中学受験、世帯年収いくらで私立中高一貫校は可能なの?(3ページ目)

「私立高校実質無償化」で、私立中高一貫校も目指せる?

2020年に国が私立高校の就学支援金の増額を決めたことで、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県は2020年4月から私立高校実質無償化の対象世帯をさらに拡大しました。この地域に住むご家庭においては、私立高校進学へのハードルが下がり、中学受験も視野に入ってきます。特に東京都と神奈川県の私立中高一貫校は、高校からの募集がない学校や、中学受験と比べると高校受験の偏差値が高い学校があることからも、中学受験を選択する後押しになるでしょう。では、制度を利用することを前提に、私立中高一貫校への進学した場合、家計負担はどうなるのでしょうか?

東京都にお住いのご家庭でのシミュレーション

東京都では年収910万円未満の世帯が実質無償化の対象となります。本制度を利用したときの支給金額は、国の制度と併せて、1年間最大461,000円(在学校の授業料が461,000円を下回る場合は、その金額が上限)、3年間合計で138万3千円、1か月あたり約38,400円になります。文部科学省のデータを参照にした教育費、月11万円が高校でもかかるとすると、月約71,600円が捻出できれば、子どもが高校生のときは何とかなる計算です。

問題はお子さまが中学生のとき。高校のときと同様、月に約71,600円は何とかなりそうなご家庭であれば、残り38,400円をどう捻出するかです。車を手放す、祖父母に協力してもらうなど、3年間を乗り切る工夫を考えなければなりません。

神奈川県、千葉県、埼玉県の私立高校実質無償化は?

神奈川県、千葉県、埼玉県の制度についても見ていきましょう。

【神奈川県】

神奈川県では、今年2020年4月から、年収700万円未満の世帯は実質無償になるように補助枠を拡大しました。県内私立高校の授業料平均、1年間最大444,000円(学校への納付額が補助額を下回る場合、納付額が上限額)が、国の補助である「高等学校等就学支援金」と、神奈川県の補助である「私立高等学校等生徒学費補助金」を併用することで、実質無償となります。さらに、入学金補助として10万円プラスで支給されます。

【千葉県】

東京都・神奈川県・埼玉県では、世帯年収に応じた対象者全員、一律に同金額が助成されるのに対し、千葉県は、世帯年収に応じて、通っている学校の授業料をもとに助成の額が決まります。世帯年収590万円未満の家庭には、国の助成との差額で授業料が無償になるように助成され、入学金補助もつきます。世帯年収590万円以上640万円未満の家庭は、授業料の3分の2の額が助成されます。

【埼玉県】

父母負担軽減事業として授業料や施設費等納付金が実質無償となります。「授業料軽減補助」では、2020年4月からは年収約720万円未満世帯に対し、国の就学支援金と合わせて、県内私立高校の平均授業料378,000円までを補助しています。また、埼玉県内在住で埼玉県内の私立高校等に通う生徒がいる、年収合計約609万円以下の世帯には、入学補助金として一律10万円が支給されます。

東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の「私立高校実質無償化」に関しては、私立高校の授業料実質無償化で受験は変わる?【2020年度版】」に詳しい説明があります。こちらも併せてご覧ください。

特待生制度や奨学金についても知っておこう!

特待生制度についても知っておこう!特待生制度についても知っておこう!

高校からの補助制度は充実してきましたが、私立中高一貫校を目指したいご家庭の中学時の負担は悩みの種です。 そこで、特待生制度を検討するのも一つの手です。

特待生として免除される内容は、学校によって異なり、①入学金のみの免除、②1年間の授業料免除、③入学金と3年間の授業料免除などがあります。たとえば、①の入学金が20万の場合は、20万が免除、②入学金が20万で授業料が45万の場合は、合計65万が免除、③の場合は、20万+45万×3年間で合計155万が免除されることになります。

選抜方法は、一般入試を受け、特待生としての合格基準を上回った場合と、「特待生選抜入試」で選ぶ方法の2パターンあります。成績優秀者として学校を引っ張っていく存在としての特待生のため、入学後の成績が著しく低下した場合には、免除されなくなるケースもありますのでしっかり検討することが大切です。

「何を優先するか」先々のことも考えて、家族で話し合いを

お子さまが私立中高一貫校を希望したとき、お金の面で諦めさせるのは親としてもつらいところ。しかし、先行き不透明な時代、貯蓄がない状態は危険ですし、老後資金も必要です。家計を少しやりくりをすれば手が届くのか、まったく手が届かないのか、しっかりシミュレーションして受験に臨みましょう。