ことばを味覚で感じる!? 体感型絵本「たべることば」とは?

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先日、未就学の子どもが「キモい」と言っているのを聞き大変驚きました。言葉には人を傷つける力があることを早いうちから伝えたほうが……。それにはどうしたらよいだろうと思っていた矢先、言葉を味覚で感じて理解する画期的な絵本が企画されたというニュースが入ってきました。絵本の名前は『たべることば』。商品化前のお披露目体験試食会が、7月13日に文京区にあるフレーベルこどもプラザで開催されるとのことで、早速参加してきました。

「キモい」「ごめんね」はどんな味?

絵本「たべることば」を企画したフレーベル館と言えば、「ウォーリーをさがせ!」や「アンパンマン」の絵本でおなじみの出版社。創業はなんと1907(明治40)年。100年以上も幼児向け絵本・保育図書の出版と保育用品・保育教材の研究開発に携わってきた会社です。その老舗の会社が、「たべる」という新しいタイプの絵本にチャレンジしようとしたのは、次のような背景からでした。

フレーベル館の取締役 企画開発本部長の木村美幸さんは、
今、子どもたちがSNSで『死ね』とか『キモい』とか『ださい』という言葉を発し、言われた相手の人が激しく傷ついてしまうという言語環境があります。そうした人を傷つける言葉の意味を味覚として体験してほしいという思いで企画しました。
と説明します。

加えて、「今までの絵本は人間の五感のうち“目で見る”“耳で聞く”“においをかぐ”“手で触る”はあったが“舌で味わう”がなかった。老舗の会社の新しい挑戦。」ということも話されていました。

さて、今回のお披露目体験試食会には10組の親子が参加。今からどんなことが始まるのかとみな興味津々です。冒頭の挨拶の後、絵本の紹介と試食会がスタート。「ことばをたべる」という初めての体験に参加者の気持ちも高鳴ります。

絵本になった“たべることば”は「すき」「だいすき」「きらい」「バカ」「キモい」「ごめんね」「ありがとう」の7つ。参加者は企画者であるフレーベル館の感応さんの解説を聞きながら、順に食していきます。

最初は「すき」という言葉。食べると子どもたちからは、「あまーい」「おいしい!」という声が上がりました。次の「だいすき」。「すき」よりもっとうれしくて、心が軽やかになることを表現した味で、実際食べてみるとレモンの甘ずっぱさが口いっぱいに広がります。

どんな味がするか親子で会話が弾みます。

次からは「きらい」「バカ」「キモい」といったネガティブワードが続きます。「きらい」は、苦みが舌にいつまでも残るような味で、嫌な気持ちがいつまでも続く感じを表現しているとのこと。「バカ」は辛い味。チクチクした痛みを感じさせます。ここまでくると、子どもたちは「キモい」を食べることを躊躇してしまって、親御さんも「なんだろうこの味!?」と苦痛な様子。見た目もどんよりとした色で、しんどい気持ちを表現しているとのことでした。もちろん食べる、食べないの判断は参加者親子自身が行っていました。

「きらい」を食べたお子さまの表情

次の「ごめんね」は、口の中でしゅわしゅわと溶けるさっぱりとしたラムネ味。子どもたちの顔もパッと明るくなります。子どもたちから再び「おいしい!」の声が。嫌な気持ちを洗い流せるような味にしたとのこと。最後の「ありがとう」はレインボーカラーで色づけされ、ゼリー素材で触感も柔らか。ハッピーな気分になれるようにとフルーティな味つけとなっていました。

7つの言葉のお菓子は、保育学・言語学などの専門家やパティシエの協力のもと、試行錯誤を重ねて作られたとのこと。企画者の解説を聞くと、色・味ともに的確に表現していると感じました。

言葉を受け取った相手はどんな気持ちになる?考えるきっかけになる絵本

ことばのイメージを膨らませながら、塗り絵に取り組みます。

試食会のあとは、参加者に7つの言葉が書かれた白い紙が配られました。自分だったら「ことば」をどんな色・味で表現するのかを考えてもらうためです。
感応さんは、「絵本で表現された色・味は、ことばの印象をこうなのだと決めつけるものではありません。」と言います。「自分で考えてみる」ということも、絵本を通して伝えたいことのようです。

お子さんは親御さんに説明しながら、また、親御さんもお子さんに聞きながら塗り絵を完成させていきます。色とりどりの塗り絵が完成し、お子さんが塗り絵を発表する場もありました。

イベントの終盤、親御さんからはこのような感想が聞かれました。

「言葉を味で表現するのは初めての経験。子どもが『ありがとう』を『綿あめみたいな味!』と表現してすごいと思った。そこで会話が生まれた。親子で一緒に考えられるすてきな絵本ですね」

「子どもが言葉を受け取る人の印象を味覚として、本能的な刺激として感じられるのはとてもいい。子どもが相手に伝える言葉をチョイスするときに生きてくると思う」

どの親御さんからも、この言葉を発したら相手がどんな気持ちになるのかを考えることが大事、という思いが伝わってきました。

最後に企画者からのメッセージをご紹介します。

フレーベル館 感応さん: 言葉には言われてうれしくなる言葉、悲しくなる言葉があるのを、お菓子を食べることで体感いただけるのではと思います。また、食べ物に含まれる栄養と同じで、言葉は誰かの心の栄養となったり、その逆もあるということを感じてもらいたいと思いました。

この絵本は、「きらい」と言う言葉の味は苦いんだよ、というような決めつけではなく、「きらい」といったらどんな味になるのだろうと考えるきっかけにしてもらいたいと考えています。そして、「おいしい言葉」を投げかけられるようになってもらえると嬉しいです。

そして、この本を通して、親子での対話をし、言葉の重みや相手に与える影響を考えてほしいと思います。子どもが傷つける言葉を使ったとき、「自分がそんなことを言われたらどういう気持ちになるの!」と、つい叱ってしまうことがあるとは思いますが、そういうことを言わずとも、味にすることによって子どもが理解し、感受性を育てていけるといいなと思います。

フレーベル館 企画開発本部長 木村さん: 今回のイベントでは、親子で「どういう味がする?」と会話をしながらコミュニケーションを取ってもらいたいと考えていました。結果、絵本をもとに会話が生まれ、想像以上の効果があると感じました。製菓会社にとっては美味しくないものを作るという挑戦にもなり、ハードルは高いですが、イベントでの反響を鑑み、商品化を検討していきたいと思います。

子どもは、まわりの友だちや大人が発する言葉の意味をわからず使ってしまうことがよくあります。言葉が持つ力、重みを親子で考える機会として商品化を期待したいですね。