学校、保護者一丸で愛情を注ぎこんで育てる 自由学園初等部

inter-edu’s eye
第28回では東京都東久留米市にある自由学園初等部部長の佐藤有子先生にインタビュー。4歳から22歳まで受けることができる一貫教育。3万坪という広大な自然環境でどんな教育を行っているのかをうかがってきました。

よくみる よくきく よくする

初等部の教育理念のすべて

自由学園初等部1
自由学園初等部部長 佐藤有子先生。

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

佐藤先生:自由学園初等部は創立者が残した「よくみる よくきく よくする」を教育理念として日々の教育活動を行なっています。自然に恵まれた学園内で本物に触れる体験や自分から学ぶことの楽しさを知って学習を重ねること、友だちとのたくさんの経験を通して感じたり考えたりしたことを毎日の生活の中で実行しながら成長できるようにと私たちは願っています。

また、キリスト教を土台とした人間教育のなかで子どもたち一人ひとりを大切にしているのも教育の特徴です。

エデュ:特色のあるカリキュラムは何でしょうか?

佐藤先生:3つお話しします。
1つ目は4年生の総合と理科の時間で行っている「カイコを育てる」カリキュラムです。1人に5頭ずつ与え、その成長をずっと観察するのですが、毎日家に持ち帰りお世話をして学校に持ってくる。そして1か月育ててきたカイコから取った絹糸をしおりに編み込んだりします。生き物を愛でる気持ちはもちろんですが、人間は他の生き物の力を借りて生活を成り立たせているということを知ってほしいと考えています。

2つ目は総合の柱になっている「畑の勉強」です。1年生から6年生まで、3万坪の広大な土地を活かして学園内の畑に種を蒔き、毎日お世話して、経過を観察します。そして秋の収穫感謝祭では収穫感謝の讃美歌を歌い、どのように育てたのかの発表を聞き合います。お昼には保護者の方々のお力を借り、育てた野菜をたっぷり使った「芋の子汁」を食べる、そんなカリキュラムです。

3つ目は「探究学習」です。3・4年生の縦割りで「水」をテーマに、それぞれ興味を持ったもので10グループを作り、自分たちで問いを立て、調べて、発表するというものを行いました。まだ、始めたばかりなので、グループによって取り組みに差がありました。この学習は2学期も続くので、今後どう進化していくのかをとても楽しみにしています。

自然と子どもたちが作りだす最高の環境

成長を見守りやすい一貫教育

自由学園初等部2

エデュ:実際に通われている子どもたちに人気のある行事を教えてください。

佐藤先生:5月に行っている全校遠足はとくに人気が高いですね。初等部では1年生から6年生までが縦割りで班を作り同じところに行きます。実は、この班は毎日食堂に集まり1つのテーブルを囲んでお食事をしている子どもたちで組まれます。今年は昭和記念公園に行きました。当日は班ごとに計画を立てさせて自由行動をさせたんです。6年生は1年生の面倒を見ながらで大変だったと思いますが、班ごとに協力して思いきり遊んだ子どもたちの満足感は非常に高かったです。

エデュ:学校見学などで、ここを見てほしいというところはありますか?

佐藤先生:「環境」をぜひ見てほしいですね。広大な自然環境はもちろんですが、実際に通っている子どもたちが作り出す、環境も見てほしいと思っています。どういう表情で学校生活を送っているのか、話しかけた受け答えはどうなのか。遠慮せずに、ぜひ話しかけてみてください。

エデュ:ご家庭から見た貴校の強みを教えてください。

佐藤先生:1つ目は先ほどお話しした「環境」。そしてもう1つは「一貫教育」です。本学園では、下は幼児生活団から上は大学部、年齢でいうと4歳から22歳までの一貫教育を行っています。たとえば体操会というイベントでは初等部の親御さんは中等部の生徒の演技を見て、「わが子もこういう風に育っていくのか」と見通しをつけやすくなっています。

また、初等部と中等部の保護者が一緒に活動する機会があります。初等部の親御さんが子育ての悩みを中等部の親御さんに相談できる、そんな環境も強みだと思っています。

自由学園初等部3
学園内見学レポート
今回、佐藤先生に初等部の校舎を中心に学園内を案内していただきました。画像正面の校舎は食堂ですが、伝統的で非常に趣がある印象を受けました。手入れの行き届いた学園内にある樹木は一部を除き、子どもたち自身も手入れをするそうで、「出来ることは自分たちでする」。体験を大事にする「よくみる よくきく よくする」自由学園の教育理念を強く感じました。

人のために役立つ人になってほしい

初等部が描く子どもたちの理想像

自由学園初等部4

エデュ:私立小学校に入学されるご家庭も共働きが非常に増えていますが、何かサポートしていることや意識していることはありますか?

佐藤先生:2つあります。
1つ目は「アフタースクール」です。始めて10年ほど経ちますが、「学童保育」、「おけいこ」、「プログラム」の3つのメニューで学校と家庭をつなぎ、子どもたちが集まって、遊び、育ち合う居場所になっています。

2つ目は「お昼の食事作り」です。本校ではお昼の食事を保護者の方に作っていただいている伝統があります。これは給食制度がない時代に、創立者が成長盛りの子どもたちに冷たいお弁当ではなく、温かいごはんを出したいという思いから始まったものです。子どもたちにとっては保護者が作った食事を食べることはとても楽しみなことですし、畑で子どもたちが育てた野菜を全校で味わえるのもうれしいことです。作る側の負担にならないよう年6回、午前中だけの短い時間だけと拘束時間を減らし新しい工夫も加えながら続けていきたいと思っています。

エデュ:確かに保護者にとってはご負担ですが、子どもたちのことを考えると残していきたいですね。貴校の教育を通し、将来こういう大人になってほしい人物像はありますか?

佐藤先生:何より、その人らしい豊かな人生を送ってほしいですね。ただ、自分がやりたいことだけではなく、どこかで人のために役立つ人になってほしいという思いはあります。それは初等部の頃から人のためになる喜びを感じさせる教育を行っているので、伝わるのではないかと思っています。

エデュ:最後にこれから行ってみたい取り組みを教えてください。

佐藤先生:1つ目は先ほどお話しした「探究学習」をさらに発展させていきたいですね。 2つ目は「ICT教育」ですが、自然を使った体験学習とうまく結びつけられないか試行錯誤しているところです。

自由学園初等部データ

学校名 自由学園初等部
URL: https://www.jiyu.ac.jp/elementary/
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒203-8521 東京都東久留米市学園町1-8-15
西武池袋線「ひばりケ丘駅」下車南口より自由学園正門まで徒歩8分
制服の有無
給食の有無

編集部から見たポイント

探究学習のミニ発表会では平日にも関わらず30名程の保護者が参加したとのことで、子どもたちに対する愛情を感じました。残念ながら夏休み期間だったため、子どもたちには会えませんでしたが、自由学園ならではの学校の雰囲気を感じたいご家庭は足を運んでみてはいかがでしょうか。

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