子どもの「考える力」を引き出す10のマジックワードとは

 同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?

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学校や塾で同じ授業を受けているのに、なぜ差がつくの? こんな疑問を持ったことはありませんか?そんな疑問を著者がズバリと回答。さらに「できる子」と同じようになれる手法を紹介した本が今年2月に発行されました。タイトルは『 同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?』。著者の石田勝紀さんがWeb連載でそのエッセンスを書いたところ大反響に。その連載をベースに書籍化したのが本書です。

「できる子」は常に考えている

小学校高学年の子ども

同じ勉強をしていてなぜ差がつくのか。誰もが一度は感じる疑問でしょう。ところがいくら考えても答えが見つからない。そうなると「もともとの頭の作りが違うんだ」と自分を納得させてしまうのではないでしょうか。

その理由を解き明かすのが本書の第一のテーマ。そして、「できる子」と同じ能力を身につけるにはどうしたらいいのか。その手法を具体的に解説、すべての家庭で取り入れられる手法を紹介するのが第二のテーマです。本書は、この2本柱で構成されています。

まずは第一のテーマ、「一生懸命勉強しているのに、できる子とそうでない子の差はどこにあるのか」について、著者は「差がつく理由はかなりシンプル」と書いています。そして、3つの学びのタイプで、その差がつく理由を解説します。

・タイプ1=学んでいるように見えるが、学ぼうと思っていない人
・タイプ2=授業中・仕事中だけでしか学ばない人
・タイプ3=寝ているとき以外、日常すべてが学びになっている人

もうおわかりですよね。勉強のできる人というのは「タイプ3」の人。起きている時間すべてで学んでいるのですから、「タイプ1」や「タイプ2」の人は、かなうわけがありません。こうして文字にされると、非常によくわかります。

しかも、同じ「学ぶ」でも、別に「勉強するぞ〜!」と意気込んでテーマに取り組んでいるわけではなく、すべての学びが日常生活そのもの。テレビを見ているときも、友達と話をするときも、駅までの道を歩くときも、さまざまなことを発見し、考え、自分なりの意見を持つことが習慣となっているのです。

だから、経験から得ている情報量が「タイプ1」や「タイプ2」の人とはまったく違う。しかも、「机上の勉強以外の学びが圧倒的に多く、それが机上の勉強へと応用されている」といいます。圧倒的な知識量が、机上の勉強に応用されているわけです。

このタイプ別の「学び」については、本書の第2章で詳しく解説されているので、じっくりとお読みいただきたいのですが、「タイプ3」の人は東大生に非常に多くいるとのこと。こうなると、「タイプ3」の人は特別な人だから、普通の人には真似できない、と思えてきます。

しかし、著者は「後天的に身につけることは可能」と断言します。では、どうやって? それが、第二のテーマ。子どもに問いかけることによって「脳のスペック」を向上させる10のマジックワードとは何なのか、です。

考えるきっかけを生む10のマジックワード

小学校高学年の子ども

「タイプ3」の人は、なぜ寝ているとき以外は学ぶことができるのか。著者はこの謎について、パソコンのOS(オペレーティング・システム=基本ソフト)を例えに出して解説しています。OSのバージョンが新しく、性能が高ければ、さまざまなソフトをインストールできます。逆に古いと、新しいソフトは使うことができません。

人間の脳も同じようなもの、というのが著者の見立てです。脳のOSのスペックが高ければ、どんなアプリケーションソフト(科目)が現れてもインストールでき、使いこなせる。OSでわかりにくければ、「考える力」「情報を処理する力」と言い換えてもいいでしょう。

むろん、パソコンの対応OSが決まっているように、人間の脳にももって生まれたスペックはあるでしょう。しかし、OSのバージョン、すなわち人間の「考える力」「情報を処理する力」は、成長とともに自然と向上していくのもまた事実です。あるがままの状態でもOSは成長しますが、それを「意識してバージョンアップ」させる環境を作り、効果を高める。そのために使うのが、10の問いかけの言葉、著者が「マジックワード」と呼んでいる以下の言葉です。

1:「なぜだろう?」(「原因分析力」をつくる)
2:「どう思う?」(「自己表現力」をつくる)
3:「どうしたらいい?」(「問題解決力」をつくる)
4:「要するに?」(「抽象化思考力」をつくる)
5:「たとえば、どういうこと?」(「具体化思考力」をつくる)
6:「楽しむには?」(「積極思考力」をつくる)
7:「何のため?」(「目的意識力」をつくる)
8:「そもそも、どういうこと?」(「原点回帰力」をつくる)
9:「もし〜どうする(どうなる)?」(「仮説構築力」をつくる)
10:「本当だろうか?」(「問題意識力」をつくる)

