【奨学金最新事情】第1回:お金を理由に進学を諦めない!給付型奨学金最新事情

2020年4月、国の施策として、高等教育(大学・短期大学・高等専門学校・専門学校)の修学支援制度がスタートします。財源は消費増税分が充てられ、支援内容は給付型奨学金の対象拡大と授業料・入学金の免除又は減額です。そこで奨学金をめぐる最新事情について連載でお送りします。第1回目は、これまでの奨学金とは何が違うのか、奨学金をめぐる現状、給付型奨学金とはなにかについてご紹介いたします。(2019年10月30日公開の記事に追記)

時代の状況に合わせて奨学金制度も変化

時代の状況に合わせて奨学金制度も変化

文部科学省の調査によれば、子ども一人あたり大学進学にかかる初年度の費用は、国立大学で約82万円、公立大学で地域内なら約77万円、地域外なら約94万円。私立大学文系は約117万円、理系約154万円、医系約477万円となっています。これに理系・医系であれば実験・実習等の費用が加算され、一人暮らしの必要があればその費用も加わります。

すべての費用を家計で賄うことが難しい家庭も多く、今では大学生の約4割が、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)を通じて国の貸与型奨学金制度を利用しています。
しかし、この「貸与型奨学金」には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金の2種類がありますが、どちらも貸与であるため返還しなければなりません。

JASSOの「貸与型奨学金」は、返還は貸与終了月の翌月から数えて7カ月後から始まります。学ぶために数十万円、数百万円の借金を抱えることの常態化や就労環境の悪化による返済滞納が問題視されたこともあり、2017年度からは無利子の第一種奨学金限定で、所得に応じて返還月額が決まる「所得連動返還型奨学金」が始まりました。

2018年度からは、返済の必要がない「給付型奨学金」の支給がはじまりました。しかし、その当時の支援対象者は、生活保護世帯と、住民税非課税世帯、そして社会的養護を必要とする人(18歳時点で児童養護施設等に入所などしている生徒等)と限定的でした。

高等教育の授業料減免と給付型奨学金の支援対象を拡大

しかし、経済的に困難な家庭の支援にはまだ十分ではないことから、2020年4月からは新たに支給対象を広げることが決まりました。対象は、大学、短大、高等専門学校(4・5年生)、専門学校で学ぶ住民税非課税世帯と、それに準ずる世帯の学生です。また成績要件を満たしていなくても、学ぶ意欲があれば支援の対象になります。同時に「授業料・入学金の免除又は減額」も始まり、給付型奨学金の対象となれば、大学・専門学校等の授業料・入学金も免除又は減額されることから、“大学無償化”の始まりとも言われています。

例えば、両親、本人、中学生の4人世帯で、本人が私立大学に進学する場合、世帯年収が約270万円以下の住民税非課税世帯であれば、大学の入学金約26万円と授業料約70万円を上限に減免されます。給付型奨学金に関しては、自宅から通う場合は年額約46万円、自宅外からだと年額約91万円の給付され、生活保護世帯で自宅から通学する人や児童養護施設等から通学する人であれば年額51万円が給付されます。

高等教育の授業料減免と給付型奨学金の支援対象を拡大

※両親・本人(18歳)・中学生(15歳)の家族4人世帯の場合の目安。本人の年齢や家族構成等によって、目安年収は異なります。住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、住民税非課税世帯の学生の2/3又は1/3の支援額となります。
(支援金額の詳細)http://www.mext.go.jp/kyufu/assets/file/kyufu.pdf

入学金と学費が用意できたとしても、入学後に教材費や研修費、生活費などが不足し、アルバイトに明け暮れて、授業単位を落とすようでは意味がありません。
また世帯年収が高い場合は、JASSOの給付型奨学金の対象にはなりません。その場合は、学生本人が借りる貸与型の奨学金か、JASSOの奨学金と併用でき保護者が借りる形になる国の「教育ローン」で学費を用意する方法が一般的です。

国の教育ローンは、子ども一人あたり350万円までを固定金利1.71%で借りることができ、最長15年の長期返済で受験前も申込みも可能です。ただし、現在は、マイナス金利の影響もあり、JASSOの有利子奨学金の金利のほうが低い場合もあります。誰が借りるのか、いつ返すのかをよく検討する必要があります。