最終更新:

2
Comment

【1279302】本間ノ-ト

投稿者: 教育論   (ID:Ws7/tdsHNGI) 投稿日時:2009年 05月 05日 08:26

◆ 愛光学園の寅岡先生とお会いした。この間は博多だったが、今回は東京で。懇談会を催すのが目的だったようだ。東京エリア在住の保護者のために設定しているそうである。毎年各地で行っている寮生学校ならではのイベントのようだ。また、寅岡先生は、愛光のアドミッション・オフィサーなので、広報活動も精力的に行っていた。夏休みとあって、今回は長期滞在だ。そのためゆっくりお話を伺うことができた。

◆ アメリカやイギリスではボーディング・スクールやパブリックスクールなど寮がある学校は本当の意味でエリート教育を実践している学校だ。しかし、日本では、寮生学校は目立たない。特に過保護の家庭が多くなっているこのご時世とあっては、子どもを寮に入れるなど思いもつかぬことだろう。しかし、渋谷や原宿や新宿をうろついている中高生を目の辺りにし、中高生による犯罪がマスコミを大いに騒がす昨今では、かつてヨーロッパでそうであったように、修道院生活でもさせようかという家庭も増えているかもしれない。

◆ ここでは多くを語らないが、過保護態勢の家庭も、崩壊している家庭も子どもにとってはいい迷惑である。そんな中で生活をしているより、本格的な寮生学校に進学させ、man for othersを目標に勉学にスポーツに芸術に青春の時を注いだ方が幸せに決まっている。

◆ ところで、そういうマイナス状況を背負った子どものために寮生学校は必要だということを主張したいのではない。今の家庭生活や社会生活は、子どもの才能開花を阻害しているケースが多い。だから思い切って、そういう阻害要因のない健全な環境に子どもを入れるのも1つの考え方ではないかということを主張したいのだ。

◆ 愛光学園が子どもの才能開発にとって最適の学習環境であるというのはどうしてだろう。1つは、門限というものがあって、夜遅くまで外でブラブラできないということが挙げられよう。また、もともと松山には大手予備校がないからということもあるが、6年間予備校に通わずに大学に合格していくのである。東京の有名私学では考えにくいことである。もっとも東京では彼らは予備校を他校の生徒と出会うサロンにしているのであって、勉強を本当にしようとは思っていないだろうが。とにかく、愛光の場合、学校の勉強だけで京大も東大も医学部も受かる。学校の授業は当然予備校とは違って、幅広い知恵を学ぶ場である。6年間自らの才能を1人じっと見つめることができるのと同時に、24時間態勢でつきあえる教師との対話や寮生という仲間と相談したり励ましあったりしながら過ごせるチャンスがあるのだ。

◆ 異性どうしの付き合いや盛り場は、学問の敵であると言って、思わず寅岡先生は笑った。というのも、図書館にある「神学大全」を生徒たちがよく借りるほど愛光学園で大事にしているのがトマス・アキナスの思想だが、どうやらそのアキナスのエピソードを思い出したからのようだ。13世紀以来、彼の思想はキリスト教圏の人々の生活に響を与え、いまだにその光は輝きつづけているが、かのアキナスが、ドミニコ会という当時改革派の托鉢修道会に入ると言うので、裕福な両親兄弟が、美しい姫君たちに誘惑させ、何とか世俗に戻ってくるよう努力したのだそうだ。なるほど異性の誘惑は学問には敵なのだろう。たしかに微笑ましい。しかし、これはイエスを悪魔が誘惑した時と同じ手口だそうだ。何とヨーロッパの学問観は、2000年の歴史を通じて保存されているのかと驚いてしまった。そういえば、プログレスをつくったイエズス会のフリン神父も、誘惑にいかに打ち勝つか、それが学力を伸ばすのに大いにかかわると力説していたのを思い出した。

◆ トマス・アキナスの「神学大全」を紐解くと、驚くべきディベート形式の書物であることがわかる。テーマに対し、反対の考え方が列挙されている。そしてその反対の考え方を覆す根拠が、聖書や古典から引用されクレジットが明らかにされている。そのあとに、アキナス自身の考えかたが論述され、最後に結論として、冒頭に列挙された反対の考え方を1つずつ覆していくという形式なのだ。

◆ この「神学大全」は、並べるとヘーゲル全集やカント全集よりも多くなる膨大な書である。この思考形態が愛光学園に脈々と続いているとしたら一体学内の様子はどうなのだろう。議論や討論の尽きない光景が目に浮かぶが、やはり実際そうだということだ。

◆ しかし、大事なことは、アキナスが死の床で、自分が書いてきた書物など藁くずほどの価値もないと言い放った精神だという。彼の神学大全の始めの方に、神は有る。しかし、神がいかなるものであるかそれはわからない。もし神とはこういうものだと誰かが言ったとしたら、それは危険だ。その人の考えに過ぎないのだから、その人が権力を持っている時は、さらに危険だろうと。この考えは、トマス自身にもあてはまるわけだ。多くを語るアキナス。たしかに神の光のもとに筆を動かしたのかもしれない。しかし、それはアキナスが人間である以上、やはり危険性はある。死を前に言い放った言葉は、アキナスの謙虚さと同時に強さでもあろう。

◆ 寅岡先生が東京にいる間、時々先生の教え子に会うチャンスがある。明るく素直で思慮深く型破りな人柄が多い。愛光学園の教育の一端を垣間見ることができるのある。アメリカのボーディング・スクールでは、社会への奉仕者であろうとし、かつ自らを律することのできる人材の社会的義務をノブレス・オーブリッジと言うそうだ。渋幕の田村先生はいつもこのノブレス・オーブリッジの重要性を説くが、これは愛光学園では当たり前のことであろう。

◆ 愛光学園自体の歴史は、ボーディング・スクールに比べれば非常に浅い。しかし、その建学の精神は、遠く700年前に遡る。そう考えてみると、愛光学園こそ本物の寮生学校なのではないだろうか。
   本間ノ-トより抜粋

返信する

管理者通知をする

マイブックマーク

  1. 【1279481】 投稿者: 忍耐  (ID:Ws7/tdsHNGI) 投稿日時:2009年 05月 05日 12:34

    海陽もそうだが寮生学校はどうしても非難の矛先がむけられやすい。
    なんとか耐えていかねば。

  2. 【1279851】 投稿者: 忍  (ID:Ws7/tdsHNGI) 投稿日時:2009年 05月 05日 20:58

    何とか耐えよう。この苦境を何とか乗り切ろう。

学校を探す

条件を絞り込んで探す

種別

学校名で探す