉強のリスクをひとつあげるとすれば、子どもを「せこい点取り虫」にしてしまう可能性があるという点です。テストの点数が上がるなら、志望校に合格できるなら、どんな勉強方法でもいいというのには私もあまり賛同できません。

実際、中高一貫校の先生方から、「最近は、中学受験塾でおかしな勉強方法を身に付けてしまった生徒が多いので、それを一度崩すのに苦労する」という話をよく聞きます。そういう観点で、夢追い人さまが、塾の戦術について賛同できないというのであれば、それはご家庭と塾の教育方針の違いです。ご家庭の教育方針に合致する塾を探すというのも一つの選択肢になるかもしれません。

シンプルに見えて奥深いご質問だったので、いろいろなことをお伝えしてしまいました。返って混乱させてしまったかもしれません。申し訳ございません。いずれにしても、中学受験をいい形で乗り切るためには、子ども、塾、親の三位一体が必要です。まだ4年生。焦る必要はありませんが、できるだけ早く、いいチームワークが構築できるといいですね。

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