子どもの未来を左右する20××問題とは?
inter-edu’s eye
「20××問題」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 教育に関心の高い方なら真っ先に思い浮かぶのが2020年問題。少し前だとパソコンの誤作動が懸念された2000年問題ではないでしょうか。しかしこれとは別に、大学そして中学受験にも影響を与えるのが「2018年問題」です。今回はこの問題についてリサーチしてきました。
2018年問題とは「大学の生き残りをかけた競争」
教育業界における2018年問題とは、日本の18歳の人口が2018年頃から減り始め、学生を獲得するための競争が過熱することを指します。
すでにご存じの通り、日本の少子化問題は今に始まったことではなく、これまでにも18歳の人口が減少する傾向にありましたが、大学への進学率の伸びによってカバーされ、際立って目立つことはありませんでした。
しかし2018年には18歳の人口減少期への突入と進学率の横ばい傾向が重なり、学生を獲得するのが難しい大学が出てきて、最悪の場合経営破たんで大学自体がなくなってしまうことが予想されています。ではなぜ人口の減少は分かっていたのに、こんなことになってしまったのでしょうか?その答えのひとつに「大学数の増加」が挙げられます。下記の表は1990年から2015年までの国立・公立・私立大学の数をまとめたものです。
1990年~2015年までの大学数の推移
国立大学 | 公立大学 | 私立大学 | |
---|---|---|---|
1990年 | 96 | 39 | 372 |
1995年 | 98 | 52 | 415 |
2000年 | 99 | 72 | 478 |
2005年 | 87 | 86 | 553 |
2010年 | 86 | 95 | 597 |
2011年 | 86 | 95 | 599 |
2012年 | 86 | 92 | 605 |
2013年 | 86 | 90 | 606 |
2014年 | 86 | 92 | 603 |
2015年 | 86 | 89 | 604 |
※文部科学省:統計要覧 学校数を元に作成
この表を見てみると、私立大学は1900年から大きく増加していることが分かります。
ここでもうひとつ注目したいのが公立大学の数も増えている点。この要因のひとつとして挙げられるのが「地方における私立大学の公立化」です。
募集人数に達しないいわゆる定員割れを起こした私立大学は、総務省と文部科学省の認可が下りれば設置でき、かつ入学金や授業料を下げることで学生を集めることがのぞめる公立化に走る傾向にあります。公立化は度々あるケースではありませんが、需要と供給のバランスが崩れ、選ばれなくなってしまった大学は厳しい現実が待っていることが予想されます。
人気のある大学ですら焦っている⁈
先ほどの私立大学の公立化は学生の獲得が難しい大学の例ですが、今度は逆に学生の獲得に成功している大学の特徴をいくつか見ていきましょう。①募集定員増、②学部の新設・改組、③ネーミングバリュー、④出口である就職に対するサポート・実績の高さ、⑤入試の多様化、⑥大学としての確固たる強みがある、⑦都市部へのキャンパス移転「都心回帰」。これらの特徴を持つ大学は志願倍率も高く、学生の獲得に成功している傾向が見られます。
この中で最も注目したいのは⑦都市部へのキャンパス移転「都心回帰」です。なぜ注目したいのかというと、これを行っているのが、名前を聞けば誰でも知っているような私立大学だからです。時系列ごとに見ていきましょう。
2005年-【東洋大学】
1・2年次は朝霞、3・4年次が白山と、学年によって2つに分かれていた文系5学部を、2005年に白山キャンパスへ統合
2013年-【明治大学】
2013年春、中野駅から徒歩10分ほどのところに14階建てビルを新設し、総合数理学部を新設するとともに、国際日本学部を東京都杉並区の和泉キャンパスから移転
2013年-【青山学院大学】
2013年度から、神奈川県相模原市で学んでいた文系の1・2年生を東京・青山のキャンパスに集約
2022年-【中央大学】
2022年までに看板である法学部を八王子の多摩キャンパスから文京区の後楽園キャンパスへ移転することが決定
これら以外の大学でも関西圏では同志社大学なども、都市部へのキャンパス移転「都心回帰」をしています。しかし都心回帰を行っている大学は、メディアでも度々特集が組まれている「人気のあるトップ100」などのランク外ではありません。逆にいうと多くの有名大学が大学経営という競争の中で危機感を持ち、動いているといえます。
2018年問題は中学受験にも影響?
大きく影響すると思われるのが、大学附属校の需要です。仮に大学の数が淘汰され、人気のある大学が残った場合、中学受験をすれば推薦制度などが充実している大学附属校に入るメリットが大きくなります。
現在でも大学の教員が附属校に来て授業を行うなど、質の高い教育を受けられるという観点からも注目を集め、実際に志願倍率も増加傾向を見せています。これからの動きにさらに注目していきたいところです。
大学選びで今から考えたいこと
最後に、2018年問題以降で親御さんが考えておきたい、大学の選び方について見ていきましょう。
まず学費面ですが、学生の減少を受け、授業料を上げる大学が出てくることが予想されます。実際に私立大学は10年前と比べ学費が上がっている現実があります。大学側も給付型の奨学金を準備している所もありますが、給付型は条件が厳しく抜本的な対策とはいえません。学資保険への加入などライフプランをお子さまが小さいうちから考えておく必要があります。
2つ目は「大学の選択基準」です。先ほどご紹介した都心回帰は、東京に上京したい学生にとって都心にあるのは非常に魅力的といえるでしょう。しかしその反面「都心にあるから」という理由で教育内容などを見誤ってしまい、入学後ミスマッチをおこしかねません。あくまで選択基準のひとつとして考え、学生の本業である、学問で学びたいことを主体に大学を選ぶといいでしょう。
最後はあくまで推測ですが、大学も淘汰されることで、数が減れば選ばれる側だった大学もかつてのように選ぶ側に変わってくる可能性があります。極端な話かもしれませんが、大学全入時代も終わりを告げる可能性も出てきます。「何となく大学に行きたい」からという学生は淘汰されてしまう可能性も出てきます。大学に進んで何をしたいのか、なぜその大学を選んだのかをより明確にする必要が出てくるでしょう。
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