子どもが主人公の学校とは?和光鶴川小学校

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第32回では東京都町田市にある和光鶴川小学校校長の加川博道先生にインタビュー。「子どもが主人公の学校」とはどんな学校なのでしょうか。学校生活を通し身につく力などをうかがってきました。

子どもたちの声で創られる学校

ランドセルをより使いやすいものに

和光鶴川小学校1
和光鶴川小学校校長 加川博道先生。

エデュ:まずは貴校の教育の特徴を教えてください。

加川先生:本校は1933年に成城小学校から分かれて創立されました。大正から昭和にかけての日本では、大正デモクラシーの時代的な背景を受け、自由で個性を尊重する私立学校が誕生していた時代でもあります。ここが本校の原点です。

この流れを受け、子ども自身の「主体性」を大事にしながら、質の高い「体験」を数多くすること、仲間と「共に」成長すること、学ぶ「楽しさ」を知ることを大切にしているのが教育の特徴です。親御さんと一緒に子どもを真ん中に据えて、「子どもが主人公の学校」をどう創るかに重点を置いています。

エデュ:「子どもが主人公の学校」。具体的に教えていただけますか?

加川先生:代表的なところでは、「児童会活動」が挙げられます。子どもたちが自分たちの代表を選んで行われるのですが、学校に対しての要望がたくさん出されます。例えば、近年では「ランドセルが小さいから変えてほしい」という声が出ました。そこからどんなデザインがいいのか、大きさはどのぐらいがいいのかを話し合い、完成しました。学校というとどうしても学校側が用意したもので日常を送りがちですが、本校ではこういった声を大事にしています。

エデュ:なるほど。貴校の学習カリキュラムの特徴を教えてください。

加川先生:本校は「教科教育」、「生活べんきょう・総合学習」、「行事・文化自治活動」の3つの領域を通して豊かな人格の形成と「考える力」を育むことを目指しているのが特徴です。

エデュ:そのなかで、特色のあるカリキュラムを3つ教えていただけますか?

加川先生:1つ目は「教科教育」でいえば、例えば算数です。学習主体である子どもたち自身が「勉強は楽しい」と思える授業作りをこころがけています。例えば、5年生で平行四辺形の面積の答えを求めるときに、普通は公式を教えると思います。でも本校ではあえて教えません。子どもたちが「こういうやり方なら答えを出せるかも」と考えさせて、それについてクラスで話し合わせる。教師が一方的に教えるのではなく、「子どもたちと作る授業」というのを合言葉にしています。

2つ目は「総合学習」の6年生で行われる沖縄学習です。沖縄の文化や歴史を学び、実際に学んだことを確かめるために4日間の学習旅行に行きます。戦争経験者の話を聞いたり、基地問題について考えたり、体験を通して学ぶのが特徴です。

3つ目は「生活べんきょう」の英語学習です。5年生ではフィリピンのレトラン小学校との交流を中心に、ビデオ通話による教室同士の交流やホームステイの受け入れ、ビデオレターや手紙の作成などを行っています。英語を学ぶと便利で世界が広がると感じてもらうのが目標です。

シンデレラの後日談を劇で演じる

脚本も子どもたちが創る

和光鶴川小学校2

エデュ:子どもたちに人気のある行事を教えてください。

加川先生:運動会、秋祭り、基本的にどの行事も人気がありますが、今の時期は2・4・6年生で行っている「劇」です。これも本校らしいと思うのですが、去年6年生はなかなか気にいった脚本が見つからずに、シンデレラの後日談を自分たちで創りました。内容は、シンデレラも継母になって、自分の子どもに「勉強しなさい」と、おそらく普段自分たちが言われていることを盛り込んでいましたが、子どもたちらしい内容で面白かったです。

エデュ:学校見学でここに注目してほしいところはどこでしょうか?

加川先生:授業で子どもたちが本音で話している「生き生きしている姿」に注目してほしいです。学校は子どもたちがドキドキ、ワクワクして楽しく学べる場所じゃないといけないと思っていますので、ぜひ見てほしいです。

エデュ:現在、共働きのご家庭が増えていますが、何かサポートとして行っていることはありますか?

加川先生:確かに本校でも約3分の1のご家庭が共働きです。こういったご家庭も安心して通えるように「学童保育」を用意しています。平日は夕方6時まで預かり、長期休みや代休の日も対応しています。特別なカリキュラムを組んでいるわけではありませんが、学年を越え、自由に遊んでいるのが特徴です。また、子どもたち同士のトラブルがあったときには、すぐにその子の担任に連絡が行くので、安心して利用してもらっています。

エデュ:受験前にとくに意識してほしいことはありますか?

加川先生:豊かな実体験を大切にしてほしいと思っています。土や生き物に触れ五感を通して、色々なことを感じる。こういった経験をしないと、小学校で学んでいくための人格の幹が育たない気がしています。

自己肯定感に根差した生きる力

道は自分たちで切り拓いていく

和光鶴川小学校3

エデュ:親御さんから見た貴校の強みとは何でしょうか?

加川先生:自己肯定感に根差した生きる力を育めることではないでしょうか。さきほど例に挙げた算数の話で、教師側が公式を教えてできるようになったのではなく、自分たちで考えてできたことで、「自分たちはできる。だったら次のことも挑戦してみよう」と思うようになります。また、「児童会活動」も自分たちが声を上げることで道が切り拓いていくんだという経験になります。こういったことを通して、自己肯定感に根差した生きる力を育んでいきます。実は先日、私も驚いたことがありました。

エデュ:何でしょうか?

加川先生:本校の卒業生でニューヨーク国連本部に採用が決まった子がいたんです。国内の大手企業を辞め、転職を決めたらしいのですが、「なぜそこを選んだの?」と聞いたら、「小学校で学んだ沖縄学習が根っこ」だと言うんです。学習旅行で沖縄に行って、戦争体験者の話を聞き、戦争は良くないと感じ、世界中の紛争地域に関心を持ち、大学院まで国際紛争問題を学んだのだと。彼のように、自分が決めた道を突き進んでいる子どもたちはたくさんいます。

エデュ:最後にこれから行ってみたい取り組みを教えてください。

加川先生:具体的な取り組みは決まっていませんが、引き続き「子どもが主人校の学校」をどうやって創っていくかに重点を置いていきたいと思っています。

エデュ:加川先生ありがとうございました。

和光鶴川小学校データ

学校名 和光鶴川小学校
URL: http://www.wako.ed.jp/e2/
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒195-0051 東京都町田市真光寺町1282-1
小田急線「鶴川駅」、京王相模原線「若葉台」駅よりバスで15~20分
制服の有無
給食の有無

編集部から見たポイント

校長室で取材をしていると、子どもたちが遊びにやってきました。加川先生との会話や振る舞いから、とてもフレンドリーな関係が築けているのだなと感じました。駅からは少々離れていますが、その分環境は抜群。興味を持たれたご家庭は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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