中学受験は「感情コントロール」で変わる? 受験への新しい挑み方

inter-edu’s eye
中学受験で成績が振るわなかったり、やる気を感じられなかったりするわが子に対して、つい「勉強しないと受からないよ!!」ときつい言葉を浴びせてしまう。それが逆効果であるとわかっていても、イライラした感情を押さえられない……。こういった悩みを抱える方は多いようです。
そんな親御さんに寄り添い、明るく元気に前を向いて中学受験を乗り越えてほしいという思いで開催されたのが、「21世紀型中学受験『感情のコントロールと学力の法則』セミナー」です。親の感情と子どもの学力がどう関係するのかも気になり、第1回のセミナーに参加してきました。

入試まで残り2か月で集団塾をやめた!? 大胆な改革からの第一志望合格

大柳美紗先生
中学受験メンタルトレーニング協会代表 大柳美紗先生
銀座コーチングスクール青山校・渋谷校 講師、認定プロコーチ/国際コーチ連盟認定コーチ(ACC)/SBT2級メンタルトレーナー/認定ママカフェファシリテーター

セミナーは、中学受験メンタルトレーニング協会代表である大柳美紗先生の話から始まりました。大柳先生が経験した長女の中学受験エピソードに参加者は耳を傾けます。

「自分が大学受験で失敗した経験から、子どもには失敗させたくない、もっとやろうよ、もっと頑張ろうよという気持ちが強くありました。」と大柳先生。

大柳先生がプレッシャーをかけ続けた結果、娘さんは笑わなくなり、成績も一向にのびていきませんでした。「どうせ」、「無理だし」、「自信ない」、「私なんて」とネガティブワード連発するようになった娘さん。しだいに親子の信頼関係も崩れていきます。それが、受験を間近に控えた6年生の春のことでした。

でも、絶対に受験を諦めたくなかった大柳先生は、コーチングとメンタルトレーニングを取り入れます。そして娘さんの笑顔を取り戻し、楽しく中学受験をしようと決められました。大柳先生は、「他人と比較する」という思考の癖があったため、友だちや周りの人と比較して落ち込んでしまい、娘さんを責めてしまう、そうして娘さんのメンタルはまた下がるという悪循環でした。それを断ち切るために、思い切って集団塾をやめて個人指導に変え、勉強のやり方も変えたのです。

子どもを責めるほど、子どもの成績は伸びないことに気づき、自分の感情をコントロールすること、そのために、「自分で自分のご機嫌をとる」こと、子どもや自分を比較しないように、ママ友とのLINEを断つ、子どもの集中力があがる学習環境を整える、楽しいと思える中学受験勉強にするために、学習漫画を多く取り入れること、コーチングの考え方を取り入れ、未来、どうなりたいのか、ワクワク感情を引き出すことなど大胆な改革を断行、その結果、子どもの笑顔と信頼関係を取り戻し、大逆転で娘さんは見事第一志望校に合格しました。

ではなぜ、前向きな気持ちで受験に臨めるように、自らの行動とお子さんの行動を変えることができたのでしょうか。

「子どもは、『今勉強しないと、後で困ることになるよ』と言ってもわからない。その場その場の感情で行動をする。(子ども 感情=行動)一方大人は、今やらないと後で困ることを知っているから嫌でもできる。(大人 感情<理性=行動)」と大柳先生。

大柳先生の場合は、絶対に受験を諦めたくないという強い想い、覚悟がありコーチングのアプローチとメンタルトレーニング(感情のコントロール)を実践したからでした。
子どもの行動を理解した上で、娘さんが勉強に対してワクワクする楽しい感情が持てるように、大柳先生は声かけや勉強のやり方を変えるなど“理性的な行動”をとったのです。

こうして子どもと親の「感情」が「行動」を変え、その結果、学力向上につながるということをまさに身をもって経験した大柳先生。お話を聞いて、「感情のコントロールと学力の法則」とは何かをつかめた気がしました。

    

