有名中学に合格した子の親がやっていること 第39回

inter-edu’s eye
灘中合格、東大合格、そして医師国家試験など、あらゆる難関試験に合格してきた“受験の神様”が、東大正門前のクリニックで中学受験生を診察・指導しています。そんな吉田たかよしさんが書き下ろした受験生の親へのメッセージとは?

◆超難関を目指す子どもたちの落とし穴

ママたちの下剋上

御三家や灘など超難関の有名中学に入ってほしい、そして東大や京大へ…とわが子に熱い期待を抱いている親御さんにおすすめしたい本があります。今年7月に発売された『有名中学に合格した子の親がやっていること』です。この本には、超難関校を目指す際に、親御さんに求められる姿勢や考え方が、とても明解に著されています。

著者の吉田たかよしさんは、本書を書いた理由を、「おわりに」に簡潔に書いておられます。そこで著者にご了解をいただき、その全文を引用させていただくことにしました。

中学受験の直前に極度のスランプに陥って成績が急降下。
勉強熱心だった子どもが突然、受験を投げ出してしまう。
優しかった子どもが入試の前日に暴言を吐いて暴れ出す。

私のクリニックには、こうした子どもが数多く訪れます。そんな子どもたちの脳機能を検査すると、勉強のやり方に根本的な問題があることがよくわかります。
小5までに地頭をじっくり鍛えることを怠り、小手先の詰め込み教育で目先の成績を上げてきたしっぺ返しが、入試の直前に一気に噴き出すわけです。
こうした現実を目の当たりにしてきた私は、親の意識を変えることが必要だと考え、7年前から「受験生の母親講座」を主催しています(詳しくはwww.akamon-clinic.com/)。
一方で中学受験についての講演活動も行っており、子どもの脳機能はどうすれば発達するのか、最新の脳科学研究の成果も取り入れ、実践的な方法を解説しています。
また、教育顧問として学習塾に対し教育方法を指導する活動にも従事しています。特に小5までの時期に地頭をよくしてあげられる塾のプログラムが、最も必要だと考えます。ともに知恵を出し合ってつくり上げていきたいと思っています。
今、世界各国では国の存亡をかけエリート教育にしのぎを削っています。国際競争が厳しさを増すなかで、エリートを育てない限り国の豊かな経済は維持できないからです。
ところが日本は、エリート教育が明らかに立ち遅れています。そんな日本を救える大きな力を持っているのが、中学受験だと確信しているのです。著者として、本書がエリート教育を再建する一助になればと願っています。

著者の吉田さんは、東大の赤門正面にある受験生専門の心療内科クリニックの院長です。吉田さん自身が、中学受験経験者で灘校出身。それだけではありません。灘校から東大へ、さらに東大の大学院を経て、国家公務員試験一種(経済職)年連続合格、医師国家試験合格など、多くの難関試験にストレートで合格してきた“受験の神様”なのです。そんな吉田さんがご自身の受験経験と、医師としてみてきた多くの受験生の現状とを見据えて、中学受験生の親御さんに伝えたいメッセージをまとめられたのが本書です。

◆親子で過去問に挑戦する理由とは

本書の構成は以下のとおりです。

序章 中学受験は絶対おすすめ
第1章 有名中学合格は親次第
第2章 親子で過去問にチャレンジ
第3章 過去問を「実体験」する
第4章 わが子を合格に導く親のサポート法
第5章 中学受験に合格する遊び方
第6章 吉田たかよし式 有名中学<科目別>攻略法
第7章 合格する家庭がやっていること
第8章 親子で突破! 中学受験合格作戦
第9章 わが子の可能性を広げる方法
第10章 中学受験に失敗する親がやっていること


親としてわが子の中学受験にどう対処すべきなのか、あらゆる側面からのアドバイスが書かれていますが、中でも注目したいのが第2章と第3章です。ここには麻布や灘中など有名中学の過去問が多数紹介されており、章タイトルどおり、親子で一緒に解いてみることをすすめています。また3章タイトルの「過去問を『実体験』する」とはどういうことか? 机の上で参考書とノートだけで勉強するのではなく、リアルな事象を確かめてみる、調べてみるということです。たとえば星座の問題なら本当に夜空を眺めてみる、立方体の問題であれば実際に立方体を作ってみるといったことですが、詳細はぜひ本書を読んで確認してください。

