中学受験は宿命!併設中高を持たない国立学園小学校の教育とは?

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第7回では、男子・女子御三家はじめ、難関中学校へ数多くの合格者を輩出する国立学園小学校の児玉宏之校長にインタビュー。高い合格実績の裏に隠された取り組みや、教育に対するこだわりをうかがってきました。

見知らぬ土地。小学生だけで過ごす修学旅行

答えのない時代を生き抜くために必要な力は?

国立学園小学校小学校1

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

児玉校長:本校では、「豊かな人間性を培う」ことを究極の目標として、「自ら考え、自ら学び、自ら行動する」子どもの育成を目指しています。「自ら」という自主性を育てる工夫は、教育のいたるところにちりばめられています。その集大成ともいえるのが、6年生の7月後半に広島方面へ3泊4日で行く修学旅行です。5月の後半に国語や社会の授業で平和について学ぶのですが、最大の特徴は「自由度の高さ」です。

修学旅行でよく見かける、バスガイドが先頭に立ち、ついていくことは一切ありません。班ごとにガイドブックと時刻表を使いながら、子どもたち自身で行く場所・交通手段を選び、その場所で1日をどう過ごすかまで自分たちで計画を立てます。私たちは見送ったら、帰ってくるのを待つだけです。

エデュ:それは珍しいですね。見知らぬ土地で不測の事態が起きたときはどうするのでしょうか?

児玉校長:確かに念入りに計画を立ててもうまく行かない時は多々あります。でも基本的に教員はよほどのことがない限り、手助けはしません。地元の人、そして班の仲間と協力して乗り越えていきます。そうすることで仲間を思いやる「やさしさ」や、困難を乗り越える「たくましさ」、時と場を観て判断できる「かしこさ」を身につけていきます。

エデュ:普段経験できないことをたくさん経験できそうですね。

児玉校長:今の時代は、想定外のことが当たり前のように起きて、「答えのない時代」とも言われています。マニュアルだけをマスターして、対応できるような生易しい時代ではありません。想定外のことに出合っても、自分の頭で考え、自分で判断していく力、「自ら考え、自ら学び、自ら行動する力」何よりこれが必要な能力ではないかと思います。

あとは自分の力ではどうにもできない困難に立ち向かうときには、仲間や、時には見知らぬ人に助けられながら乗り越える力が必要になってきます。そこにはコミュニケーション能力が必須ですが、そういった力も身につけていってほしいという思いも込められています。

中学受験が宿命の学校、その独自の取り組み内容は?

決して受け身にならない能動的な学習体制

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エデュ:貴校は男子・女子御三家をはじめ、難関中学校へ数多くの合格者を輩出しています。受験生のご家庭はその教育内容について気になるところですが、特色のある取り組みを教えてください。

児玉校長:すべてにおいてこだわりを持っていますが、その中でも3つお話しします。

まず1つ目は「6年生の習熟度別授業」です。本校は私立小学校としては珍しい付属の中学・高校を併設していない、小学校までしかない学校です。ですので、6年生のほぼ全員が国立・私立中学校の自由募集校を受験する、中学受験が宿命の小学校ともいえます。

そのため6年生の10月までで小学校課程を修了するようにカリキュラムを編成しています。そして11月からの3か月間は、学年を4クラスに分けての習熟度別授業を実施しています。午前中は国語、算数、社会、理科。午後は音楽、図工、体育を行い、自分の力に合ったクラスで受験へ向けての準備を行っています。

エデュ:一人ひとりのレベルに合ったサポートが整っていますね。2つ目は何でしょうか?

