【後編】「中学受験 志望校の選び方・併願校の決め方」講演会レポート

inter-edu’s eye
中学受験を目指す家庭にとって学校選びは一大事! 偏差値、校風、宗教、部活動、進学実績、共学、別学と学校選びの視点はいくつもあるし、そもそもどんな基準で選んだらいいのだろう…。「わが子が人生でもっとも成長する時期を過ごす場所だから」と思えば思うほど、迷ったり悩んだりしてしまいます。

そこで今回、受験生の親御さんのお悩みに応えるべく、エデュナビでは「志望校・併願校の選び方」「男の子と女の子、それぞれの受験との向き合い方」をテーマに、9月28日、東京・代々木にて特別講演会を開催しました。講師は3月に開催し大変好評だった講演会、「中学受験 親の関わり方」に登壇された教育ジャーナリストのおおたとしまささん。そして、エデュ主催の講演会では初登壇となる中学受験専門カウンセラーの安浪京子さんです。数年前に中学受験を経験し、都内の私立共学中高一貫校に通う娘をもつエデュママライターが講演会の模様を前後編にてお届けします。

第二部:安浪京子さんの講演「中学受験での親の関わり方」

絶対に不幸になる中学受験とは

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プロ家庭教師歴約20年。2011年、中学受験算数を専門としたプロ家庭教師集団プレスティージュパートナー(株式会社アートオブエデュケーションの前身)を設立。きめ細かい指導とメンタルフォローをモットーに毎年多数の合格者を輩出している。

「中学受験は甘くはないです。これは最初にはっきり言っておきます」という、保護者全員の目が覚めるような言葉から、安浪さんの講演がスタート。「よりよい中学受験にするために、親はどんなことができるのか」というテーマで語っていただきました。

まず、興味深いのが「絶対に不幸になる中学受験」のお話。受験の過酷さを知らず、目的も不明確なままホイホイ参戦した結果、壁にぶち当たる。すると、子どもも親も自信喪失し、すべてが負の連鎖になっていく…という“笑えない”お話です。「受験の目的」は、「医者にしたい」とか「東大に行かせたい」ではなく、「社会に出たときに、どういう大人になってほしいか」「どんなふうに生きていってほしいか」だと、言葉に力をこめる安浪さん。
「いいですか、これから長い人生を生きるのは本人なんですよ。いい学校に入れたい、御三家がいい、英語の4技能を身につけさせたい、じゃなく、20年後、30年後を考え、目的をちゃんと持ってください」。
安浪さんの言葉は、「受験のレールに乗せたらひとまず安心」と考えがちな保護者の甘い心に鋭く刺さり、本質を投げかけます。そう、どの学校に行ったからどうなるという正解はないのです。教育はその子の可能性を広げるための選択肢ではあるけれど、実際に道を切り拓くのは本人なのだから。

踊らされない、潰さない! 中学受験の取り組み方

安浪さんからは、受験塾とのつきあい方のアドバイスもありました。お話に出てきた「塾は企業。だから生徒を囲い込みする」「塾の言うことを鵜呑みにしない」といった、塾との距離感や関わり方については、大いに考えさせられました。なぜなら、かつて塾に踊らされ、一喜一憂していた経験者なので。わが家は、安浪さんのおっしゃる「子どもを潰さないために、親がジャッジする」ということができていなかったのです。もちろん、子どものタイプによっては、塾のいうことにすべて取り組み、じゃんじゃん結果を出していくという方法もOKです。どのやり方を選ぶかは、各家庭でジャッジする必要がある、と安浪さんは話していました。

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中学受験への取り組み方を明確にする」3つのパターンのうち、わが家はどれに当てはまるのかをはっきりさせておくとよいそう。

また、「詰め込んだものが結果として出てくるのは3か月以上経ってから。だから、目先のテストの結果にイ~ッとなるのでなく、まず、親子でがんばったことを認め合うこと」と安浪さん。この言葉には何度もうなずきました。

こうも言います。「今がんばっていることは、子どもを潰しさえしなければ、カラダの中にちゃんと結果として残ります。そして、そのために親ができることは、何もかも先回りしてやってあげることでなく、『子どもの勉強に対する主体性を少しずつ育むこと』」。

偏差値だけで選ばない!子どもに合った学校選びのポイント

ここからは、安浪さんが考える学校の選び方について。まずは、「偏差値だけで選ばず、その子に合ったカラーの学校を選ぶこと」。そのために、「学校に足を運び、子ども自身が在校生に話を聞くこと」。中高一貫校なら、高校生に話を聞くのがおすすめだそう。学校巡りをするときに、高校生にどんな質問をするか、事前に決めておくのがポイント。「その学校が自分に合うかどうか、質問をすることで、人間性や学校の気質が見抜けます」と安浪さん。

