「将来は何になりたいの?」に答えられなくても大丈夫!生きることの道標になる一冊

「将来は何になりたいの?」とは、子どもの頃、誰もが一度は聞かれたことのある質問でしょう。

この質問に意気揚々と答えられたという人もいれば、恥ずかしくてなかなか答えられなかったり、そもそも何になりたいのかがわからず、余計に悩んでしまったりしたという人もいると思います。

そしてきっと、多くの人は後者のような子どもだったのではないでしょうか。

そんな我が身を省みて、わが子には早いうちから将来について考えさせたいと思っている人もいるかもしれません。

そのような人にこそ、ぜひ、手に取ってみてほしいのが、池上彰さん監修の『なぜ僕らは働くのか 君が幸せになるために考えてほしい大切なこと』です。

フリージャーナリストとしてテレビなどでも大活躍している池上さんは、本書の冒頭で次のようなメッセージを送っています。

 「この本は、将来の働き方について中学生や高校生に考えてもらおうと願って作られました。この本を読めばわかりますが、本を一冊作るのにも多くの人が携わっています。この本を作るにあたって、私たちスタッフは自分の子どもの頃のことを思い出していました。将来どんな職業に就きたいのか、希望や不安を持っていたことを。

 そんな昔の自分に対して、「不安にならなくても大丈夫だよ。まずは世の中がどんな仕組みになっているかを知っておこう。それからじっくりと考えたり、いろんな体験をしてみたりすれば、きっと自分の仕事が見つかるさ」と語りかけながら完成させたのが、この本です。

 この本は中高生向けではありますが、大人であっても、自分の仕事に不満を持ったり、不安があったりする人がいるでしょう。そんな大人にも読んでもらいたいのです。きっと初心に帰って、仕事への意欲が湧いてくることでしょう。」

子どもはもちろん、大人にも読んで欲しい本書。

主にやさしいタッチの漫画とかわいらしいイラストで構成されていて、小学生でも楽しく読める内容になっていますが、実際、パラパラとページをめくってみるだけでも、大人も思わず納得してしまうような、「働く」ひいては「生きる」ことに関する疑問への答えがギッシリと詰まっていることがわかります。

今回は、そんな本書の読みどころをほんの少しだけご紹介しましょう。

どんな仕事も誰かの役に立っている

『なぜ僕らは働くのか 君が幸せになるために考えてほしい大切なこと』
『なぜ僕らは働くのか』

「この仕事、すごい!やってみたい!」と思ったり「あの仕事はちょっと恥ずかしい…絶対にやりたくない」と思ったりすることは、誰にだってあるでしょう。

しかし、「職業に貴賎なし」という言葉があるように、どんな仕事も大切なものばかりで、必ず誰かの役に立っているもの。

たとえば、「今度家を建てるんだ」と誰かが話していたとして、実際に家を建てると言った本人がトンカチ片手に家を建てるなんてことはほとんどあり得ないでしょう。

多くの人はハウスメーカーや工務店にお金を払い、家を建ててもらっているはずです。

しかし、素敵な家を建てるためには、ハウスメーカーや工務店に所属している建築士さん、大工さんをはじめとする社員さんだけでは足りません。

釘を作ったり木材を加工したり、家づくりに必要な工具を作ったりする人はもちろん、金属を採掘したり木を育てたりする人など、数えきれないほどの人の手が必要になります。

そしてきっと、そのうちの誰か1人、どれか1つの仕事でも欠けてしまったとしたら、素敵な家を建てることは不可能になってしまうでしょう。

『なぜ僕らは働くのか』は、そのことをやさしく、丁寧に教えてくれます。

お金さえ払えばほぼすべてのものを手に入れられる現代、大人から子どもまで、なんとなく自分ひとりの力で生きているものだと思い込んでしまっている人は少なくないでしょう。

しかし、本書を読めば、その考えは間違いだと気づくことができます。

子どものうちから「将来の夢」を決めておく必要はない

「将来の夢は何?」と聞かれたとき、何も答えられずに黙り込んでしまうわが子を見て、焦ってしまう親御さんもいるかもしれません。

たしかに、将来の夢を元気にハキハキと答えられた方が、印象は良いのでしょう。

しかし、子どものうちから将来の夢を決められないことについて焦る必要はまったくありません。

むしろ、はやいうちからなりたい職業が決まっていることは、必ずしも良いこととは言い切れないと『なぜ僕らは働くのか』は警鐘を鳴らしています。

子どものうちは世の中にどのような職業があるのかよく知らず、本当に適性のある職業を見つけられる可能性は限りなく低いもの。

それなのに、数少ない知っている職業の中から無理矢理やりたい仕事を決め、「この職業に就きたい」とうそぶいたとして、果たして将来幸せになることができるでしょうか。

「子どもの頃からなりたいと言っていた職業だから」と自縄自縛に陥ってしまったとしたら…夢が叶わなかったとき、必要以上に絶望感を抱くことになってしまうでしょう。

また、夢が叶ったとしても、「夢がようやく叶ったのだから」と適性が無いのにしがみつき、心身ともに消耗してしまうことになってしまったら…決して幸せとは言えない毎日を送ることになってしまうかもしれません。

そのため、『なぜ僕らは働くのか』は将来の夢を決めておくことより、「自分は何がしたいのか」を常に考え続けることが大切だと訴えています。

「やりたい仕事の見つけ方」まで丁寧に書かれている本書を読めば、子どももきっと肩の力を抜いて将来について前向きに考えることができるようになるでしょう。

また、大人もいつかどこかで味わったほろ苦い挫折感を払拭することができるかもしれません。