音楽が支える学力とは?国立音楽大学附属小学校

inter-edu’s eye
第16回では、東京都国立市にある国立音楽大学附属小学校校長の星野安彦先生、副校長の佐藤伸保先生にインタビュー。音楽を通してどんな教育を行っているのかなどをうかがってきました。

主役でもあり学力を支える力でもある音楽

音楽が溢れる学校生活

国立音楽大学附属小学校1
左が副校長の佐藤伸保先生。右が校長の星野安彦先生。

エデュ:まず貴校の教育の特徴を教えてください。

星野先生:元々本校は、「音楽が支える学力の向上」を目標に音楽を中心に教育を行ってきました。ただ漠然と音楽が支える学力と言っても少々分かりづらいので、今までの教育を土台にもう一度検証。そして音楽がどういう風に学力の中で有効に使われているのか、どういう効果があるのかを研究していこうということで、今まさに動き出しています。

本校では学力を「海に浮かぶ氷山」に例えています。一番上はテストで良い成績をとった、何かの大会で受賞したなどの「見える学力」。その下に「見えにくい学力(思考力)」、「ほとんど見えない学力(関心、意欲)」、「まったく見えない学力(感性、経験)」がありますが、実は音楽や芸術が支えているのは一番下です。この部分をしっかり育成し、いろんな知識が入ってきたときに、その学力を活かせる人間になることを目指しています。小学校時代は見えない学力の一番の成長期なのです。

エデュ:教育の中で特色のあるカリキュラムを3つ教えてください。

佐藤先生:1つ目は「皆で音を合わせて創り出す音楽教育」です。
本校は音楽大学の附属小学校ですので、音楽の授業が多彩です。1年生からコーラス、リトミックがあり、その中にはリズム遊び、メロディ遊びが入っていたり様々です。音楽会では1200名入る大学の講堂で、1、2、6年生による合唱奏も行います。合唱奏とは6年生の合奏に合わせて、1、2年生が合唱することです。心が響き合い、感動を共有、表現する活動の一つです。5年生のリコーダーの授業ではそれぞれが音を創り出して、1つの曲にします。「皆で音楽を演奏するのは楽しい!」と思うだけでなく、自ら探求し、学ぶことで、達成感も感じられます。音楽は内なる原動力を育むものなのです。

2つ目は音の理解を大切にした英語教育です。
1年生から様々な英語の歌に触れ、英語独特の音を理解する。そうすると英語を英語としてとらえられるようになっていきます。歌を取り入れているのは楽しさだけでなく、歌うことで英語独特の音節感覚が身についていきます。

3つ目は逆ピラミッド型の造形教育です。
日本の教育は1つの答えを導き出すピラミッド型の教育を行いがちですが、本校では子ども一人ひとりが考えたものを自由に発想して創り出す造形教育を行っています。例えば、お香を嗅いで、その香りを自由に描いていく「香りがくれた贈り物」などがあります。

国立音楽大学附属小学校2
校内見学レポート
今回星野先生、佐藤先生に連れられほとんどの教室を見学させていただきました。その中でも最も印象に残っているのは、教室。高い天井、光が差し込む大きな窓、天然の木材で作られている机など何ともいえない温かみを感じました。教室だけでなく、見学の際にすれちがった先生全員が笑顔で挨拶をしてくれるのも印象に残りました。「本校に学校見学に来られる保護者様はみなさん、先生が優しそうですねとおっしゃってくれるのですよ」と話されていた星野先生のお話しにも納得しました。

進学実績の高さの秘密は?

音楽・芸術教育を通して身につく思考力や集中力

国立音楽大学附属小学校3

エデュ:貴校は音楽・芸術分野だけでなく、難関中学校への進学実績も高い。その秘密は何でしょうか?

佐藤先生:実は中学受験に対するサポートは基本的にはしていません。その中で結果を出している子どもは「思考力」が高いと感じています。音楽を通し、子どもたちは表現を楽しんだり、自分の考えを伝えたいという気持ちが出てきます。ご存知のように今の難関中学の入試問題は思考力が問われる問題が非常に多い。こういった学校に合格できる子どもの根底には、先ほど申し上げた「音楽が支える学力」、さらに根底に感性と経験があるから思考力が身につくのではないかと思っています。

あとは音楽、造形などの授業では集中力や作品を仕上げる継続力が身につきます。この点も秘密の一つだと考えています。

エデュ:貴校の教育を通し、子どもたちにどんな大人になってほしいのでしょうか?

星野先生:「自分で選択できる力」が備わっている人間になってほしいです。今の時代、生きていく意味とか社会における自分の存在意義を見つけるのは非常に難しいのではないかと思っています。でも人間は自分の存在意義を見つけていかなければいけませんし、それが生きるうえでのモチベーションにもなります。本校は音楽・芸術教育だけでなく、色々な興味の種を蒔いています。そこから色々なものを吸収し、自分のものにして、自分の活躍の場や活かし方を見つけていってほしいですね。

子どもたちが楽しい!と思える機会を増やしたい

音楽大学と提携した取り組み

国立音楽大学附属小学校4

エデュ:これから貴校を受験するご家庭へ向けて、身につけておいてほしい力は何でしょうか?

佐藤先生:4つあります。
1つ目は仲間と上手に関わり合いを持てる力。2つ目は1対1でしっかりやり取りができるコミュニケーション能力、これらは友だち、親御さんや近所の人たちと積極的に関わり合いを持って身につけてほしいと思っています。

3つ目は本校は体を動かす行事も多いので、バランス感覚や調整力を身につけてほしいですね。これは日頃からボール運動や、原っぱや公園でかけっこをすることで身についてきます。

4つ目は歌うこと、聴くことを楽しいと思う感覚です。歌うことで表現力が身につきますし、聴くことは耳で経験したことをかたどっていくことで、このかたどりが力になります。お風呂に入りながら親御さんと一緒に歌を歌ったり、一人で歌ったり。こういった経験が入学後の本校では必要になってきます。

エデュ:最後に今後行ってみたい取り組みを教えてください。

星野先生:国立音楽大学と提携した取り組みをもっとやっていきたいです。昨年度はバケツを楽器にして打楽器アンサンブル鑑賞会を開きました。最初は半信半疑だった子どもたちも見事に音が揃っていくと、びっくりしていました。そういう音楽の色々な部分を子どもたちに伝えて、楽しさから疑問を感じたり、やってみたいなと思って探究して、皆で表現し合って、響き合っていくような活動がもっともっと広がっていけばいいなと思っています。楽しいと思う機会を大事にしたいです。

国立音楽大学附属小学校データ

学校名 国立音楽大学附属小学校
URL: http://www.onsho.ed.jp/
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒186-0005 東京都国立市西1-15-12
JR中央線「国立」駅より徒歩約13分
教育理念 よく考え、進んで行動する子ども
思いやりのある、心の温かい子ども
元気よく遊べる子ども
制服の有無
給食の有無 無(昼食注文システムあり)

編集部から見たポイント

国立音楽大学附属小学校はまさに音楽が溢れる環境。音楽が得意な子はその力を伸ばせる、好きな子はもっともっと好きになる環境が整っていると感じました。音楽大学の付属小学校という強みを活かし展開されていく教育には今後注目していきたいところです。