eduスタッフ訪問記

インターエデュ・ドットコムスタッフが学校、塾などに訪問した際の様子をお届けします。

東京私立男子中学校フェスタ2015】麻布・開成・武蔵!御覇気三家校長が語る子どもたちに不足する力とは? パネルディスカッション・レポート後編

6月7日、本郷中学校・高等学校で「東京私立男子中学校フェスタ」が開催されました。
今年も大盛況に終わった本イベントで、昨年に引き続き、目玉企画だったのが麻布中学校、開成中学校、武蔵中学校の男子御三家の校長3名によるパネルディスカッションです。

今回のテーマは「男子教育について」

麻布、開成、武蔵の校長が語った男子校の魅力、そして男子教育のあり方をまるごとレポート!

⇒「学校の役割」について語ったレポート前編はこちら

 

【パネリスト】
麻布中学校 校長:平 秀明 先生
開成中学校 校長:柳沢 幸雄 先生
武蔵中学校 校長:梶取 弘昌 先生

【コーディネーター】
東京私立男子中学校フェスタ実行委員長
本郷中学校 校長:北原 福二 先生

 

東京私立男子中学校フェスタ2015(パネルディスカッション)

左から本郷中学校・北原校長、麻布中学校・平校長、開成中学校・柳沢校長、武蔵中学校・梶取校長。

 

■今の子どもたちに不足している力と学校の役割

北原校長:男子教育で必要とされる力とは何だと思いますか?

平校長:今は、小学校6年生ならみんなが小学校6年生というように、年齢で輪切りにされ集団になっています。そうすると、集団の知恵として、自分が持っていないものは周りも持っていません。

ところが、年齢が異なる集団だと、幼い子には特別な遊びのルールを作るなど、年齢差による知恵が生まれます。ですから、例えば、中1のクラスに高3が入ってきて、「これから飯だ」と言われた時、どう対応するかというような、異なる年齢の集団内での付き合いによって、人との距離感もだんだん掴めてくると思います。

東京私立男子中学校フェスタ2015(パネルディスカッション)

武蔵中学校・梶取校長。

梶取校長:子どもたちだけでなく、今の日本社会には不足している力があると思います。高度成長期と違い、今は3日後に世の中がどうなっているか分かりません。ですから、子どもたちもなんとなく不安を抱えています。目の前に“受験”はあるけれど、その先に何があるのか不安なのです。

こうした中で必要な力は、どこまで柔軟な思考ができるかだと思います。先入観でものを見てはいけません。昔は上手く出来た方法も、今は通用しないことが多々あります。確かに知識があることは素晴らしいことですが、知識だけでは何も解決できません。知識を学ぶことは大切ですが、そこで止まっていると学力が離れてしまいます。

これからの世代は、想定外のことが起こった時、どう対応できるかという力が必要なのです。もちろん、子どもたちの力を育てると共に、我々大人たちも、これからの世の中をどうしなければならないのか、考えていかなければなりません。

平校長:知識だけではダメという話では、オウム真理教の地下鉄サリン事件の実行犯の職業を見て驚いたことがあります。医者、弁護士、科学者と立派な大学を出て、素晴らしい知識を持っている人たちが、なぜ人殺しをする集団になったのか。

それは、知識は得られたけれど、してはいけないことや思いやりといった人間として大事な部分を欠いていたからだと思います。そういうものは、学校の異年齢のコミュニケーション中で築かれると思うので、このような人たちを生みださないことが学校の役目だと思います。

東京私立男子中学校フェスタ2015(パネルディスカッション)

開成中学校・柳沢校長。

柳沢校長:生徒たちに1番不足していると感じるのは生活力です。教育では、生活力を養うのが最も大切だと思います。この生活力は必要に迫られた時に1番身につきます。

私は、合格者説明会の時にこういう話をしています。統計的にみれば、子どもより親が先に死ぬので、子どもは親離れができます。しかし、親には子ども離れをするという思考がない上、人間は寿命が延びて、子どもが成熟しても、親はまだ元気です。こうした矛盾の中で、親はどのように子どもの生活力を養えばいいのか。それは、大きな枠で物事をみるということです。

例えば、リンゴの皮むきも、指を切り落とさなければいいのです。少し指を切ったなら、絆創膏を貼ればいい。そうして子どもは学んでいくのです。これからの子どもたちが必要な力は、応用力と適応力です。自分で乗り越えたことが自信になり、自己肯定にもつながります。ですから、子どもたちに、成功体験を与えて、その中で学ばせていくことが大切なのです。それぞれの子どもたちが持っている素晴らしい種を育てる土壌が、学校だといえるでしょう。

東京私立男子中学校フェスタ2015(パネルディスカッション)

麻布中学校・平校長。

平校長:学校は守られているので、生徒はいろいろな失敗ができます。だから、どんなに勉強ができる人間よりも、きちんとした社会人になることが重要です。その点で、特に中学1年生は、早寝早起き、朝食を食べる、あいさつ、家の手伝いという生活習慣ができる、人間としての力をつけてほしいです。

今の子どもたち、特に男の子は“草食系”などと言われ、自ら輝くものを持つという覇気や意欲に欠けていると思います。覇気や意欲を満たすものは何か考えましたが、やはりそれは夢。憧れや、こうなりたいという夢があると、どんな困難も努力できると思います。だから、子どもたちには、このために頑張りたいという夢を見つけてほしいです。