温かみのある学校で生まれた豊明家族 日本女子大学附属豊明小学校

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第12回では、文京区目白台にある日本女子大学附属豊明小学校校長の山口博子先生にインタビュー。明治時代から始まった、伝統的な女子一貫教育の内容と、時代の流れにより、変わりゆく女性のあり方に対しての初等科教育で意識していることなどをうかがってきました。

一人の女性をじっくり育てる教育

専科教員同士が連携して作る授業

日本女子大学附属豊明小学校1
日本女子大学附属豊明小学校校長 山口博子先生。絵画は卒業生からの寄贈。

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

山口先生:本校には創立者の成瀬仁蔵が残した理念である三綱領、「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」が幼稚園から大学までの一貫教育の中心になる考え方としてあります。初等科では子どもの発達段階を考え、もう少し分かりやすく「一生懸命頑張る子」「自分から進んで行動する子」「みんなと力をあわせ協力する子」の育成を目標としています。その中でも本校の特色として挙げられることがいくつかあります。

エデュ:それは何でしょうか?

山口先生:3つあります。
まず、1つ目は「実物教育」と「自学自動」の理念です。
これは、できる限り実物を手に体験を通して五感を働かせるところから学び始め、受け身になるのではなく、自分から働きかけ疑問に思ったことを探求していく学びです。そのために本校では、理科教材園、実験・観察等環境の充実、校外学習の実施や各教科カリキュラムに至るまで教職員が心を込めて準備しています。
例えば2年生では、生活科の学習の中で「働く人」という単元があります。子どもたちが実際に働く人の所に行って見学し、学んだことを自分たちでもやってみるという、1年を通しての学習です。3学期は公的な仕事をしている人をテーマとして「豊明郵便局」を行っています。郵便局を見学し、ポストの働き、郵便番号の仕組みを学び、その後実践として2年生全員で郵便局を開きます。手紙を出す人は学校中の子どもたちで、クラスごとの郵便番号も決められています。ポストに入れられたものを集めて、消印を押して仕分けをし、宛先のクラスに届けていきます。

2つ目は「日記指導」です。
言語は概念形成の元となるものなので、聞く・話す・読む・書くそれぞれの活動を大切に行っております。その中心として「日記指導」があります。1・2年生では白画用紙とマス目の絵日記、3年生以上では罫線の日記帳を使用しますが、学校生活で感じたことやご家庭であったこと等を記述し、必ず担任が返事を書きます。文章表現力はもちろんですが、自分を見つめる力、状況を客観的に捉え自分との関係を見つめる力が育つようになります。また担任に自分を受け止めてもらえた嬉しさや安心感も培われます。

3つ目は「担任と専科の協力体制」です。
1年生では、担任が教えるのは国語、算数、生活科、道徳の4教科です。それ以外の音楽、体育、図工、英語、情報などは専科教員が教えています。学期の始めには低学年では8~9名。高学年では15名程で「学年団」というチームを作り、その学期の学習内容をお互いに情報交換します。算数でグラフを勉強したあとに理科でさらに深めて勉強したり、生活科の学習で、川で集めた石を今度は図工で工作するなど、教科の連携をとり学習効果を高めています。
また複数の目で子どもを見ているので、子どもの変化や得意なもの不得意なものに気づくこともできます。例えば、体育は得意だけど、図工が不得意な子は、体育館と図工室では全然違う表情を見せます。その教科を見ているだけでは分からない、児童の特徴を情報交換することで、一人ひとりに合った学習指導をすることができます。

教員と親御さんがマンツーマンで未来を相談

豊明小学校には通知表がない

日本女子大学附属豊明小学校2

エデュ:貴校に一歩入ったときから、何ともいえない“温かみ“のようなものを感じます。何か秘密があるのでしょうか?

山口先生:ありがとうございます。子どもたちが安心して学べる場となるよう、自然の光と風を大切にし、木のぬくもりを感じる校舎として、教員が10年間をかけて考えました。

エデュ:こだわりの校舎なのですね。ただ、それだけではないように思います。

山口先生:そうですね、2つお話します。

まず1つ目は子どもたち同士の「縦のつながりが強いこと」です。
本校では「仲良しグループ」と呼んでいる1年生から6年生までの6人の小さな縦割りグループがあります。朝の集会活動をしたり、水曜日に一斉清掃で共有スペースを清掃したり、秋にはこのグループで一日を過ごす「なかよしDAY」という行事があります。

