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【4182919】優等生の末路

投稿者: 佐久間   (ID:XgiX/10ffTc) 投稿日時:2016年 07月 16日 17:23

 (2) 原告は、平成一六年三月、乙山高校第一学年を、クラスの学業成績が五〇名中三位の成績で、無遅刻無欠席で修了した。
 (4) 原告は、平成一七年三月、乙山高校第二学年を、クラスの学業成績が五〇名中六位、停学処分一及び同二を除き無欠席で修了した。

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       主   文

 一 原告の請求をいずれも棄却する。
 二 訴訟費用は原告の負担とする。

       事実及び理由

第一 請求
 一 (主位的請求)
 被告は、原告に対し、原告が被告の設置する学校法人乙山学園乙山高等学校を卒業した旨の認定をし、かつ、同学校の卒業証書を交付せよ。
 (予備的請求)
 被告は、原告が学校法人乙山学園乙山高等学校第三学年たる地位を有することを確認する。
 二 被告は、原告に対し、三八一万四七〇〇円及びこれに対する平成一八年三月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、被告が経営する学校法人乙山学園乙山高等学校(以下「乙山高校」という。)に在学中であった原告が、ホームルーム中に担任教師に暴行を加えたこと等を理由に退学処分又は自主退学勧告を受けたことについて、上記退学処分又は自主退学勧告は無効であり、被告との在学関係が存続しているとして、被告に対し、主位的に卒業認定及び卒業証書の授与を請求し、予備的に、原告が乙山高校の生徒の地位を有することの確認を求めると共に、無効な退学処分又は自主退学勧告により損害を被ったと主張して、債務不履行又は不法行為(私立学校法二九条・民法四四条一項、民法七〇九条・七一五条に基づくもの)に基づく損害賠償として三八一万四七〇〇円(うち六二万八二〇〇円については不当利得返還請求を選択的に主張する)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一八年三月四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金又は利息の支払を請求する事案である。
 一 争いのない事実
 (1) 当事者
 ア 被告は、学校法人乙山学園乙山中学校(以下「乙山中学」という。)及び乙山高校を設置する学校法人である。
 イ 原告は、平成一二年四月に乙山中学に入学し、平成一五年四月に乙山高校に入学した者である。
 (2) 原告は、乙山高校第二学年在学中、平成一六年五月三一日から同年六月四日までの予定で修学旅行に参加した。
 原告は、上記修学旅行中の同年六月一日、友人と自由散策中、農道に止めてあった軽トラックから、車と家の鍵のついたキーホルダーを窃取した。
 被告は、同月、上記窃取について、保護者である原告の父甲野太郎(以下「原告の父」という。)から誓約書を、原告から反省文を提出させ、校長が訓戒の上、原告を停学三日間の懲戒処分に付した(以下「停学処分一」という。)。
 (3) 原告は、平成一六年一〇月二八日、被告の学校行事であるマラソン大会において、自己のゼッケンを他の生徒のゼッケンとつけ替え、ゼッケンをつけ替えた生徒からゼッケンの返還を求められたにもかかわらず、これに応じずに大会に参加したところ、原告が入賞したため、ゼッケン番号による入賞者の特定により、他の生徒が入賞したものとして表彰される事態を生じさせた。
 被告は、同年一一月、上記ゼッケンつけ替え行為につき、保護者である原告の母甲野花子(以下「原告の母」という。)から誓約書を、原告から反省文を提出させた上、原告を停学五日間の懲戒処分に付した(以下「停学処分二」という。)。
 (4) 原告は、平成一七年四月六日、同年三月一九日のホームルーム中に、組主任であった丁原竹夫(以下「丁原組主任」という。)を蹴った(以下「本件暴行」という。)として、被告から無期停学処分に付された(以下「本件無期停学処分」という。)。
 (5) 乙山高校の校長である戊田梅夫(以下「戊田校長」という。)は、平成一七年五月一六日、原告及び原告の父に対し、退学に関する処分を行った(以下、同日における原告の退学に関する戊田校長の行為を「本件退学に関する処分」という。)。
 二 争点
 (1) 本件退学に関する処分は退学処分又は自主退学勧告のいずれであったか
 (2) 原告には、退学に関する処分事由があったといえるか
 (3) 被告は、原告に対し、本件無期退学処分及び本件退学に関する処分に当たり処分内容の告知を行ったか
 (4) 被告の退学に関する処分は、二重処罰に当たり違法か
 (5) 原告の卒業認定請求又は在学確認請求が認められるか
 (6) 以下の①ないし⑥の各行為の存否及び下記①ないし⑥の行為が不法行為を構成するか
  ① 被告が本件無期停学処分を相当期間内に解除しなかった行為
  ② 被告が原告に対し、本件無期停学処分及び本件退学に関する処分の処分理由を明確に告知しなかった行為
  ③ 被告が、本件無期停学処分中、原告に対し、友人とのメールのやりとりを禁止し原告を監視した行為
  ④ 被告が、原告から平成一七年度分の授業料等の納入を受けた行為
  ⑤ 被告が本件退学に関する処分後、原告代理人同伴での面談を拒絶したり、都立高校への転入試験に対し早期の協力を行わなかった行為
  ⑥ 本件訴訟において、被告が、本件退学に関する処分の性質に関する主張を自主退学勧告から退学処分に変更したり、本件退学に関する処分が自主退学勧告であることを基礎づける書証を提出しながら、これが退学処分であると主張した行為
 (7) 被告の学則中の、一度納入した学費を返還しないという条項が、消費者契約法又は信義則に反し無効か
