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投稿者: 戯言 (ID:L/ZcfEL0oBs) 投稿日時:2025年 02月 13日 21:43
日々の日常の何気ない風景をスナップしてみませんか?
フォトでなく、コトバで。
画像、ビジュアル、フォトジェニック、映えの時代にエデュの時計は止まったまま。文字一色の文化です。ガルちゃんの様に文字に画像も添付できません。だからこそ。
文字で掲示板にフォトを描きませう。
あなたの視点で、切り口で、コトバ選びで、時にコトバ遊びで。または紡ぐ文章で。
ドラえもんのひみつ道具、空中にかける不思議なクレヨン 『空気クレヨン』の様に。
エデュを見ている、顔も知らない「仲間たち」の頭の中に素敵な風景を描きませんか?
まずは今日のワタシから。。。
《ティファニーブルーの手ぶくろ》
朝。というには遅すぎる、昼手前。通勤ラッシュと無縁な私は、喧騒は過ぎ去り、人の流れは緩やかになってはいるものの、やはり行き交う人は多いターミナル駅構内を、待ち合わせの場所に間に合う様にと足早に歩いていた。と、床に目をやると、そこにはティファニーブルーの手袋が二つ、少し離れて転がっていた。
片方は柱の陰に寄り添うように、もう片方は改札に向かう人の波の端にぽつんと。まるで互いを探しているかのように、微妙な距離を保っている。誰が落としたのだろう。元々一緒に落ちたのが離れてしまったのか、それとも時間差で落ちたのか。
私は立ち止まり、手袋を見つめた。その鮮やかなブルーは、駅の無機質な床の上でひときわ目立ち、まるで荒野に咲いた小さな青いバラのようだった。拾い上げて駅員に届けるべきか、それともこのまま通り過ぎるべきか。一瞬迷ったが、結局何もできずに足早にその場を離れた。
後ろ髪を引かれる思いで振り返ると、手袋は相変わらず静かに佇んでこちらを見ていた。
たぶんそのうち、清掃員がやってきて、何のためらいもなくそれをつまみ上げ、ごみ袋の中へと消えていくのだろう。そんなために生まれてきたわけじゃないだろうに。妙に切ない気持ちになる。
元々はブティックに綺麗に並べられていたのだろう。いや、それは私の勝手な理想で、今時はネットでポチっただけなのかもしれない。
いずれにしても、綺麗な状態で持ち主の手元にあったであろうその手袋は、最後に誰かの手に触れられることもなく、ただの「ゴミ」として処理されていく運命なのだろう。
駅を出ると、空はどこまでも青く、まるで手袋の色が空に放たれたようだった。私はふと、あの手袋の持ち主のことを考えた。彼女は今、手袋をなくしたことに気づいているだろうか。それとも、まだポケットの中の空間に気づいてさえいないのだろうか。
街角を曲がり、こちらに向かって手を降る待ち人に笑顔を作って、私は自分の手袋を握りしめた。その温もりが、ふと、あのティファニーブルーの手袋の孤独を思い出させた。
誰かの忘れ物は、いつか誰かの記憶の中で、静かに色褪せていく。それでも、あの一瞬の記憶は、私の中で小さな物語として。
まだ呼吸をしている。