inter-edu’s eye

明治40年の創立からものづくりの歴史を積み重ねてきた伝統校「日本工業大学駒場中学校・高等学校」は、近年GMARCHや国公立大学への合格実績をどんどん上げてきています。理数教育にアドバンテージを持ちながら、現在も進化し続ける「日駒」の未来への取り組み、そしてキャリア教育に注目したお話をうかがいました。

これからも伸び続ける合格実績への取り組み

中高一貫コース副教頭の大塚勝之先生に、学校の現状や大学入試改革への取り組みをインタビューしました。

中高一貫コース副教頭 大塚 勝之先生

中高一貫コース副教頭 大塚 勝之先生
「創立以来の伝統を大切にし、新たな歴史をつくっていきます。」

インターエデュ(以下エデュ):日駒の教育指導の方向性を教えてください。

大塚先生:わが校は、ものづくり教育に対して長い伝統があり、体験学習(アクティブ・ラーニング)やキャリア教育に対しては以前から力を入れてきました。かつて、それは日本の発展を担う優秀な技術者を育てることが目的でしたが、今後は長い歴史の中で蓄積されたノウハウと大学進学支援策を強化して、さらに結果を出していきたいと考えています。

エデュ:具体的な取り組みは何か考えていますか?

大塚先生:現状考えている案が3つあります。
1つ目は、2020年の大学入試改革に向けて、英語教科で「話す力・聴く力」を強化するために、特別教室を設置してネイティブ講師を常駐させ、放課後も英語に親しめる環境を設けます。2つ目は、職場見学やキャリア講演会、さらに大学の講義や新卒入社研修でも使われている「ブルサ(※)」など既に行われているものに加え、これからの社会で生き抜く力を育むキャリア教育を刷新します。最後の3つ目は、理数分野の奥深さを見せる教育を本校の新たな特色教育に設定します。本校の教育は現在進行形で発展しています。是非ともご期待ください。

※「ブルサ」株式投資のシミュレーションで社会や経済を楽しく学べるボードゲーム型の教材。


生徒の希望を実現させるキャリア教育のありかたとは?

続いて、社会科で世界史の授業を担当する増田徹先生に、キャリア教育(進路指導)に対する考え方や、これからの新しい指導内容などをうかがいました。

社会科教諭 増田 徹先生

社会科教諭 増田 徹先生
「学校で過ごす全ての瞬間が、生徒にとっての学びの機会です。」

エデュ:キャリア教育についての考え方をお聞かせください。

増田先生:体験学習の一環として、職場見学や大学教授の講演を行ってきましたが、米デューク大学の研究者によれば、2011年度小学校に入学した子どもたちのうち65%が、大学卒業時には今現在にはない新しい職業に就くということで、従来型のキャリア教育に限界を感じました。未来志向の指導をしなければいけない。社会に出てから必要となる力を身につけさせてあげた方が生徒たちのためになると考え、新しいキャリア教育を模索し始めました。

今後予定されている新たな取り組み

今後予定されている新たな取り組みと、キャリア教育の捉え方(図)

中学1年生の段階で最も力を入れていることは、自己肯定感を養うことです。勉強以外でもよい所があったらどんどん褒めてあげながら、学校行事等で成功体験を重ねて自信を身につけさせます。それから順を追ってコミュニケーション能力、問題解決能力を養っていきます。(右図参照)実はこの段階が重要で、コミュニケーション能力を身につけるには自己肯定感が必要です。自分を肯定していないと他人を肯定できないし、優しくすることもできないからです。問題解決能力を伸ばす取り組みも、同様に自己肯定感が土台になっています。

中学1年生の春期行事報告

廊下に掲示されている中学1年生の春期行事報告。

エデュ:今後予定されている取り組みはどんなものがありますか?

増田先生:11月から中学1年生の体験学習に導入を予定しているのが「アート・オブ・コミュニケーション」です。アメリカではカリキュラムの一環として多くの学校で行われていますが、演劇をとおして普段なかなか出さない感情を表したり、逆に相手の感情を読み取ることで、コミュニケーション能力を養うことを目的としています。学校には楽しい!と思える場も重要だと考えています。

学校が大好き!将来の夢に向かって頑張る生徒たち

昨年度の連載ページでもインタビューに応じていただいた川島さん、クラスメイトで鉄道研究愛好会に所属する深川くんに、学校生活の様子を聞かせてもらいました。

川島さん(左)深川くん(右)担任の堀口 博行先生(後)

アーチェリー全国大会での入賞を果たした川島さん(左)とカメラに詳しい深川くん(右)、そしてクラスの精神的支柱となっている担任の堀口 博行先生。6月に行われた修学旅行で仲間の大切さに気付かされた話で盛り上がりました

エデュ:学校での生活はどうですか?これからの目標とあわせて教えてください。

川島さん:アーチェリー部の全国大会に出場して、7位に入賞することができました!高校の先輩に教えられたとおり、一所懸命に努力を続けてきた成果です。はっきりしてきた将来の夢を実現するために、2年間の長期留学プログラムでカナダに行き、そのまま現地の大学に編入することも考えています。

深川くん:学校では部活動だけでなく勉強も頑張っています。目標とは言えませんが、中高一貫校なので高校受験がないメリットを生かして、大切な趣味の鉄道写真撮影で色々な所に行ってみたいです。1年生の頃に比べると、上下関係や自分自身のことがよくわかるようになりました。大人になってきたのかな?


中学学習室

定期テスト準備期間には、中学学習室でプリントできるテスト範囲の問題がとても役立つそうです

エデュ:来年度に入学してくる新しい仲間たちへのメッセージをお願いします。

川島さん:中学校は小学校と比べたら大変ですが、みんなを支えながら、夢を応援してくれる先生が大勢います。一度は校内見学に来てみてください。

深川くん:入学を決めた一番のきっかけになったのは、お父さんと一緒に来た学校見学会でした。本気で好きになれる学校ですよ!

編集者が見たポイント

東大に一番近い私立中高一貫校の「日駒」は、緑が多く閑静な住宅街の中という好立地。そんな学校で、生徒たちと真摯に向き合い、将来設計を共に悩み合う先生たちの姿がとても印象的でした。インタビューを行った生徒2人の担任である堀口先生のお話もうかがいましたが、生徒を勉強面だけでなく精神的にも成長させることに力を注いでいることがよく伝わってきました。歴史を重ねてなお一層の進化を続ける「日駒」の指導と、生徒の様子を見学しに行ってみてはいかがでしょうか。