公立小学校にはない私立小学校だけの魅力とは?

inter-edu’s eye
昨年4月から始まった本コンテンツも早1年半が経過し、今まで取材した私立小学校も16校になりました。そこで今回は取材を振り返りながら、公立小学校にはない私立小学校だけの魅力に迫ります。

私立小学校の特色ある教育

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公立小学校の場合、文部科学省の指導により学習カリキュラムがある程度定まっています。
一方私立小学校は、授業時間数の上限やいくつかの制限はあるものの公立小学校と比べると、学習カリキュラムの自由度が高くなっていて、どこに力を入れているかは各校ごとに異なります。まずは、編集部が見てきた私立小学校の特色ある教育内容をピックアップしてご紹介。

楽しみながら学べる英語教育

神奈川県藤沢市にある女子校、湘南白百合学園小学校では、できるだけたくさんの英語を使って楽しむために「English week」を昨年度から実施。期間中の朝礼では、司会やお祈りを英語で行ったり、聖歌を英語で歌ったり、クイズをします。クイズの後には、先生たちから英語の歌のプレゼント。先生たちが進んで英語を使う姿を見て、子どもたちは刺激を受けます。2018年度から週1時間だった英語の授業を2時間に増やし、担当する先生も2人から4人に増員。低学年のうちから「話す」・「聞く」に加え、「読む」・「書く」の指導に力を入れているのが特徴です。

東京都国立市にある共学校、国立音楽大学附属小学校では、音楽教育の強みを活かし、「音の理解」を大切にした英語教育が特徴的。1年生から英語の歌に触れ、英語独特の音を理解する授業を行っています。歌を取り入れることで楽しく学べるだけでなく、英語独特の音節感覚を身につけることができます。

2019年4月に東京都世田谷区に開校する共学校、東京農業大学稲花(とうか)小学校では、1クラスを2グループに分け、英語をネイティブとする外国人講師によるAll Englishの授業を、1年生から毎日行います。さらに外国人講師は休み時間や給食の時間、多様な体験もできるだけ子どもたちと一緒に行動。授業時間以外にも過ごすことで、コミュニケーションをする機会が増え、英語によるコミュニケーションの楽しさや喜びを感じ、新たな語彙の習得への意欲を高めることを目標にしています。

ご存知の方も多いと思いますが、2020年から公立小学校でも3年生から英語が必修化されます。そのため私立・国立小学校にはより質の高い英語教育が求められることが予想されています。ここでご紹介した以外の学校も今後やってみたいことに「英語教育の充実」と答えた学校が多く、今後の動きには注目していきたいところです。

国語に付随する「書く」教育

神奈川県横浜市にある共学校、精華小学校では、「書く」という領域を系統的に学習することに、1年生から力を入れているのが特徴です。例えば1年生では9月に動物園に行くのですが、動物を見て、どこを表現するのかの観点を決めて書きます。そして、5年生では春休みに4泊5日で関西旅行をし、記録文を書きます。その数は多い生徒でなんと400字詰めの原稿用紙100枚以上!

東京都国立市にある共学校、桐朋学園小学校では、6年間を通じ「日記」を書きます。書く力が身につくのはもちろんですが、担任と毎日やり取りをすることで、その子の考えていることや会話では知ることのできない内面を知ることができます。さらに学期に1回、各学年で10編ずつ集め、「青桐」という作文集も発行。それぞれ紡がれた文章に触れることで、学年を越えた理解につながります。

英語教育がクローズアップされがちですが、国語教育にも力を入れているのも私立小学校の特徴です。国語力は一朝一夕に身につくものではないので、1年生から指導を受けられるのは私立小学校の国語教育の強みといえます。

ICT機器を活用した授業

東京都中野区にある共学校、宝仙学園小学校では、昨年度末に完成した「My Lab.」というアクティブ・ラーニング専門の教室を利用した未来型の授業を展開しています。壁一面のホワイトボードでは子どもたちが自由に意見を書いて共有をしたり、画像を映し出したりすることが可能です。

東京都大田区にある共学校、文教大学付属小学校では、電子黒板を導入し、インターネットにつなげ動画を見せたり、理科の授業で実験の成功見本を見せたり、教科書を全部映し出して、大事な所に線を引いてもらうなどに活用しています。iPadは電子黒板同様インターネットにつながっているので、電子黒板に一人ひとりの考えを映し出して、考え方の比較をするなど、考えを深める授業を展開しています。

ICT機器はすでに導入している学校と、これから導入し活用していきたい学校に分かれました。そういった意味では発展途上といえますが、これからの子どもたちは使いこなすことが前提になってくる可能性もあるので、学校選びの際には、ICT機器をどのように使っているのかをチェックしておくといいかもしれません。

楽しい思い出が残せる体験学習・行事、校舎・設備

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6年間を過ごすことになる学校生活では勉強以外のイベントもたくさんあります。そして子どもが快適に過ごせるかどうかの校舎や設備も重要になってきます。