なぜ、過去問を親子で一緒に解いたり、実体験する必要があるのでしょう? それはまず、「有名中学の入試問題には、学校と自宅と塾を行き来して子どもらしい生活を送っていない“ガリ勉”を排除するような要素が、明らかに意図的に盛り込まれている(P15)」からです。有名中学は普通の生活ができている子、社会的関心を持っている子、そして何より自分の頭で考える習慣がある子を求めています。そうでないと、入学後にさらに能力を伸ばしていくことができないからです。

過去問を一緒に解くこと、過去問を実体験することを面白いと思える親なら、子どもも受験勉強を難行とは思わず、大変だけど楽しい挑戦と感じることができるでしょう。受験勉強が楽しめれば、学んだことがどんどん頭の中に入っていきます。著者は、過去問を実体験することを面倒だと思う親は、「中学受験に挑む資格なし!」とまで語っています。

◆受験生活を親がミスリードしないために

医師である吉田さんは、こんなことも書いておられます。

子どもに勉強の予定を詰め込みすぎると、スケジュールをこなすだけの“受け身の発想”が助長されてしまいます。 実際、私のクリニックで脳機能の検査をしてみると、その傾向は明らかです。1週間のスケジュールが過密である子ほど、自分の意志で物事を考えるのが苦手という傾向がデータとして明確に表れています。受け身の発想が助長されてしまい、自分で何かを考えたり提案したりできなくなるのです。(P27)

今の中学受験は、ひと昔前と比べても大変過酷になっています。塾の宿題に追われて時間がないと焦っているご家庭も多いことでしょう。親御さんがそのためにストレスを抱えているとすれば、間違いなくお子さまも同程度かそれ以上のストレスを感じているはず。そんなとき、どうすればいいのか? 少なくとも親の焦りや間違った考え方で、子どもの受験生活をミスリードしないようにしたいものですよね。本書は、そんなとき、とても助けになると思います。著者自身がご両親からしてもらったサポートも具体的に書いてあるので参考になるでしょう。

吉田さんのアドバイスの中には、耳が痛いと思うものもあるかもしれませんが、わが子が大いなるチャレンジをしているときですから、親御さんも我が身を振り返って対処する必要があります。本書でご自身の姿勢をチェックして、お子さまへのサポートをよりよいものにしていってください。

有名中学に合格した子の親がやっていること,吉田たかよし

有名中学に合格した子の親がやっていること
吉田たかよし著、SB新書、800円+税
中学受験を突破するための本当の方法とは? 著者は、灘中・灘高→東大(理科一類)→東大大学院(工学系研究科)→国家公務員試験一種(経済職)2年連続合格→NHKアナウンサー→医師国家試験→政策担当秘書資格取得→衆議院議員公設第一秘書→東大大学院医学博士取得と、名だたる難関試験をすべてストレートで合格した”受験の神様”。東大赤門前にクリニックを構え、難関中学受験を目指す親子に学習指導。 “受験うつ”を専門に日々、開成や筑駒、麻布といったトップ校の受験生とその家族と日々向き合いつつ、またSAPIX、日能研といった進学塾でも受験成功のとっておきのアドバイスを施しています。なぜ受かる、なぜ落ちる、なぜ伸びる、なぜ伸びない……中学受験の「なぜ」には、必ず理由があります。中学受験は親が大きく影響します。受験合格を勝ち取るには学力も必要ですが気持ちの問題も大きいのです。中学受験で合格する子、涙を飲む子……中学受験で子どもの涙は見たくないという親心を叶えるのは、親の考え方次第。 子どもの中学受験を成功に導く方法を徹底指南します。…購入はこちらから

吉田たかよし

著者の吉田たかよし(よしだ たかよし)さん
1964年生まれ。医学博士。本郷赤門前クリニック院長(受験生専門の心療内科)、新宿メンタルクリニック顧問(受験うつ)、学習カウンセリング協会理事長、人間情報学会理事。灘中学・灘高校・東京大学工学部卒。東京大学大学院工学系研究科を修了後、NHKアナウンサーとして活躍。北里大学医学部を経て東京大学大学院医学博士課程を修了。その間、故・加藤紘一元自民党幹事長の公設第一秘書も歴任。


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