問題児は病気ではなく金の卵! 育てるのは楽ではないがおもしろい

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発達障害という言葉が頻繁に取り沙汰されるようになった昨今、わが子も何かしらの発達障害を抱えているのではないかと悩んでいる人も少なくはないでしょう。
また、発達障害ならではのわが子の特性に振り回され、周囲からは問題児扱いされ、わが子の将来を悲観してしまっている人もいるかもしれません。

しかし、心配しすぎる必要はまったくありません。なぜなら、問題児は「金の卵」だから。

そう高らかに謳うのは、かつて「和を乱す問題児」であったという勉強のプロ・受験のプロであり、以前ご紹介した『落ち着かない・話を聞けない・マイペースな小学生男子の育て方』の筆者である松永暢史さん。

自らもADHDの傾向があるという松永さんはその著書『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方―ADHDタイプ脳のすごさを引き出す勉強法』において、ズバ抜けた問題児を育てる際に押さえておきたい8つのルールや勉強方法、進路の選び方について自らの豊富な経験に基づいて丁寧に解説しています。

では、さっそく、松永さんの経験知がぎっしり詰まった『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方―ADHDタイプ脳のすごさを引き出す勉強法』の内容を、ほんの少しだけ覗いてみましょう。

目が覚める当事者の叫び「ふざけるな!オレたちは「病気」じゃない!」

本を読む親子

『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方―ADHDタイプ脳のすごさを引き出す勉強法』の中表紙をペラリとめくると、強烈な言葉が目に飛び込んできます。

「ふざけるな!オレたちは「病気」じゃない!」

この言葉に頭をガツンと殴られたような衝撃を覚える人は多いでしょう。

落ち着きがなくて、衝動的で、感情の起伏が激しくて、忘れ物もなくし物も多すぎて、空気がまったく読めなくて、人の話なんて聞いちゃいないし、言ったそばから同じ失敗を繰り返す…そんなズバ抜けた問題児だったという松永さんのこの叫びは、数々の艱難辛苦を乗り越え、数々の成功を積み重ねてきた当事者の言葉だからこそ、多くの人の胸を打ちます。

発達障害に関する本を読んで「自分のことだ!」と思い、妻に本を手渡した松永さんは、奥様に「やっぱりあなた、病気だったのね」と言われ、憤りを覚えたのだそう。

「とんでもない。ふざけるんじゃない。病気どころか、これは能力だ。フツーのやつらが、なろうと思ってもなることができない、生まれ持ったすばらしい能力なのだ!」

モーツァルトもベートーベンも、ニュートンもアインシュタインも、ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズも、歴史上の天才たちのほとんどが発達障害であり、この世界を進歩発展させてきたのだから、発達障害を治すなどもっての外というのが松永さんの主張です。

松永さんは、発達障害は使いこなすものであると考え、使いこなせるようになれば「ギフト」と呼べるものになると信じています。
たしかに、松永さんが語る発達障害の可能性を読んでいると、発達障害を病気と断ずるのは滑稽な気がしてきます。

特にわが子が発達障害かも…と悩んでいる親御さんは、松永さんの言葉をぜひ、一つひとつゆっくり読んでみてください。
きっと、発達障害に対するイメージがガラリと変わり、目が覚めるような思いがすることでしょう。

うちの子って問題児…?悩む親が守るべき8つのルール

問題児は金の卵であるとはいえ、育て方を間違えればその才能の芽を摘んでしまいかねません。

では、問題児の才能が開花するよう、うまく育てていくためにはどうすれば良いのでしょう。

松永さんはその答えとして、次の8つのルールを掲げています。

1.絶対にコンプレックスを与えない
2.がまんさせるのではなく、おもしろがらせる
3.小学校時代はとことん遊ばせる
4.豊かな自然体験をさせる
5.内容にこだわらず、子どもがおもしろがる本を与える
6.ゲームやスマホを与える時間はできる限り遅くする
7.しつけは端的に。ある日突然「わかる」ときが来る
8.子どもの導師となる「運命の人」を探す

松永さんが提唱するこれらのルールの中でも、親が特に気をつけたいのは「絶対にコンプレックスを与えない」ということでしょう。

子どもにできないことがあると、できるようになるように励ましたくなるのが親心というものですが、そこはグッと我慢すべきだと松永さんは語っています。

むしろ、注目すべきは、子どもの「できる」なのだそう。
問題児の調子に乗りやすい性質を活かし、「できる」を「もっとできる」「突出してよくできる」にするべきだというのが松永さんの持論です。

たしかに、「できる」があればそれが心の支えとなり、「できない」があったとしても「できる」を軸に踏ん張れます。これは、問題児でなくても同じですよね。

この他、松永さんの掲げるルールは、どれも目から鱗が落ちる思いがするものばかり。
松永さんの8つのルールを実践すれば、きっと誰もがわが子の才能を開花させられることでしょう。