また縦割りグループを使ったカリキュラムがいくつも組まれています。例えば生活科の授業では、1年生と2年生が一緒になって朝顔の種まきをします。2年生が先生役になり、種の埋める深さや水のあげ方を教えています。3年生と4年生は図工の授業でモニュメント作りを一緒にやりますが、4年生が先生役になり釘の打ち方を教えてあげたりします。本校は掲示物が非常に多く飾られています。子どもたちは自分の作品を見るより、「私に色々教えてくれたお姉様の作品はどこにあるんだろう」という目で見ます。お姉様のようになりたいという憧れが、成長の動機付けになります。また学校行事、例えば1月末に行われた音楽会では、1年生から6年生まで一緒に演奏するプログラムがあります。1年生は歌、6年生は伴奏というように学年ごとに役割があります。秋からずっと練習をしますが、終わった時の達成感や一体感は言葉では表せないものだと思います。

エデュ:2つ目は何でしょうか?

先ほどお話した「日記」による効果が大きいと思いますが、教員と子ども、そしてご家庭との距離が近いことです。
本校には通知表がありません。学期末に保護者の方と面談を行います。教員からは児童の学校での様子を、保護者からはご家庭の様子を話してもらいます。それを踏まえたうえで現状をしっかり把握し、次の学期にお互いが連携することを話し合います。良さや頑張りをご家庭に伝えることができ、ご家庭も安心して成長を支えることができています。縦割りグループでは子どもたち同士、日記や面談では子どもやご家庭と教員がつながっています。これを私たちは“豊明家族”と呼んでいます。

エデュ:実際に貴校を希望して入学するご家庭の特徴を教えてください。

山口先生:誠実さや堅実さを求めるご家庭が多いと感じています。実際にあった話ですが、あるご家庭のお父さまが、お仕事の場で日本女子大学卒業の方と一緒に仕事をして、その誠実さや堅実さを見て志望したという方がいらっしゃいました。本校は伝統を大切にしていますが、そこに魅力を感じ入学されるからこそ、ボランティアとして協力していただき、行事に積極的に参加していただけるご家庭が非常に多いと思っています。

学校で学んだことは自分だけのものではない

女子一貫校が見据える理想の人物像は?

日本女子大学附属豊明小学校3

エデュ:近年、女性の働き方も変わりつつありますが、何か初等科の教育で意識されていることはありますか?

山口先生:特別に意識していることはありません。というのは元々創立者の成瀬仁蔵は、明治という男女がはっきりと区別されていた時代に、女子であっても一人の人間として社会の中で貢献できる人を育てたいという思いを持ち、それは今でも受け継がれています。 女子だけですので、性別のフィルターはなく、自分はこういう人、私はこれができる、これが得意と、まずは自分のできることをしっかりやっていこうという気持ちが芽生えてきます。

エデュ:これからの社会で活躍できる女性像を教えてください。

山口先生:近年女性が活躍する場がますます広がっていますが、多様化の中で、自分が何をしたいのか、何ができるのかをちゃんととらえ、的確に周りと自分を照らし合わせることができる人です。そのためにはまず自分がどういう人間なのかを客観的に知る必要がありますが、その素地を培っているのが、先ほどお話しした日記指導や学校行事です。

エデュ:貴校を卒業した子どもたちに将来こうなってほしいという人物像はありますか?

山口先生:自己実現のために自分のやりたいことを貫きながらも、周りの人に感謝しつつ、相手の良さを認めてあげられる人、そして社会に出て役立つ人になって欲しいと思います。日本女子大学6代学長が「あなたが学んだことは、あなただけのものではなく、社会に貢献するためのものです。」と話されていたのですが、私もまさにその通りだと思っています。

日本女子大学附属豊明小学校データ

学校名 日本女子大学附属豊明小学校
URL: http://www.jwu.ac.jp/elm.html
男子・女子・共学 女子
所在地・アクセス 〒112-8681 東京都文京区目白台1丁目16-7
JR山手線「目白駅」よりバス約5分
教育方針 「一生懸命頑張る子」、「自分から進んで行動する子」、 「みんなと力をあわせ協力する子」の育成
制服の有無
給食の有無 有(週3日)、それ以外はお弁当

編集部から見たポイント

今回の取材を通し、社会に出た時のことを意識した学校が一丸となって、立派な女性を育てる伝統女子一貫校の持つ堅実さと、山口先生が話していた家族のような温かさを感じました。