とてもシンプルですよね。これらの言葉を、適宜子どもに使うことで、子どもの脳のOS、すなわち「考える力」がメキメキ向上。命じられなければ考えなかった子でも、「自分の頭で考える」ようになってしまうというのです。10マジックワードは、その「考える」きっかけを作る言葉なのです。

まず大人が自分自身に問いかけることが大切

小学校高学年の子ども

しかし、注意すべき点もあります。
それは、欲張らないこと。真面目な親御さんほど、10のマジックワードをすべて使おうとして、「頭がパンパンになってしまって」何も実行できないこともあるそうです。

そこで著者は「やってみたいことを(最大)3つに絞ってください」と書いています。最大3つなので1つでもいいとも言います。目前のテストの成績を上げるための勉強ではなく、子どもが自分の頭で考えるきっかけを作るのですから、別に欲張る必要はないのです。

この場合、その時々の状況でうまく問いかけの言葉を使い分ける必要もあるでしょう。たとえば、成績が伸び悩んでいる子に「なぜ伸びないの?」などと問えば、これは非難の言葉になってしまいます。勉強が嫌いな子に「楽しむにはどうしたらいいと思う?」などと聞いても、ほとんど嫌みにしか聞こえないと思います。

また、子どもの感覚は鋭く、何らかの意図をもって大人が発する問いかけには、敏感にその裏を探ろうとします。なんとか脳のスペックを上げてほしいと願ってマジックワードを発すれば、子どもはたちどころに親の意図を見透かし、逆効果になることもあり得ます。

10のマジックワードはとてもシンプルですが、使い方は意外に難しいかもしれません。著者はいくつかのワードについて「自分自身に問いかけてみるのが最も効果的」と記していますが、それは、すべてのワードについて言えるでしょう。ふだん、この10の言葉を自らに問いかけていない人が、付け焼き刃で子どもに問いかけても効果は薄いでしょう。大人の能力が試されるワードでもあるのです。

まずは、10のマジックワードとその解説を読み、こうした問いを自分自身に問いかけているかどうか、考えてみるといいのではないでしょうか。そして、自問自答の習慣があると確信できれば、子どもに対して少しずつ使ってみるといいでしょう。

その習慣がない、あるいは不安がある場合はどうするか。子どもに問いかける前に、「まずは大人が自問自答のかたちで問いかける」習慣をつける。大人の脳のOSもバージョンアップするのです。手間がかかるようですが、それが、このマジックワードで子どもの脳のスペックを上げるための王道ではないかと感じました。

書影

『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?』
石田勝紀著 ディスカヴァー・トゥエンティワン刊、1,500円+税

「同じ学校で同じ授業を受けていて、同じ勉強をしているのに、なぜあの子はできて、うちの子は……?」 誰もが思う疑問に対し、著者が「東洋経済オンライン」の連載で回答したところ、その記事が驚異の265万PVを達成。120回の連載の中で最高の反響が得られたのです。 その連載をベースに、連載では書けなかった、さらに「深く本質的な方法」を加えて書籍化されたのが本書です。 自らの受験体験と、これまで3500人以上に生徒に直接指導してきた経験、さらには東京大学大学院で通算6年以上、周囲の東大生にヒアリングをもとに著者が発見したのは、「できる子はつねに学んでいる」ということ。教室での授業や家庭での勉強だけで差がついていたわけではありません。 そんな能力は生まれつきでは? と思いがちですが、実は、パソコンのOSをバージョンアップするように、どんな子どもでも、頭脳のスペックを向上させることができる。それが著者の結論。その方法として本書が取り上げているのが10の「マジックワード」。それはどんな言葉か、どのように日常生活で使えばいいのか。著者が詳細に解説していきます。

石田 勝紀(いしだ かつのり)さん
一般社団法人教育デザインラボ代表理事。1968年横浜生まれ。20歳で会社を設立し、学習塾を創業。これまで3500人以上の生徒を直接指導。講演会、セミナーなど間接的指導を含めると、5万人以上に上る。 いわゆる詰め込み勉強はさせず、「心の状態を高め」「生活習慣を整え」「考えさせる」の3つを柱に指導をすることで、学力上昇のみならず、社会に出ても活用できるスキルとマインドを習得させてきた。 現在は、「日本から勉強が嫌いな子を一人残らずなくしたい」という志のもと、「Mama Cafe」、執筆・講演活動を精力的に行っている。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書:『勉強しない子には「1冊の手帳」を与えよう!』『はじめての子ども手帳(日付フリー式)』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『みるみる絆が深まる「親子手帳」』(学研)、『前向きな子はすべてがうまくいく』(海竜社)、『地頭が育つ5つの習慣』(KADOKAWA)ほか多数