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-海外大学の門戸を開く-「国際バカロレアDP認定校」茗渓学園の挑戦

-海外大学の門戸を開く-「国際バカロレアDP認定校」茗渓学園の挑戦

inter-edu’s eye:

グローバルな人材の育成や海外の大学進学などで今、大きな注目を集めている「国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(IBDP)」。TX(つくばエクスプレス)の開通により、都心からのアクセスが劇的に向上したつくば研究学園都市にある茗渓学園は、2016年7月にIBDP認定校になり、「IBDPコース」を開設しました。認定校になったことによって、すでに毎年、東大や京大、医学部などに合格者を輩出するほどの名門校が、今後どのように進化していくのか取材しました。

茗渓学園中学校高等学校 5つの特長

●国際バカロレア(IBDP)認定校

日本の高卒資格を出せるIBDP認定校としては日本で14校目、日本語DP(日本語と英語の両方で授業を行うディプロマ・プログラム)採用校では5校目となります。(2016年7月時点)

●SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校

科学技術系の人材育成を目的として、独自のプロジェクト・カリキュラムによる授業や、筑波大学との連携、つくば研究学園都市に集積する研究機関との連携などの取り組みを実施しています。

●東大・京大・医学部・海外大への高い進学実績

毎年、東大・京大・医学部への現役合格者を輩出しているだけでなく、ハーバード大学やMITといった世界最高レベルの海外大学への進学実績も誇ります。

●全国レベルで活躍するクラブ活動

ラグビー部や剣道部といった運動部は、全国大会出場や優勝を経験しています。また、科学部に代表される文化部は、世界大会出場や文部科学大臣賞の受賞などを果たしています。勉強だけでなく、クラブ活動にも全力で励むのが「茗渓流」の学校生活です。

●高校でのIBを視野に入れた「中学グローバルコース」

高い英語力とスタディ・スキルを、中学の3年間で徹底的に習得するハイレベルなコースが、2015年度よりスタートしています。高校で新設されたIBDPコースに関心・意欲のある生徒が対象となります。

田代校長に聞く「IBDPを導入した理由」

茗渓が目指す「世界的日本人」とは

茗渓学園は1979年、中等教育の改革を目指す教育実験校として、筑波大学の同窓会「茗渓会」によって創設されました。創立当初から私たちが目指している目標は、「国際的に活躍する生徒を育てたい」ということです。帰国子女を積極的に受け入れていたのも、こうしたグローバルな人材「世界的日本人」を育てたいという思いがあるからです。


「世界的日本人」とは、日本人としてのアイデンティティを持ちながら相手の国の立場を理解し、自国の考えとすり合わせることのできる人間です。こうした理念とこれまでの教育プログラムがIBDP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)に直結していると考え、IBDPを導入するに至りました。


田代淳一校長

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)やIBDP(国際バカロレア・ディプロマプログラム)の認定に力を注いできた田代淳一校長。

私たちが来年から開設する国際バカロレア「日本語DP(ディプロマプログラム)」は、国内の小・中学校で育った子どもたちの「海外で勉強したい、世界で活躍したい」という願いをかなえることを目的に設立しました。IBのカリキュラムの内容自体がアクティブラーニングのスタイルをとっており、本校の教師たちがそのIBのカリキュラムを生徒たちに教えていく中で、授業内容や評価方法に大きな変化をもたらし、良い影響を与えてくれるだろうと考えています。


今後さらにグローバル化が進む中、世界で活躍できる人材は、母国語を大切にしながら外国語を運用できる、知力の高いバイリンガルな人だと考えます。日本語で世界水準のIBDPを学び、英語でさまざまな科目を学ぶ生徒たちは、これからの国際社会で活躍する日本人のモデルになると思います。

「自ら学び・成長していく能力」とは

茗渓学園では、「自ら学び・成長していく能力」をトータルで向上させる教育を実践しています。

国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(IBDP)とは?

国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム「International Baccalaureate(国際バカロレア、通称IB)」。
1968年、スイス・ジュネーブに拠点を置く同機構が、国際統一のカリキュラムを作ったのが始まりです。3~19歳の児童生徒が対象で、大学入学前の生徒を対象とした「Diploma Programme(ディプロマプログラム、通称DP)など4つの区分に分類されています。
海外の大学への門戸を開くだけでなく、近年では、国内の国立大学や医学部などが受験資格に導入しており、進路選択を広げることが可能になるとして注目が高まっています。
文科省は、グローバル人材育成の観点からIBの普及・拡大を推進。2018年度までに、IBDP認定校を200校まで増やすことを目指すとしています。茗渓学園は、高卒資格を取得できる「一条校」としては、日本で14校目のIBDP認定校、「日本語DP」の採用校では5校目になります。