「10年や20年経って、子どもが大人になった時に、やって良かった、あの時があるから今があると思えるような受験にしてほしい」というメッセージに、参加している保護者のみなさんも大きくうなずいていました。

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第三部:おおたさん、安浪さんのトークセッション「男の子女の子、それぞれの中学受験」

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第3部のトークセッションでは、中学受験における男の子、女の子それぞれの親の悩みから話は始まりました。

「6年生になると、男の子は親に何かを言われると、単純に反抗します。『もうゲームやめなさい』『うるせえ!』とか。女の子は違います。『あのときママがああ言った』『このときはこう言った』と溜め込み、だんだんお母さんに本音を言わなくなります。それと、女の子は学校の人間関係をもろに引きずるので、そこが解消できないと勉強に身が入らないんですよね」と安浪さん。実際に家庭教師として、反抗期に突入した受験生とその親に接している安浪さんならではの実感がこもった話にみな聞き入ります。(安浪先生の新著『中学受験 男の子を伸ばす親の習慣』『中学受験 女の子を伸ばす親の習慣』にはこのようなお悩みを解決するノウハウがたくさん掲載されています。)

そして、中学受験における男の子、女の子の自己肯定感とは?という問いから、男子校、女子校の話へと展開します。おおたさんは、ジェンダー的な観点で、別学と共学の違いをこう語ります。「たとえば男子校の場合、同性同士だから開けっぴろげに行動できる。何か失敗しても、『おまえ、それはちがうよ』と言ってもらえるし、自分でも気づける。でも、共学の場合、失敗する経験ができない可能性がある。もしも男の子が女の子の前で何か失敗しちゃうと、『6年間ずっとアウト』のようなつらい状態になり、失敗を恐れるようになりそうですよね」。

けれども、共学にはこんなメリットも。それは「たわいもない男女のコミュニケーションや距離感が上手になること」。はい、それはよくわかります。男子校や女子校の出身者から、大学に入って異性との距離感がつかめず、合コンに失敗したという話をよく聞きました。おおたさん曰く「異常になれなれしかったり、反対に固まってしまったり、二極化する」とのこと。

また、共学の場合、「お互いの発達曲線の違いを補い合うことができる」というメリットもあるそう。たとえば、中学時代は女の子たちがコツコツ勉強しているのを見て、発達の遅い男の子たちもがんばろうとする。逆に大学受験間際になり、今度は男の子たちがぐっと伸びていくのを見て、女の子たちもがんばらないといけないことに気がつく。おお、それは嬉しいメリットです。ちなみに共学に通う高校1年生のわが娘、まだそのメリットを享受してはいませんが、今後、温かく見守りたいと思います。

学校選びのプロセスで「親の力」が試される

トークセッションの最後には、参加者からの質問に、おおたさんや安浪さんが答えるコーナーも。その中で、「わが子に合う学校選びとは?」という質問について、心に響くお二人の回答を紹介したいと思います。

安浪さん:「学校の選び方は、家庭によって違うのが当たり前。うちの子にないものを求めて、その部分を補完したいという選び方より、うちの子の良いところを伸ばしてくれる学校を選んでください」。

おおたさん:「第一部で語ったスペシャリティの話にもつながりますが、この子らしさを伸ばせるところという観点で選んでほしい。人はだれでも凸凹があって当然。ボコの部分も含めてこの子です。じゃあこの子らしさを一番発揮できるところ、自信を持って表現できるところとは? 子どもの良いところを認めてくれる学校を選んだら、きっとハッピーになりますよね」。

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今回の講演会で改めて気づいたこと。それは、志望校や併願校を選ぶプロセスは、実はわが子の良いところに気がついたり、将来どんなふうに生きてほしいかを考えたりという、これまで培ってきた「親としての力」が試されているんだ、ということです。おおたさんや安浪さんのお話を伺いながら、何度も「自分は子どものことをちゃんと見ているかな」「目先だけでなく、長いスパンで将来を捉えているだろうか」と、考える機会をいただきました。家庭によって、中学受験への道のりはそれぞれ違うもの。わが家流の子育て方針や受験との向き合い方に、お二人から教わった学校選びの観点を照らし合わせ、きちんとジャッジする。それが、幸せな学校選びの第一歩になっていくと思います。

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