 (8) 原告の損害額
 三 争点に関する当事者の主張
 (1) 争点(1)(本件退学に関する処分は退学処分又は自主退学勧告のいずれであったか)について
 ア 原告の主張
 原告及び原告の父は、平成一七年五月一六日、戊田校長から、乙山高校を自主退学することを勧められたのであって、被告の原告に対する退学処分は存在しない。
 被告は、本件訴訟の当初、本件退学に関する処分が自主退学勧告であることを前提とした主張をしており、本件退学に関する処分が自主退学勧告であったことは、当事者双方において共通した認識であった。ところが、被告は、訴訟の途中でこれが退学処分であったと主張するに至った。
 被告は、本件退学に関する処分が自主退学勧告であったことを自白しているから、これを撤回することはできない。
 イ 被告の主張
 戊田校長は、平成一七年五月一六日、原告及び原告の父に対し、原告を退学処分とすることを告げており、退学処分は存在する。ただし、退学処分は原告にとって多大な不利益をもたらすものであるから、一定期間の猶予を与え、対外的には自主退学の形をとって原告を退学させる余地を残すこととした。
 また、被告が本件退学に関する処分を自主退学勧告から退学処分の主張に変更したことは、法律上の主張の変更であって、自白の撤回には該当しないため、自白の撤回についての原告の主張は失当である。
 (2) 争点(2)(原告には、退学に関する処分事由があったといえるか)について
 ア 原告の主張
 原告は、本件無期停学処分後のカウンセリングの際、戊田校長らに無言電話をかけたか、カッターナイフで友人を脅したか、包丁を持って登校したか、ストーカーをしているかなどの質問を受けた。
 被告は、上記のような偏見や誤解に基づく事実により、原告を退学させることとしたものであり、仮に退学処分が存在したとしても、処分事由が不存在であるから、本件退学に関する処分は無効である。
 イ 被告の主張
 争いのない事実(2)、(3)のとおり、原告は、平成一六年六月及び同年一一月の二度にわたり停学処分に付されていたところ、原告は、平成一七年三月一九日、ホームルーム中に、丁原組主任の左腰をいきなり蹴るという暴行行為を行った。
 被告は、同年四月六日の補導会議において、二度の停学処分を経た上での本件暴行は、本件退学処分事由に相当するが、もう一度だけ原告の反省を促すため、無期停学処分とすることを決定した。
 そこで、被告は、原告に対し、同月九日から同年五月一二日にかけて、カウンセリング及び教師による家庭訪問を通じ、反省と復学に向けた指導を行ったが、原告による真摯な反省が見られず、原告の家庭における教育力も不十分であった。
 そのため、同年五月一六日、本件退学に関する処分が行われたのであって、退学処分事由は存在する。
 (3) 争点(3)(被告は、原告に対し、本件無期停学処分及び本件退学に関する処分に当たり処分内容の告知を行ったか)について
 ア 原告の主張
 原告は、平成一七年四月六日の本件無期停学処分の際、処分理由、処分該当条項及び処分規定について明確な告知を受けていない。
 また、被告は、同年五月一六日、本件退学に関する処分の際、それが退学処分であることを告知しておらず、処分理由の告知もしなかった。
 したがって、本件無期停学処分及び本件退学に関する処分は、手続的違法があるから無効である。
 イ 被告の主張
 戊田校長は、本件無期停学処分の際、本件暴行は極めて悪質であり、三度目の懲戒処分なので本来は退学処分に付すべき事案であるが、原告の反省をみるため無期停学処分とすることを原告及び原告の父に告げた。
 また、戊田校長は、本件退学に関する処分の際には、原告に真摯な反省がみられないことを理由の中心として、原告を退学処分に付すると告げた。
 したがって、被告は、本件無期停学処分及び本件退学に関する処分の際、処分理由等を明確に告げており、手続的違法は存在しない。
 (4) 争点(4)(被告の退学に関する処分は、二重処罰に当たり違法か)について
 ア 原告の主張
 被告は、平成一七年四月六日、同年三月一九日の本件暴行を理由として原告を無期停学処分に付した。
 被告は、同年五月一六日、本件暴行を理由の一つとして、本件退学に関する処分を行った。
 被告は、本件暴行について、無期停学処分及び本件退学に関する処分の二度の処分を行っており、本件退学に関する処分は二重処罰に該当するため、違法無効である。
 イ 被告の主張
 被告は、本件無期停学処分の際、原告に対し、本来は退学処分に付すべきであるから、原告に十分な反省が認められなければそのまま退学になる旨を伝えており、原告に反省が認められないこと等の理由から、本件退学に関する処分を行った。
 したがって、本件無期停学処分と本件退学に関する処分とは、二重処罰の関係に立つものではない。
 (5) 争点(5)(原告の卒業認定請求又は在学確認請求が認められるか)について
 ア 原告の主張
 本件退学に関する処分が無効であるから、原告は、平成一七年五月一六日以降も乙山高校に在籍していることになるところ、原告は、乙山高校二年修了時点で七四単位を修得しており、高等学校卒業に必要な単位を取得していた。したがって、原告は、乙山高校の卒業認定要件を満たしているので、被告に対し、卒業認定を請求できる。
 仮に卒業認定要件を満たしていなかったとしても、被告は、原告に対する教育の一切を放棄した。このような被告が、原告の卒業認定を否定することは、裁量権の濫用である。
 仮に卒業認定が認められないとしても、本件退学に関する処分が無効であることから、原告は、被告に対し、乙山高校の在籍確認を求めることできる。
 イ 被告の主張
 乙山高校の卒業認定を受けるためには、乙山高校の学則上、同校所定の全課程を修了したと認められることが必要であり、具体的には、①品行方正であること、②出席状況が原則として授業日数中の三分の二以上であること、③高校三年修了時点において、各教科につき所定の修得単位を取得したことが必要であるところ、原告はいずれの条件も満たしていない。
