中学受験、算数の図形問題に込められた思い

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中学受験の算数に苦戦しているお子さまは多く、特に図形問題が苦手という声をよく聞きます。そこで、森上教育研究所主催のシンポジウム「中学入試と算数<駒場東邦×森上教育研究所>」に参加し、図形問題への取り組み方のヒントを探ってきました。

図形問題、ずばり!出題の意図は?

今回のシンポジウムは、理数教育に力を入れている駒場東邦中学校・高等学校(以下、駒場東邦)の数学科主任、佐藤武芳先生と、難関中学を目指す受験生への算数指導で名を馳せている望月俊昭先生との対論とあって、会場には熱心な親御さんが大勢集まりました。

駒場東邦の算数入試問題は大変特徴的で、図形問題が全体の約50%を占めています。その出題の意図や、図形問題への取り組み方など、受験生の親御さんが知りたい内容を踏まえ、望月先生から佐藤先生への質問という形で対論は進みました。

算数入試

望月先生:中学受験の算数入試で、図形の出題率は、問題全体の1/3程度が普通です。東大に10人前後入る学校の中には、図形をほとんど出さない学校もあります。そんな中、駒場東邦は、60分の入試で大問が4題、1題につき15分~20分考え抜かないと解けないという問題なのですが、図形分野からの出題が5割を超えている年もあります。しかも、ほとんどが自分で図を描いて解く、つまり、作図が前提の問題形式になっています。図形重視の入試と言ってもよいと思うのですが、図形問題を重視されている意図はどのあたりにあるのでしょうか。

佐藤先生:駒場東邦の算数入試の問題は、パターン化されたものをそのまま適応して解けるという問題よりは、手を動かして試行錯誤する問題を数多く出しています。試行錯誤する問題の一つとして図形問題を出しているのです。図形問題は、数式の問題では問えない力を問えます。自分の中でイメージしたものを実際に図に描いて、計算して面積や線の長さを答える必要があるからです。

例えば、立方体から図形を切り取って図示してください、という問題があります。頭の中でイメージしないと切り口のところにどんな図形が出てくるのかが分かりません。イメージする力を図形問題では注視しています。想像する力、図形的感覚を養うために、図形を出題しているのが本校の特徴です。

望月先生:図形の出題というのは、私自身、東大の入試と切り離せないと思っています。高校数学になるとほとんどが数式中心になって、図形も数式的に解きます。ところが、東大が唯一といっていいかもしれませんが、初等幾何的な図形の内容を含んだ問題が入試にあります。御校の算数入試が、東大を意識しているわけではないと思いますが、長い目で見て、図形に取り組んでほしいという意識の表れではと思っています。その点いかがでしょうか?

佐藤先生:東大や難関大学を目指す生徒も多いので、東大の入試は無視できないところではありますが、中学入試で大学入試を意識している、というわけでもないです。
図形的感覚は中高で学んでいくときに大事になってきます。例えば中学校で習う三角形の合同の証明では、ここの角度が等しい、ここの線が等しいということを答案に書いていきますが、そのためには、そういうことを見抜く図形的な感覚が必要となってくるからです。

それと、図形的感覚は将来職業についたときに活きてくるのかなと思っています。例えば、医学系だと、内臓がどんな形になっているのか思い描くことも必要でしょうし、工学系だと、立体を図面に起こしたりもします。

望月先生:そうですね、図形的感覚はとても大事だと思います。しかし図形的感覚は、自分の生徒たちを見ても感じるのですが、個人差があります。それでも、自分で図を描き、自分の図を使って解ける受験生に来てほしいと駒場東邦の先生方は考えている、ということでしょうか。

佐藤先生:そうですね。できれば、そういう受験生に入学してほしいと思っています。

受験生セミナー
シンポジウムは親子企画でもあり、対論が行われている間、お子さまたちは別室で、立体図形への理解を深めるセミナーに参加しました。
受験生セミナー正多面体
1枚の紙を折って正四面体や正八面体を作ることにチャレンジし、それをもとに問題を解いていきます。駒場東邦の先生の指導を受けながら熱心に取り組んでいました。

図形問題、作図はどんなことを意識する?

望月先生:作図問題の対策ですが、中学入試でコンパスや定規を使ってよい学校と、フリーハンドで作図をする学校があります。コンパスを使ってよい学校を受ける場合、子どもがコンパスを使う機会は塾ではなかなかありませんので、慣れさせる必要があります。
私の塾では、低学年からコンパスとフリーハンドの両方の作図に時間をかけているのですが、定規やコンパスでの作図は頭を使わない、作業としてできてしまう側面もあるため、フリーハンドで図をイメージしながら描かせることを重要視しています。フリーハンドで図を描くことについてはどうお考えですか?

佐藤先生:コンパスでもフリーハンドでも、頭の中のイメージをどう紙の上に実現できるか、実現したものが正しい図だという判別ができているかが大事です。フリーハンドで描こうとすると、ほんとにこれで正しいのかなと、確かに考える余裕ができると思います。

望月先生:その余裕なんですけど、大げさにいうと、その間に思考が働いているんだと思うんです。定規を置いて線を引くときはたいていは脳がストップしていて、正しくない線が平気で引けるのですが、フリーハンドの場合は、この方向に向かわないと平行にならないというように、図形全体を頭にイメージしないと描けないので、正しい図を描くよい訓練になると思っています。
作図問題は、描きなさいという指示に対して採点されるものなので、図の一部が間違っていた結果正しい答えに至らなかったとしても、絶対部分点があるから心して一本一本引けと生徒には伝えていますが、部分点についてはいかがでしょうか?

佐藤先生:本校の入試問題では、答えの出し方を書かせる問題があります。そこでは、答えが間違っていたとしても、どういう風に考えて答えに至ったのか、その過程においてどこまでができているのかを見ています。作図についても答えの出し方と同様と考えていますので、部分点は考えています。

算数は自分で計算して答えを出せればよい、どちらかというと技術的なところが多いと思います。一方、数学というのは、どうしてその答えに至ったかという道筋や論理を大切にします。数学は学問なので、客観的に正しいことが言えなければ絶対的な真理にはならないわけです。本校の数学の授業においても、結論に至る過程がしっかり書けているかを注視しています。答えの出し方を書かせるのもそのためです。

そういった教育方針もあるので、算数入試に関しては、採点する側として、どんなことを言っているかを一所懸命読み取ろうとしています。それでもどうしても分からない、これは全然違うよという場合もありますから、まずは答案としてしっかり書いてもらった方がいいと思います。

保護者の目で見て理解できない答案だと、書き方としてはまずいのかなという指針になると思います。図や文字が判別できて、何を伝えたいのかを理解できれば答案としてマル、という感覚でいたほうがいいと思います。

編集者から見たポイント

佐藤先生と望月先生との対論では、算数入試を通して、どんな力を持った生徒に来てもらいたいか、入学後はどんな風に学んでいってほしいか、その思いを知ることができました。入試問題には、このように学校側の思いが込められています。これから中学受験を目指すご家庭は、ぜひ志望校の入試問題を深く研究してみてください。主催の森上教育研究所「データで分かる!最新中学受験情報」はこちら⇒