佐藤先生に聞く「IBDP導入で進化する茗渓の教育」

国内進学も視野に入れた新世代DP

IBDPを導入することにより、本校の教育はさらに進化していくと考えています。その名の通り、国際レベルの教育が可能になるでしょう。文学や歴史、芸術そして奉仕活動などといったIBDP独自のプログラムは、日本の教育プログラムにないものが含まれており、思考力や創造性を育むことが期待できます。


また、通常のIBDPでは授業に英語しか使いませんが、本校では日本語と英語の両方で授業を行う「デュアルランゲージ・プログラム」を採用します。日本語で学ぶこと、つまり母国語を大切にすることは、アイデンティティを大切にすることに他なりません。日本人の良さを意識しながら国際感覚を身につけ、世界を目指してほしいという思いがあります。

佐藤賢士先生

IBDPコースの設立が、一部少数の生徒だけでなく、茗渓学園全体に「人生の選択肢」への気付きを与えるとお話しする広報企画部長の佐藤賢士先生。

世界に目を向けてほしいと願う一方、日本の大学への進学も考えたとき、IBの取得で受験資格が得られる国立大や医学部などがあることもIBDPの大きなメリットであると思います。まずは、日本の大学で学んで、その後に世界2万校以上の大学を対象に進学するという選択も可能になるのです。


つくばに位置するメリット
IBDPコースは、高校1年次に一般コースの生徒と同じホームルームに所属しますし、学校行事も一緒になりますが、授業に関しては一部をIB生のみで行います。IB生と一般生が共に学んだり時間を過ごすことで、一般生も海外に目を向け、人生の選択肢が無数にあることに気付くきっかけになるのではないかと思います。

デュアルランゲージ・プログラム

新たな挑戦とも言える茗渓学園のデュアルランゲージ・プログラムによるIBDPは、海外大だけでなく、国内大の進学も可能にする先進的な取り組みです。

加えて、本校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けています。理系教育で蓄積されてきたノウハウを活用するだけでなく、「つくば研究学園都市」に立地するメリットとして、国内最高基準の研究機関への参加型授業なども実践しています。IBコースでは、文系・理系の区別無くハイレベルな学びが要求されますので、SSH指定校の取り組みが学習に役立つと思います。


国際都市「つくば」という環境はIBDPやSSHとしての教育に適した土地だと言えます。最先端の技術を身近に感じられ、海外からの研究者など外国人が多い環境であり、生徒にとって良い刺激になることでしょう。つくば市で常に世界を感じることができるのは本校の魅力でもあります。

文理の区別がないIBDPカリキュラム

SSH指定校として続けてきた理数教育への取り組みが、文理の区別がないIBDPカリキュラムに大きなアドバンテージをもたらします。

■編集部が注目したトピックス

■中学グローバルコースで伸ばす英語力

2015年度より開設されたグローバルコースは、高い英語力を維持発展されることを希望する生徒、または高校でのIBDPコースを履修する意欲がある生徒が対象。「グローバルAO入試」が実施されており、求められる英語力の目安は「英検2級」程度。英語エッセイテストと、英語による面接があります。

中学グローバルコースで伸ばす英語力生

■全国トップクラスの留学制度利用者数

世界各国の文化を体験した帰国生の多さに加えて、交換留学生が随時学校を訪れるなど、茗渓学園には、世界との交流が日常的にあります。より強く外国の文化や歴史に興味を抱いた生徒を、歴史を持った信頼のおける留学プログラムを通じて、留学生として送り出す制度も整っています。

全国トップクラスの留学制度利用者数

■SSHの取り組みを強化する多角的な研究活動

茗溪学園のSS研究は、英語科学論文のプレゼンテーション・ディスカッション、実験や観察から総合的な学習技術の育成、筑波大学等との高大連携、高研連携による進路意識や職業観の養成などを実施し、「世界に羽ばたく、国際科学研究のパイオニアとなる人材育成」を目標としています。

SSHの取り組みを強化する多角的な研究活動

■寮での生活

精神的、生活的交流を深め、規律ある生活を学ぶ目的で、通学生も一定期間全員入寮します。この「短期入寮」中に、普段の授業では得られない総合的・体験的学習の場として学年行事や学級行事が計画されます。

寮での生活

編集部から見たポイント:

国内の研究機関と世界中の研究者が集まり、世界が身近に感じられる研究学園都市「つくば」にある茗渓学園は、IBDPのカリキュラムを修得するのに最適な環境といえるでしょう。東大・京大や医学部への進学実績を出しながらも、教育界に変革をもたらし、常にチャレンジし続ける姿勢を忘れない茗渓学園の今後に、これからも注目していきます。