勉強はおもしろくなければ!問題児のための科目ごとの勉強法

本を読む親子

松永さんは発明王エジソンの言葉「楽しみながら学ぶのがベストだ」という言葉を引き、勉強はおもしろくなくてはいけないのだと主張しています。

そして、問題児のための科目ごとの勉強方法を紹介しています。

その概略は以下のとおりです。

国語編

国語力はすべての勉強の基礎である
【音読】「一音一音はっきり音読」で国語力の土台を作ろう
【漢字】10回書かなくても漢字は覚えられる!
【作文】メモをつなげれば、あっという間に作文になる

算数・数学編

サイコロとパズルで数学の土台を
【暗算力】サイコロを転がして暗算の達人になろう
【図形】家庭に1組、タングラムをおいておこう

英語編

気負わずに英語にふれさせる
【音読】英語の絵本を読んであげられる親になる
【英単語】まずは音読。そのあとに書けるようにする

理科・社会編

考察する習慣を。「なぜ?」の答えを探そう
【社会】フィールドワークに勝る学びナシ!
【理科】生活の中の「なぜ?」「なるほど」を見逃すな!

どれも気になるものばかりだと思いますが、おそらく多くの人が「え?」とたじろいでしまうのは「英語の絵本を読んであげられる親になる」という項目ではないでしょうか。

これについて、松永さんはネイティブ並みの発音にこだわる必要は一切ないと断じ、大切なのは親が学ぶ姿を見せることだと述べています。

おそらく、松永さんの理論の根底にあるものは、山本五十六の格言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と同じなのでしょう。

下手くそであっても、格好悪くても、まずは親が、一生懸命挑戦する姿を見せる。何か新しいことに挑戦させるのは、その後で。
このことは親として肝に銘じておきたいものです。

理想にこだわってはいけない!オクテな問題児たちのための進路の選び方

子どもの理想の進路を、有名私立中学校に進学し、名門と名高い高校・大学に進学することだと考えている親御さんは多いかもしれません。

しかし、問題児はオクテであるため、そのような理想に縛られてはいけないと松永さんは述べています。

そして、その上で中学受験をさせるべきか否か、公立中学校で問題児を伸ばすにはどうするべきか、高校はどのように選ぶべきか、大学はどのように選ぶべきか、問題児の親が気になるアレコレについて丁寧に解説しています。

ただ、何よりも最も注目すべきは、松永さんが大学を卒業してから経済的に自立し、パートナーと出会うことにまで言及しているという点でしょう。松永さんは問題児の親として最も大切なのは、問題児を結婚できるような魅力のある人に育てていくことだと断言しています。

松永さんは人が学ぶことの、生きることの目的が何か、何が人にとっての幸せであるか、明確な答えを持っているのです。おそらく、この本を手に取った多くの人が、松永さんの力強い言葉に突き動かされることでしょう。
なぜなら、松永さんの言葉には、松永さんの愛に満ちた人間観が詰まっているのですから。

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「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方―ADHDタイプ脳のすごさを引き出す勉強法
松永暢史著、主婦の友社、1,300円+税

「問題児」を「フツウの人」に変えようとするなんてもったいない!
ズバ抜けた才能をつぶさずに育てる方法、教えます。

「問題児」を「フツウの人」に変えようとするなんてもったいない!
物おじしない性格、ルールより自らの感性を重んじる気概、喜怒哀楽の豊かな表情、好きなことに打ち込むときの集中力、そして呆れるほどの飽きっぽさ――。

フツウの人には望むべくもないズバ抜けた才能を、つぶさずにどう育てるか。

協調性のなさ、落ち着きのなさから、
問題児としてはじき出されがちな子どもの伸ばし方、効果的な勉強法とは?

ADHDタイプ脳を自認する著者が、
自らの体験を踏まえて編み出した勉強への取り組み方を教えます。

問題児を育てる基本ルール、
国語力・算数力・英語力をどうつけるか、
ケアレスミス対策、
問題児に向く塾・向く問題集、
中学受験をするかしないかなど、
教育と受験のプロとして多くの生徒を指導してきた著者の、具体的なノウハウが詰まった1冊です。

「フツウの人」がAIと仕事を取り合うことになるであろう十数年後、「問題児」の未来は明るい!

松永 暢史(まつなが のぶふみ)
1957年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。
教育環境設定コンサルタント・V-net教育相談事務所主宰。
多動で衝動的なADHDタイプであるために、「和を乱す問題児」として学校生活を送る。高校受験に際して、成績アップの方法を模索。一律的な教育に向かない自らの体験をふまえ、勉強のプロ・受験のプロとして、さまざまな学習法を開発し、教育コンサルタントとして講演活動、執筆活動を行っている。


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