楽しさと厳しさを学ぶ体験学習・行事

東京都文京区にある女子校、日本女子大学附属豊明小学校では、生活科の学習の中で「働く人」という単元があります。ただ働く人の所に見学に行って、終わりではなく学んだことを実際にやってみて楽しさや厳しさを1年を通して学ぶのが特徴です。この体験学習は同校の教育理念にもある、「一生懸命頑張る子」「自分から進んで行動する子」「みんなと力をあわせ協力する子」の育成にもつながります。

東京都渋谷区にある女子校、東京女学館小学校では、「リーダーシップの教育」=インクルーシブ・リーダーシップ(強いリーダーシップを持った人が引っ張っていくのではなく、色々な人の力を引き出しながら大きな目標に歩んでいくような人)と銘打ち、学校行事を通し、「体験の中から学ぶ」ということを重視。活動の中で友達とぶつかったり、協力していく中で、互いの良さを認め合ったり、間違いを認め合ったりしながら大きな目標に近づいていくことを大切にしています。

東京都千代田区にある全国でも数校しかない男子校、暁星小学校では、2~6年生を対象に春と秋の2回。栃木県の那須で合宿が行われます。現地の小学生との交流、飯ごう炊飯が行われますが、その特徴はとにかく「歩くこと」。高学年になると20kmもの道のりを歩くので、心身ともに鍛えることができます。

机の上や学校ではないところで学んだことは子どもたちに強い印象を残し、その後の人格形成にも影響を与えます。ただ楽しいだけではない厳しさを学ぶ体験学習・行事がどのように行われているのかはしっかり見ておきたいところです。

保護者も通いたくなるほど印象に残る校舎・設備

東京都多摩市にある共学校、帝京大学小学校は、従来の小学校のようにコンクリートではなく、日本家屋のような屋根、明るい日差しが差し込む大きな窓、そして至るところに使われている木が落ち着いた雰囲気。星野校長が「保護者が見学に来ると、私も通いたい!」と言うんですよ、と話されていたのが納得の校舎でした。

埼玉県さいたま市にある共学校、さとえ学園小学校は、何と校内に800匹の魚が泳ぎ回る水族館を完備。水族館で魚の本来の色や形を知り、「体に何かついているぞ」などと発見することで、児童の興味を引き出します。その興味は魚だけにとどまらず、違うものへ派生していきます。水族館があるからといって、魚博士を育てるのではなく、「不思議だな」と疑問を持ち、疑問が解決した瞬間の気持ちよさを体感し、その経験を重ねることが目的です。

中学受験に強い私立小学校は何をしているの?

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私立小学校というと大学までの16年間を過ごすいわゆる「エスカレーター式」を思いうかべるかもしれませんが、中学受験をすることを前提としている小学校もあります。中には、難関中学校に多数の合格実績を出している小学校も。では一体こういう私立小学校はどんな教育をしているのかを見ていきましょう。

東京都国立市にある共学校、国立学園小学校では、4年生以上は全教科で専任の先生が独自の教材を活用して指導する「教科担任制」をとっています。そのため算数の授業では、時に1題を1時間かけて解くことも。知識の詰め込み型ではない、子どもの興味関心を引き出し、主体的に考えることを大切にし、子ども同士がともに考えをぶつけ合い、ともに学び合う授業を展開しているのが特徴です。

神奈川県川崎市にある共学校、洗足学園小学校では、6年生の1学期までに小学校の学習内容をすべて終わらせ、それ以降は復習や入試問題演習に時間を充てる「先取り学習」が進学実績の高さの秘密。ですが、それ以上に同じ中学校への合格を目指す仲間がいることが心の支えとなっています。

東京都武蔵野市にある共学校、聖徳学園小学校では、特別な時間を設けて受験指導をしているわけではありません。そのかわりにオセロや将棋、トランプ、カルタなどゲーム性を取り入れた授業を行い、「考える力」を育てています。ゲームは楽しいだけでなく、先を見通す力や発想の切り替えなど考える力を大いに刺激することができます。また複数人でやることで、相手の表情を読むことや、駆け引きをすることが必要になるので、コミュニケーション力や社会性も育ちます。

小学校受験を視野に入れるなら知っておきたいこと

最後になりますが、取材したほぼ全校が「ここ数年で共働きのご家庭が本当に増えて、学校側もサポート体制を考えないといけない」と話されていました。東京都港区にある女子校、聖心女子学院では、2016年4月に学童保育「ジョアニークラブ」を開設しました。宿題をしたり、違う学年と交流したり、働くご家庭をサポートしています。

このように「共働きだから小学校受験は厳しいのでは…」と思われるご家庭に対してのサポート体制も学校によってですが、整いつつあります。質の高い教育を展開する私立小学校にご興味があれば受験を視野に入れてみてはいかがでしょうか?

編集部から見たポイント

大学入試改革の影響などで、私立小学校も新しい教育カリキュラムや体制を考えている学校が多いと感じました。数年内には実施する学校もあるので、今後の動きには注目していきたいところです。