親のプラス思考と子どもの自己肯定感が学力に影響

続いての講演者は、20歳で学習塾を創業し、35歳で私立中高の常任理事をご経験、現在は教育デザインラボの代表理事を務め、都留文科大学国際教育学科の特任教授という肩書をお持ちのまさに教育のスペシャリスト、石田勝紀先生です。近年はお母さま方の子育て・教育のお悩みを聞きアドバイスをする「MamaCafe」を開催し、毎回満席で大変好評のようです。石田先生は、「感情のコントロールと子どもの学力の関係」を具体的にわかりやすくお話しされました。

中学受験で親が子どもに対して持つ感情「イライラ」。子どもが自分の思い通りに行動してくれないと思うことで発生する感情ですが、それを感じないようにするのは「実は簡単」と石田先生は言います。
「勉強をしない、片づけをしない子どもに対してイライラしていたのが、もし宝くじが当たって通帳に1億円入っているってことになると、イライラしなくなりますよね。」 とたとえる石田先生。つまり、「自分がワクワク楽しい気分で満たされていると、相手のマイナス面が気にならなくなる」という法則があるということです。

石田先生の話はこう続きます。
「どうやって中学受験の今の悩みを解決しようか……?と思ったら、なかなかできない。解決しようとせずにどうやったら楽しめるか、厳しい状況を楽しめるのか、楽しみ方を探し出す。その場その場でやっていることを楽しむようにすると、状況は変わってきます。」

「常にプラスの感情を持ち、状況を楽しむためには、自分の気持ちが満たされることを意識的に行うことが大切なんです。たとえば好きな映画や音楽、おいしい食事をあえて生活に取り入れる。『ワクワク』というと子どもっぽい軽い感じがしますが、大事なんです。」と石田先生。

確かに、気持ちが満たされていれば、プラス思考になりやすそうですし、どんな状況でも「楽しもう」という行動をとれそうですね。

では、これらのことが子どもの学力にどう結びつくのでしょうか。

「親が子どもの長所を認めて伸ばしてあげると、子どもの気持ちが満たされます。すると自分で勝手に不得手なことにもチャレンジします。」と石田先生は言います。これは今さかんに言われている「自己肯定感」です。自己肯定感が高くなれば、子どもは目標に対し果敢に挑めるようになり、その気持ちが学力にも影響するのは周知の事実です。

親の心が満たされると、子どもの短所が気にならなくなる。すると長所に目を向けやすくなる。長所を認めてあげれば、子どもの気持ちも満たされ、自己肯定感が高くなる。それが学力に結びつくというサイクルも見えてきました。

    

今の状況を変えたいなら目先を変えてみよう!

しかし、今中学受験でつらい状況にいる方には、「楽しもう」などと考える気持ちの余裕など、とてもない状態なのかもしれません。ですが、だとしたらなおさら、今と同じことをやっていても変わりません。ほんの少しでも行動を変えることに挑戦してみましょう。大柳先生、石田先生からのアドバイスにもあったように、「自分の気持ちを満たしてくれるもの」を意識的に取り入れて、まずは親御さんが心地よさを感じる。それだけでも何かが変わってくるはずです。

「子どもが歯を食いしばって頑張っているのに、自分だけ心地よくなろうだなんて…」そんな遠慮や罪悪感は少し横に置いておきましょう。親御さんの感情がプラスになれば、お子さまへもプラスの効果があるのですから、「自分だけ」ではないのです。

中学受験はここ数年でかなり変化してきています。受験に関する情報量も増え、さまざまな取り組み方・考え方を目にするようになりました。そんな中で参加した本セミナー。コーチングやメンタルトレーニングの視点から中学受験に取り組むのは“21世紀型中学受験”の一つの姿なのかもしれません。目先を変えてみるためにも、このようなセミナーに参加してみてはいかがでしょうか。

【第2回】21世紀型中学受験スペシャルセミナー ママと子どもの「感情のコントロールと学力の法則」

【日時】6月7日(金)10:00~13:30
【内容】
・コーチングを使った実践的感情のコントロール法
・中学受験第一線の親子事例
・家庭でのメンタルケアの方法
【講師】
末国愛里先生(Will-Coach Labo ㈱代表取締役、銀座コーチングスクール青山・渋谷・岡山・広島校代表、エグゼクティブコーチ)
安浪京子先生(算数教育家、中学受験カウンセラー、㈱アートオブエデュケーション代表取締役)

【公式サイト】https://peraichi.com/landing_pages/view/selfcontrol

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