SDGsについて正しく理解すると学校を見る目も変わる!?

inter-edu’s eye

「SDGs」という言葉を耳にした、あるいは目にしたという方も多くなってきているのではと思います。しかし、SDGsがどんな意味なのかわからない、あるいは「自然環境を守ろう」といったエコロジー運動の一貫だと誤解している人も多いように思います。
でも、SDGsについてきちんと理解していくと、現代社会が抱えているさまざまな課題や、それに対して企業・学校がどのように対応し、活動しているのかを理解する重要な指針にもなっていることがわかるのです。
そこで、SDGsの基本的なことを踏まえながら、学校とSDGsの関連性について解説します。

SDGsは環境、教育、人権、国際理解などが含まれている活動指針

SDGsは「エスディージーズ」と読みます。この言葉だけだと一体何のことやらと思うかもしれません。

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」ということになります。「開発」という言葉が入っていることで、単純に環境のことだけではないということがおわかりでしょう。

SDGsは、2015年9月の国連サミットにおいて、2030年までに「『誰一人取り残さない』持続可能で多様性のある包括的な社会を世界共通の目標にしよう!」と、国連に加盟するすべての国が採択したものです。

そして先進国、開発途上国、すべての国連加盟国が上記の目標を遂行するために作られたのが、以下の17の実行目標です。

sdg_logo

これを見ると環境のこと以外にも、教育、人権、産業開発、多様性への理解など、さまざまな項目があることがわかります。

そしてこの17の目標をより詳しく、どう行動するかを具体的に示す169のターゲット(具体目標)が設けられており、1つの目標につき10ターゲット程度の具体目標が設定されています。

SDGs出展企業のブース
2018年12月開催のエコプロ展。出展企業のブースには17の目標のうち、いくつの目標を遂行しようとしているか、対応している目標アイコンを表示させていた。

その中から教育に関する項目を見てみましょう。

「質の高い教育をみんなに」という教育に関する目標4は、具体的には「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」です。それを達成するため、全部で10のターゲットが設定されています。

【目標4のターゲット1〜5抜粋】

・4.1 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。

・4.2 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。

・4.3 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。

・4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

・4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。

グローバル教育を目指す教育現場ではSDGsへの取り組みが一つの指針に

さて、教育現場ではすでにユネスコの主導でESD(Education for Sustainable Development)、日本語訳では「持続可能な開発のための教育」という取り組みが進められてきています。

ESDとは、世界中にある環境、貧困、人権、平和、開発など、現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、課題解決につながる新たな価値観や行動を生み出すし、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。ユネスコ認定スクールではSDGs以前から取り組む学校も多くあります。

このESDもSDGsでは目標4のターゲット4.7に含まれている活動ですが、ESDを達成すること自体が、直接・間接的に17の目標すべての達成に貢献するものとしてSDGs達成を見据えた課題解決をしていこうという動きがあります。

【ターゲット4.7】

2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

最近では国際バカロレア資格を取得できる学校や、帰国生や留学生など多国籍・多民族の生徒が共学する学校など、国際社会で活躍できる人材を育てるためにグローバル教育を推進する学校が増えてきています。

単に教育の一貫としてSDGsについて学習するだけでなく、学校全体でSDGsについてどう捉え実行しようとしているのかで、その学校が何を目指し、どんな教育をしようとしているのかがわかるかもしれません。

実際に学校ではどう取り組んでいるか実例を見てみましょう。

郁文館

同校では行事や普段の授業を「SDGs」の開発目標と関連づけて展開。シラバスでもその授業が何の開発目標につながっているのかを記し共有することで、生徒につながりをわかりやすく伝えています。さらに生徒有志15人で「SDGs委員会」を発足。姉妹校であるバングラデシュの学校との意見交換では、先進国と発展途上国というそれぞれの立場でSDGsについて意見を交わすことによって、同じ年代でも考え方や価値観の違いに気づくきっかけとなっています。
https://www.inter-edu.com/special/ikubunkan/features/rensai3/

明星中学校・高等学校

高校2年生がSDGs17の目標について、社会ではどのようにその問題を取り組んでいるのかを分析し、その研究成果を発表共有しました。それぞれの進路を選択する幅が広がるきっかけになったようです。
https://www.edulog.jp/meisei-hs/archives/2198

新渡戸文化小学校・中学校

同校の小学生3年生が放課後、プラスチック問題について企業と中学生が打ち合わせをしている様子を見学。その姿に刺激され自主的に勉強を始めていました。手に取って勉強していた本は、「SDGsアイディアブック」。中学生が相談している企業のことが載っていたそうです。後日SDGsを友だちに広めたいという想いを実現させるために、自分たちで考えて「SDGs新聞」を自主的に発行したとのことです。
https://www.edulog.jp/tokyobunka-el/archives/1681

SDGsの目標は世界が達成できていない「課題」

実は、SDGsの日本での理解度は他の先進国に比べると低いという課題がありましたが、最近、少しずつ認知度も向上してきています。今年8月の朝日新聞社の調査によると、最新の調査では「SDGsという言葉を聞いたことがあるか」という質問に対して、「ある」と答えた人が27%と、2017年7月に調査開始してから初めて20%を超えたという結果が報告されています。特に15歳〜29歳の若い世代の伸び率が高く、学生の伸び幅が大きくなっています。
前述したように学校自体が取り組む、また生徒たちが自主的に取り組む動きが活発になってきたことも一因でしょう。

とはいえ、世界のSDGs達成度ランキングでは、日本は162カ国中15位と昨年と順位は変わらず(国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク 2019年6月調査)。その理由として、依然としてジェンダー平等や責任ある消費・生産、気候変動対策、パートナーシップに大きな課題があると指摘されています(ちなみに1位〜5位はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランス、オーストリアの順)。

SDGsで掲げられている目標は、裏を返せばいま、世界の国々が達成できていない世界共通の課題でもあります。学校現場ではSDGsで指摘された課題について、どう解決していけばいいのか、学習という視点ではなく、自分事として捉え考え、考える視点を持つためさまざまな取り組みを行っています。

SDGsについてあまり考えることはないな、という方は、例えば「SDGsって知ってる? どんなこと?」とお子さんに聞いてみてはどうでしょうか。親子でSDGsについて話し合う、そんな時間を設けることで、17の目標を「自分たちの課題」として捉えていくことができるのはないでしょうか。

【記事参考】

ユニセフ:持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット
https://www.unicef.or.jp/sdgs/target.html

文部科学省:ESD 持続可能な開発のための教育
http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/about/pdf/pamphlet_01.pdf

【SDGs認知度調査 第5回報告】SDGsを「聞いたことある」27%に増。若い世代の認知広がる(2019/8/21)
https://miraimedia.asahi.com/sdgs_survey05/

サスティナブル・ブランドジャパン:世界のSDGs達成度ランキング
https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1193050_1501.html


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