社会のしくみを楽しく学べる「おしごと年鑑」で将来の夢を育てよう

おしごと年鑑

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世の中にはさまざまな仕事があり、大勢の人が働いています。そうした仕事の役割や社会と自分との関わりを、ワクワクしながら学べる本が刊行されました。『おしごと年鑑』です。大人でも「へぇ〜」と思う内容を、わかりやすい文章と豊富な図版やイラストでていねいに解説。子どもが世の中の仕組み理解し、将来への夢を育むのにうってつけの書籍です。

「キャリア教育」の教材として誕生した人気書

今回紹介する「おしごと年鑑」は、もともと、文部科学省が推進している「キャリア教育」の教材として誕生しました。キャリア教育とは、一人ひとりの社会的、職業的自立に向けて、必要となる能力や態度を育てようというものです。

そのためには、世の中にどんな仕事があり、それが世の中でどのように役だっているか、知る必要があります。ところが、いざ学校でキャリア教育に取り組もうとしても、適した教材がなかったり、教師以外の仕事がわからないといった声があったりと、指導への不安を訴える声も上がりました。

そうした先生方の声にこたえるため、朝日新聞社では2016年から「おしごと年鑑XXXX年版」といったかたちで毎年編纂し、全国の小・中学校や一部の私立高校、海外の日本人学校や子ども食堂などへ無償で配布しています。「○○は何でできている?」「△△はどうやって作られる?」といった、子どもたちの素朴な疑問に答えるかたちで解説するスタイルが話題となっています。

また学校の先生が授業でも使える高度な内容が、図版とともに、とてもわかりやすい文章で解説してあるので、学校の先生の評価が高く、子どもたちにも大人気に。「家庭で読みたい」「手元に置きたい」という要望が増えたため、今回、一般向けに編集し直し、本書が刊行されたのです。

「しごと」に関する125の疑問に企業の担当者が回答

本書は「年鑑」と名付けられていますが、小・中学生が読むことを前提にしているため、堅苦しさはありません。

日本を代表する120の企業や団体の仕事を5つのカテゴリーに分け、子どもが抱く素朴な疑問に、企業の担当者が答えるという構成になっています。

質問の数は、5つの分野で125もあります。カテゴリーごとに、いくつか紹介してみましょう。

子どもが抱く素朴な疑問に、企業の担当者が答えるという構成になっています。

・身近な生活につながるお仕事
パンツやシャツはなぜ必要?/良い枕ってどんな枕?/ガスコンロの火はどうして青いの?

・食べたり飲んだりに関わるお仕事
お砂糖はどうして白いの?/ウインナーとフランクフルトの違いってなに?/バナナはどこで袋に入れているの?

・社会の土台を支えるお仕事
お風呂を沸かすガスはどこからどうやって来るの?/水は誰が運んでくれるの?/電気はためられないの?/

・未来を生み出す科学技術のお仕事
新しい薬はどうやって作られるの?/アルミニウムってどんな金属?/ものを運ぶのに段ボールが欠かせないのはなぜ?

・知る・学ぶ・楽しむをかなえるお仕事
どうして勉強するの?/人工衛星は釣り竿で進化したって、本当?/著作権って何?

日用品や食料品などの身近な素材を扱う仕事から、電気、ガス、水道、通信など、身近にあるのに見えていない仕事、いつも使っているのに、それを支えている仕事の実態がわかりにくい科学技術や娯楽に至るまで、テーマの設定が幅広い上に興味を引く内容です。

文章だけではわかりにくい部分が多いので、写真や図版、イラストが多数挿入されています。文章自体もわかりやすく、漢字にはふりがながついているので、小学校低学年でも読むことができるでしょう。

各疑問への回答の最後には、企業・団体の担当者がその仕事に就くことになったきっかけや、仕事の楽しさ、やりがいについてのコメントがついています。その仕事に携わる人の想いやプライドもよくわかります。

文章だけではわかりにくい部分が多いので、写真や図版、イラストが多数挿入されています。

そのほかにも、子ども向けの企業博物館やキッズ向けのウェブサイトなどの情報も盛りだくさんに紹介されているほか、世界に広がる日本の発明なども掲載。将来の仕事の先輩であるプロフェッショナルへのインタビューや、日本人の歴史的企業家も紹介されており、仕事とは何なのか、世の中を支える仕組みはどのようになっているかが、楽しく学べる構成です。

常にそばに置いて親子で読んで欲しい本

本書を読んでいて、「ああ、これは知らなかった」ということがたくさんありました。幅広い分野を扱っている本ですから当然かもしれませんが、知っているようで知らないことが意外なほど多く見つかるのです。

たとえばファスナー。YKKが世界最大のファスナーメーカーだということは知っていましたが、牛乳などの液体タンクや、明石海峡大橋の下に通る排水溝にもファスナーが使われていることは初めて知りました。

瞬間接着剤のアロンアルフアが、犯罪捜査で指紋をとるときにも使われていることにもびっくり。電子基板用のハンダを作っている千住金属工業が、自動車サスペンションの滑り軸受けを作っていることも意外でした。

かなり専門的な部分にまで踏み込んでいるので、大人でも知らないことが随所にあり、楽しんで読むことができました。大人でも「へぇ〜」「なるほど」の連続なのですから、まして、本書を読む子どもにとっては、新鮮な驚きの連続になることは間違いありません。

多くの学校の子どもたちから大好評だということは、世の中に多数ある「しごと」について知り、社会を支える仕組みを学ぶことは、とても楽しい知的作業だということを示しているとも言えるでしょう。

好きなときにおいしいおやつが買え、スイッチを入れたら明かりがつき、定刻通りに電車が走るのはなぜなのか。そんな日常の当たり前のことの裏側に、どんな縁の下の力持ちがいるのか。さまざまな「しごと」の中身を知ることは、自分が生きている社会をリアルに感じることにつながります。ですから将来への夢をはぐくむための教材としても、うってつけでしょう。「なんでこうなっているのかな?」と思ったらすぐに調べられるように、常に手元に置いて、また親子で読みながら、将来のしごとなどについても話し合ってみてはいかがですか。

おしごと年鑑

おしごと年鑑(みつけよう、なりたい自分)
谷和樹(たに かずき)監修、朝日新聞社刊、2000円+税

世の中には、数え切れないほどの仕事があります。大勢の人が働いています。スイッチを入れたら明かりがつき、おいしいご飯が毎日食卓に並ぶのも、大勢の人が一所懸命に仕事に携わっているからこそです。大人でも世の中の仕組みを理解するのが大変な内容を、子どもにもわかりやすいかたちで解説したのが本書です。
「パンツやシャツは、なぜ必要?」「人は1日に何回トイレに行くの?」「どうして勉強しなければいけないの?」「水は誰が運んでくれるの?」「新しい薬はどうやってつくるの?」といった、子どもが抱く125の素朴な疑問に回答するかたちで、さまざまな仕事の内容を紹介しています。

監修者の谷 和樹(たに かずき)さん
玉川大学教職大学院教授。1964年北海道札幌市生まれ。神戸大学教育学部初等教育学科卒業後、兵庫県の小学校教員に。兵庫県加東市立東条西小学校、滝野東小学校、滝野南小学校、米田小学校を経て、2008年から玉川大学教育学研究科教職専攻(教職大学院)に勤務。
『みるみる子どもが変化する『プロ教師が使いこなす指導技術」』『子どもを社会科好きにする授業』(以上、学芸みらい社)、『授業で”学び方技術”をどう育てるか−学年別系統化細案』(明治図書)、『谷和樹の学級経営と仕事術』(騒人社)など著書多数。


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