児玉校長:「教科担任制」です。本校では4年生以上は全教科で専任の教師が独自の教材を活用し、子どもと共に学び合う授業を行っています。中学受験がある学校なので、知識を増やし技能を磨くことに終始し、詰め込み型の授業を行っているのでは?と思われる方もおられるかもしれませんが、そんなことはありません。子どもの興味関心を引き出し、主体的に考えることを大切にし、子ども同士が共に考えをぶつけ合い、共に学び合う授業を大切にしています。算数では、時に1題に1時間をかけることもあります。もちろん算数だけでなく、他の教科でもこのようなことはありますが、答えを出すこと以上にいろいろな考え方を出し合うという過程、多角的に物事を見ることを大切にしています。

エデュ:1時間というのはすごいですね。3つ目を教えてください。

児玉校長:「放課後の活用」です。月、水、金曜日の帰りの会終了後、低学年は午後4時頃まで、高学年は午後5時頃までの間、子ども自身で課題を見つけ自主的に学習しています。自分がその日分からなかったことを教員に聞いたり、もっとやってみたいことに挑戦するために、教員はそれぞれの教室で待機しています。

例えば、なわとびの検定や跳び箱の跳び方の練習に体育館にやってくる子もいますし、リコーダーやオルガンの練習に音楽室にやってくる子もいます。理科の実験や観察のために理科室へやってくる子もいます。先生に指示されてやらされる時間ではなく、自分で取り組んでみたいことを見つけて、自ら行動しています。

難関中学校への高い進学実績を出す本当の秘密は?

生徒は一緒の思いを持つ同志

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エデュ:難関中学校への高い進学実績の秘密を教えてください。

児玉校長:先ほどお話しした取り組みの一つひとつが根底にはあります。ただそれ以上に中学校が併設されていないことで、子どもたちが同じ方向を向いて、受験に向かっていく環境があることが何よりの強みだと思っています。見学に来られた保護者様から「子ども同士ギスギスしているのではないでしょうか」と質問を受けたことがあります。でも実際には、子どもたちは受験する学校は違っても一緒に合格しようという思いがある、同志といった関係です。

私たちは「12歳の選択」と呼んでいますが、子どもたちは6年生ぐらいになると自我も目覚めてきて、将来の夢を持つようにもなります。その頃に、自分に合った学校を自分で考えて選んでいけるというところも本校が大切にしていることであり、この自らという力も高い合格実績につながっているのだと思います。

エデュ:受験する学校は子ども全員が自ら選んでくるのでしょうか?

児玉校長:本校は最初にお話しした通り、子どもたちは「自ら」という自主性を育む学校生活を送っています。そのため、将来の夢を持つことはもちろんですが、受験する学校も子ども自らが見つけるケースが多くあります。でも、そうはいってもなかなか自分に合う学校が分からない、どこに行けば夢を叶えられるのか悩む子どももいます。そのために私も含めた教員は中学校研究の一環として中学校訪問をしたり、卒業生にアンケート調査をしたりして資料をまとめ、面談を通しその子の目標を叶えられる学校選びの手助けをしています。

エデュ:しっかりしたサポート体制もあるということですね。貴校を目指すご家庭の期待値もますます高まってくると思いますが、これからの私立小学校に求められるものは何だとお考えでしょうか?

児玉校長:2020年度より学習指導要領が変更されます。今までも10年ごとに指導要領が改訂され、学習内容が削減されたり、復活したりしてきました。でも私学には、各校それぞれに変わらない建学の精神があり、独自の教育目標があります。その実現のために日々の教育活動を展開しています。「ぶれない教育」こそ、私立小学校に求められるものだと思います。

エデュ:最後にこれから行ってみたい取り組みはありますか?

児玉校長:ICT教育ですね。ただ子ども一人ひとりにタブレットを持たせたり、電子黒板を配備して満足するのではなく、どういう授業の中で、どういう価値ある使い方があるのか、子どもたちの考える力が深まるためにはどうやって使えばいいのかをしっかり研究してから導入したいと考えています。

国立学園小学校データ

学校名 国立学園小学校
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒186‐0004 東京都国立市中2丁目6番地
JR「国立駅」より徒歩10分
教育目標 豊かな人間性を培う
制服の有無
給食の有無 なし

編集部から見たポイント

高い進学実績を誇り学力はもちろん、大人になったとき必要になる素地を身につけることができる学校だと感じました。中学受験が大前提ではありますが、興味のある方は学校説明会に参加してみてはいかがでしょうか。

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