今、私立中高一貫校を選ぶ3つの理由(講演会レポート):エデュママリサーチ第33回

今、私立中高一貫校を選ぶ3つの理由(おおたさん講演レポート)2014年6月6日

今、私立中高一貫校を選ぶ3つの理由

5月18日の日曜日、東京国際フォーラム(東京・有楽町)で、東京の私立校175校が参加した『2014 東京私立中学合同相談会』が開催されました。大変な人気で会場全体が多くの家族連れでごった返す中、その一角にしつらえられたセミナー会場で、おなじみ教育ジャーナリストのおおたとしまささんの講演が行われました。

題して『今、私立中高一貫校を選ぶ3つの理由』。約50分間のセミナーは、中学受験を考えている親御さんにはヒントになることばかり。座って聞いている人はメモをとるのに忙しく、立ち見の人も真剣そのもの。その中から、題名ズバリ! おおたさんが進学先として私立中高一貫校をおすすめする3つの理由をレポートします。

◆本当の「ゆとり教育」は私立校にある!

まず、おおたさんは、私立中高一貫校を選ぶ理由の第一は、「真のゆとり教育」が実現できているところにあると指摘します。高校受験がないのでテストの点数や内申書を気にせずに、しっかりと学力の土台作りができるというのです。

「難関大学への進学率が高い学校に中高一貫校が多いのは、先取り学習ができることより、6年間でしっかり本当の学力を身につけて、余力を残して大学入試にのぞんでいるからなのです。付け焼き刃ではない学力が身に付きます。だから大学に入ってからも、さらに成長していくことができます」とおおたさん。

中学・高校時代は、子どもが親から離れて人格形成し自立していくときであり、社会を自分の目で見て体験していくときでもあります。こういう時期だからこそ、テストの点や内申に気を煩わされることなくゆとりをもって過ごせることはとても大事です。

加えて6年間同じ学校で過ごすことで、反抗期まっさかりの中学生だけでなく、反抗期を卒業して先生と大人の会話ができる高校生の先輩を身近に見ることができるのも、中学生にはとてもよい手本になると言います。

◆「リーダーシップ教育」が実現している

第二の理由は、「共同体意識」を持つことができるようになるということ。おおたさんの言う「共同体意識」とは、全体=社会の中で自分を位置づける意識のこと。成熟した大人とは、社会と自分の関係性を構築できる人のこと。それが私立中高一貫校とどう関係しているのかといえば、まず自分で選んで入った学校だからこそ、その学校への帰属意識が生まれる。そしてその帰属意識が仲間である同級生や先輩へのリスペクトにつながり、互いの違いを尊重するよりよき関係性の形成につながっていくということです。

「エリートに求められるリーダーシップ教育に、もっとも必要なのが共同体意識です。みんなのことを考えて、どうしたらいいかを考えていく能力を育むのに、帰属意識が持てる学校にいることはとても貴重です。そこでの小さな共同体体験からリーダーシップ教育が始まっていきます。しかも力が拮抗している仲間が多いので、ときにはリーダー、ときにはフォロワー・サポーターとどちらも体験できます。共同体意識を持つことが困難な今の時代に、これはとても大きなメリットだと思います」(おおたさん)

◆建学の精神が「ブレない教育」を守っている

そして第三の理由は、私立中高一貫校では「ブレない教育」が受けられるということ。私立は公立と違ってつぶれる危険があります。つぶれていない私立には必ず建学の精神があります。学校のDNAのようなものです。

「生徒は数年で入れ替わりますが、建学の精神は変わりません。その学校の伝統であり、軸みたいなものです。公教育は教育改革がカラ回りした影響を受けて伝統や個性を失うなどしてきましたが、私立には建学の精神という軸があるため、時代の変化に合わせてさまざまな枝葉を伸ばしていくことができました。らしさを失わずに変化にあわせて生き延びてきたのが私立中高一貫校なのです」(おおたさん)

おおたさんは「不易と流行」という言葉でそれを表現。いつまでも変化しない本質を忘れずに、変化し続けているものを取り入れていくという意味です。「どんな世の中になっても幸せになれる力」は、こういう教育の場で育まれるものと明解に語ってくれました。

講演の最後は、悩める親御さんへのアドバイスの言葉で締めくくられました。「皆さん、どれがベストチョイスかわからないと悩んでおられますが、ベストチョイスかどうかは、決断した後の努力にかかっていると私は思います。自分たちがした決断が最善の結果をもたらすよう、いったん決断したら親子で最善の努力をしてください!」

おおたとしまささん

著者のおおたとしまささん
育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー、インターエデュ『おおたとしまさの中学受験心すっきり相談室』を連載中。育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー、近著は、『間違いだらけの中学受験』『進学塾という選択』(日経プレミアシリーズ)学校研究シリーズ・中学受験 注目校の素顔『麻布中学校・高等学校』『開成中学校・高等学校』『武蔵高等学校中学校』『灘中学校・高等学校』、小説『もし中学受験で心が折れそうになったら』。そのほか『中学受験という選択 (日経プレミアシリーズ) 』『男子校という選択(同)』『女子校という選択(同)』など多数。著書一覧