 したがって、原告が乙山高校の卒業認定を受けられる余地はない。
 (6) 争点(6)(上記①ないし⑥の各行為の存否及び上記①ないし⑥の行為が不法行為を構成するか)について
 ア 原告の主張
  (ア) ①について
 本件退学に関する処分は自主退学勧告であり、原告が退学届を提出していないため退学の効果が発生していない以上、被告は、本件無期停学処分を現在に至るまで解除していないといえる。このような期限の到来しない停学処分は原告に対する重大な不利益処分であり、違法である。
  (イ) ②について
 上記(3)のとおり、被告は、原告に対し、本件無期停学処分及び本件退学に関する処分において、処分内容、処分理由を告知しなかった。このような被告の行為は違法である。
  (ウ) ③について
 被告は、原告に対し、本件無期停学処分中、乙山高校の友人とのメールのやりとりを禁止した。このような被告の行為は違法である。
  (エ) ④について
 被告は、本件退学に関する処分が退学処分であると主張しているにもかかわらず、原告から平成一七年度の授業料等の納入を受けた。このような被告の行為は違法である。
  (オ) ⑤について
 原告代理人は、本件退学に関する処分後である平成一七年六月四日、被告に対し、代理人同席の上面談の機会を持つことを希望する文書を送付したが、被告から、代理人同席での面会を拒否するとの回答を受けた。また、被告は、本件退学に関する処分後、都立高校の転入試験の受験を希望していた原告に対し、転入試験に関する早期の協力を行わなかった。このような被告の行為は違法である。
  (カ) ⑥について
 被告は、本件訴訟において、当初、本件退学に関する処分が自主退学勧告であると主張していたが、平成一九年一月二九日の本件弁論準備手続期日において、これを退学処分であるとの主張に変更した。また、被告は、本件退学に関する処分後である平成一七年七月二二日に原告の在学証明書を発行するなど、本件退学に関する処分後も原告が被告に在籍することを前提とする文書を発行しているにもかかわらず、本件退学に関する処分が退学処分であると主張した。このような被告の行為は違法である。
 イ 被告の主張
  (ア) ①について
 本件退学に関する処分は退学処分であるから、被告は、原告に対する本件無期停学処分を相当期間内に解除しなかったとはいえない。
  (イ) ②について
 被告は、本件無期停学処分の際、原告及び原告の父に対し、本件暴行が悪質であり、短期間内における三度目の懲戒処分であるため、本来は退学処分に付すべき事案であるが、本人の反省を見るために無期停学処分とし、反省が見られなければ退学になると告知した。
 また、被告は、本件退学に関する処分の際、原告及び原告の父に対し、反省が見られないため退学処分に付することを告知した。
  (ウ) ③について
 被告が、本件無期停学処分中、原告に対し、友人とのメールのやりとりを禁止したことは認めるが、監視には当たらず違法でない。
  (エ) ④について
 被告が原告から平成一七年度授業料の納入を受けたことは認めるが、在学契約の存続を認めたわけではなく、違法との主張は争う。
  (オ) ⑤について
 被告が、原告代理人同席での面談を拒絶した事実は認めるが、違法ではない。転入試験ヘの早期協力をしなかった事実は否認する。
  (カ) ⑥について
 被告が主張を変更したこと、原告の在籍を前提とする文書を発行したことは認めるが、違法との主張は争う。
 (7) 争点(7)(被告の学則中、一度納入した学費を返還しないという条項が、消費者契約法又は信義則に反し無効か)について
 ア 原告の主張
 被告は、既に納入した授業料等は理由のいかんを問わず返還しないとの乙山高校学則(以下「学則」という。)の規定に基づいて、納入した学費の返還義務がないことを主張するが、このような条項は、消費者契約法九条一号により無効である。また、被告は、平成一七年度の授業料等の請求を行い、他方で上記学則の規定に基づき返還を要しないと主張しており、これは信義則違反であって、被告は、信義則上、上記学則の規定を主張することができないというべきである。
 したがって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、平成一七年五月一六日以降の学費の返還を請求できる。
 イ 被告の主張
 学則二六条には、既に納入した授業料等は理由のいかんを問わず返還しない旨の規定が置かれており、これによれば、被告は原告が納入した学費の返還義務を負わない。また、被告は、平成一七年五月一六日に原告に対して退学処分をした後も、対外的には自主退学の形をとって退学させる扱いを認めており、その結果原告が都立高校を受験できるなど、在学扱いの利益を享受してきたのであるから、原告の主張は失当である。
 (8) 争点(8)(原告の損害額)について
 ア 原告の主張
 戊田校長及び被告の一連の不法行為により、原告は以下の損害を被った。
  (ア) 予備校受講料 七三万〇三〇〇円
 原告は、被告において授業を受けることができなかったため、上記予備校受講料を支出せざるを得なかった。
  (イ) 平成一七年度の乙山高校学費
             六二万八二〇〇円
 原告は、被告の本件退学に関する処分内容の説明が不明確であったことから、被告に対し、平成一七年度の学費を支払わざるを得なかった。
  (ウ) 転学試験受験費用  二二〇〇円
  (エ) 認定試験受験費用  四〇〇〇円
  (オ) 慰謝料       二〇〇万円
 戊田校長及び被告の不法行為により、原告はストレス性と思われる湿疹を発症する程の精神的苦痛を被った。これを金銭的評価に直すと、二〇〇万円をくだらない。
  (カ) 弁護士費用      四五万円
  (キ) 合計    三八一万四七〇〇円
 イ 被告の主張
 原告の主張はいずれも否認する。

