玄関で泣いた日 〜A子の選択〜
こんにちは。
早くも2020年の3分の1が終わろうとしていますが、今年の目標の「お餅は1個まで」だけはしっかりと守っている友近です。
新型コロナウイルスの影響で普段どおりの生活や仕事ができない毎日ですが、先日、後輩に前職の塾時代の話をする機会がありました。その時にふと思い出したことを、徒然なるままに書きたいと思います。
18人の15歳
当時、友近は18人の中学3年生を担当しておりました。ハイレベルな学校を狙う「特設コース」の子どもたちでした。男女関係なくワイワイととても仲が良く、そして15歳とは思えないような大人びた子どもたちでした。塾内での私の立場や仕事内容さえも先回りして、友だちをたくさん塾に紹介してくれるような、つまらないモノマネも全力で笑ってくれるような……全員、本当に良い子たちでした。
こんな良い子たちなのだから、全員笑って春を迎えてほしい。そして実際、18人全員がそれだけの実力ももっていたと感じています。
でも……結論から言うと、18人のうち1人だけが不合格になってしまいました。そのたったひとりの少女(仮に「A子」とします)のことを、あれから8年経った今でも鮮明に覚えています。
注目の学校
難しい初めての人生の選択
内申点も高く、偏差値も伸びてきていて、入塾後の定期試験では学年3位まで登りつめたA子。入試の3か月前あたりまでは第一志望のC高校への合格が確実な圏内にあり、私もA子もお母さまも安心していたところでした。
そんなある日、
「先生、お話いいですか? 私、やっぱりB高校(C高校より偏差値が3上)にしようかと思うんです。」
……今でも何が正解だったのかわかりません。
入試までA子にがっちりと張り付いて、鍛えあげて、厳しいレベルの学校でさえも合格させるのがベストではあります。
しかし、それは現実的な話ではありません。
でも、安全パイのC高校に志望を戻すように説得することも憚られました。頑張れば手が届きそうなB高校へのチャレンジを応援し、精一杯サポートし、15歳で初めて経験する人生の選択を納得のいくものにさせてあげたい……。
祈るような気持ちで、背中を押すことにしました。
合格発表の日
私が働いていた塾のあった地域の合格発表は、合格発表の当日に木の板に番号を掲示するという昔ながらのものでした。塾でも手分けしてこの発表を見にいくのですが、私はA子のもとの志望校だったC高校の発表を確認しにいく係になりました。
C高校に着くと、C高校を受けた教え子たちが、ガッツポーズをして近寄ってきます。子どもたちは照れながら顔をほころばせ、私はお母さんたちと抱き合いながら合格を喜び合いました。やはり合格は合格で、自己肯定をする大切な成功体験です。
本部へ戻ると、A子のお母さんから電話がありました。
「先生、申し訳ありません。ダメでした……。」
「A子さんと電話を代わってもらえませんか?」
「今は少し落ち着いてはきましたが、部屋に入り込んで、とても話せる状況ではありません……。」
受験の不合格は、長い人生からすると、小さな挫折かもしれません。
しかし、精一杯やればやったほど悔しく、ダメージは大きく……。でも、その分だけ人間は強くなっていく。
そのことを、このときのA子に話すのは酷だと感じました。
玄関で泣いた日
合格発表の翌日、担当した英語の女性講師とともに、A子宅へ謝罪の訪問をしようということになりました。
玄関先でお母さまと話をしていると、後ろからA子も出てきて……、
開口一番「先生、ごめんなさい。合格出来ませんでした。」と。
もう、4人で泣きました。
今でも時々思い出す生徒。きっと強く自立した女性になっていることでしょう。A子にとってこの経験が糧となり、その後も人生の岐路に立たされた時、果敢に攻め続ける人であってほしいと願ってやみません。
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