中受生の「やる気」を損なっているのは、実はママ? エデュママリサーチ第44回

中学受験生に、親の基本は“手をかけるな、目をかけよ”2014年11月21日

『どならない子育て』伊藤徳馬著 中受生の「やる気」を損なっているのは、実はママ?

先週のエデュママアンケートで、エデュママの「教育に関する悩み」のナンバーワンが「子どものやる気」だったことをご報告しました。この結果を知った時、エデュのスタッフは、以前取材した進学塾のある先生の言葉を思い出しました。

「お母さんたちは、子どもが勉強する気がない、やる気がないと嘆くんだけれど、実際やる気をなくさせているのは、だいたいがお母さんなんですよね。もちろん親はそんなつもりはない、でも結果的にそうなっている……」

この先生が、ため息まじりにお話しくださったことを要約すると、こうなります。

①進学塾に通っている時点で、ほとんどの子どもは受験する気も、そのために勉強する気もある。
②でも母親からテストの点が悪い、勉強しなさいと叱られ怒鳴られることが続いてうんざりしてくる。
③受験をやめれば叱られないですむと思って勉強しなくなる子が出現。そこまでいかなくても、自分はダメだと落ち込んだり、うんざりして気持ちが落ち込んだり、反発を感じて勉強をする気がなくなる、あるいは勉強しているふりをするようになる。

とまあ、しごく単純なプロセス。では、なぜその対象がお母さまなのかといえば、子どもにとって最も身近な存在だから。もちろんお父さまの場合もあるとのこと。

◆親の口の出し過ぎが、やる気を失わさせている…

そこで、このお話を、別の進学塾や個人指導塾の先生方にも、「どう思われますか?」と聞いてみたところ、どの塾の先生のご意見も「親の口の出し過ぎが、子どものやる気を失わさせる」という点では大同小異。なんだかとても皮肉な現実です。先生方のお話をいくつか紹介します。

・誰でも、いちいち文句を言われるとうんざりしますよね。文句って後ろ向きでしょ。同じ言うのでも、“こうしたら点がもっと上がるね”という前向きな言い方ならいいんですよ。塾の講師は、長年の経験でそういう言い方を身につけているし、もともとが他人ですから、親ほど遠慮なくは言えませんし。
・“うちの子は○○に受からなければならない”と思いこんでいる親御さん。手間を惜しまず導こうとする努力は立派なのですが、目の前のお子さまを見ずに、理想にあてはめようとしている感じで、ご相談を受けても、なんとお応えしたらいいのか悩みます。
・子どもと自分の境がないという感じの方。テストの点もご自分がとった点のような感じて、叱っているのも、たぶん自分自身を叱咤激励している感じなのでしょう。でも子どもは傷つきます。そういうときは、ママも大変なのだからと慰めたりしますね。
・私どもは授業料をいただいている手前、保護者の方に“あなたの接し方が悪い”などと直接的には言えませんので、オブラートに包んだ形で申し上げる。でも、そういう親御さんには、こちらの意図は通じていないことが多いようですね。
・熱心なお父さんの中には、“俺の子ができないはずはない”という方もおられます。確かにそうかもしれません。ですが、できるようになる前に叱ったり怒鳴ったりが続くと、できるものもできなくなります。ただ、他人が何を言っても無理な気もします。

ある経験豊富な先生は、こうもおっしゃいました。 「子育ては、“手をかけるな、目をかけよ”と言いますが、その通りですね。子どもの様子を見て、その状態を承知していることはとても大事です。方向が間違っていると思ったら、いい方向に誘導することも必要だと思います。でも、そのことは手をかけることとは違います。ご自分が過干渉気味だと思われたら、この言葉を思い出すといいと思いますよ」

◆親も、中受生への対処法・言葉かけを練習してみよう!

“うちも口の出し過ぎよね”というエデュママは多いことでしょう。そして、わかっているけどやってしまうのよ、という方がほとんどかも。そこで、いろいろ調べているうちに、ちょっと面白い本を見つけたのでご紹介します。タイトルが『どならない子育て』という本です。帯に“つい子どもにキレて自己嫌悪……そんな私にサヨナラ!”とあり、これは、中受ママにもあてはまるのでは?と思って読んでみました。

この本には、子どもをどならないですませる「しつけの方法」が、きわめて具体的に記されています。中学受験生より下の子どもを持つ親御さん向けですが、中受世代にも役に立ちそうです。

最初に「練習しましょう」とあります。どならない対処法(言葉のかけ方など)を学んで練習しましょう、ということです。そしてどならないですむ接し方や言葉かけを知れば、親自身の心の負担が減るし、子どももいい方向に向かうと書いてあります。100%どなるのをやめるのではなく、どなる回数を少しでも減らしていけばいいのだとも書いてありました。

どならないコミュニケーションのコツは、「行動を具体的に表現する」「肯定的表現を使う」「共感的表現を使う」「環境を整える」の4つ。中には幼児向け限定のアドバイスもありますが、中学受験生向けに言い換えることは可能です。

たとえば、「勉強しなさい」ではなくて「今日は○○と○○をやる予定だよね」。「これじゃ合格できない!」ではなくて「あと○○すれば合格できるね」といった具合。エデュママの皆さんは、すでにご存じのことでしょう。ただ、ぶっつけ本番ではなかなかうまくいかない。そこでまず一人で練習してみるといいですよ、というわけです。

詳細は本書を読んでいただくとして、この「練習しましょう」だけでも取り入れてみてはいかがでしょうか? 受験生であるお子さまも、毎日一生懸命練習しています。お母さまも、お子さまへの対処法をご自身で練習=イメージトレーニングをしてみると、ついしてしまう口出しが減っていくのではないでしょうか?

“手をかけるな、目をかけよ”とともに、厳しい受験生活を送っているファミリーの悩みを減らす小さなきっかけになれば幸いです。