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  1. 【4183394】 投稿者: わけ  (ID:T2UdxhyqTcM) 投稿日時:2016年 07月 17日 10:28

    ワカメ

  2. 【4987408】 投稿者: 開成が生徒保護者から訴訟を  (ID:tlxkY9gpDcQ) 投稿日時:2018年 05月 09日 00:25

    開成が保護者から訴訟をおこされたことがあったんですね。

    以下は関係者の感想ですが、よくわかりません。
    何があったのでしょうか。

    >開成は体面気にする割には随分強圧的。
    生徒と保護者が大人しくしてるうちは上手くいくけど、不満が爆発すれば火種は運動会関係でもいくらでもある。

    裁判沙汰にまでなったら少しは妥協した方が良かったのでは 。
    乙山の判決は永久にネットに残る 。
    学校の対応にも問題点はいくつもあった。
    それが公にされたのは学校も想定してなかったダメージ。

    ここまで考えて交渉を打ち切った教師が一人でもいただろうか。
    リスク管理がなってないように見える 。
    争って学校が守ろうとしたのは組織の統制なんかじゃない。
    今後学校の隠蔽主義がどうなっていくか注目。

  3. 【5003160】 投稿者: なんだか  (ID:32CMbOlL2Qk) 投稿日時:2018年 05月 23日 13:21

    怖いけど、ほかの学校とは違いますね。

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