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文京区男子校3校鼎談 一人前の漢を育てる男子校が集結

inter-edu’s eye

変化の激しい社会情勢だからこそ、芯のブレない中高一貫教育を実践する男子校が再評価され始めています。なかでも、東京都心の文京区に位置する京華中学・高等学校(以下、京華)、獨協中学・高等学校(以下、獨協)、日本大学豊山高等学校・中学校(以下、豊山)の受験倍率は上昇を続け、人気は高まる一方です。
今回は上記3校の先生方から、男子校に注目が集まる理由のひとつ「男子の育て方」について、存分にお話しいただきました。
(※校名は五十音順・敬称略)

男として独り立ちするための6年間

はじめに広報を担当する先生方から、各校の魅力に直結する部活動や行事、さらには家庭との連携について伺いました。

池本和樹先生
池本和樹先生
藤田麻友美先生
藤田麻友美先生
上沢花子先生
上沢花子先生

男子校生活には欠かせない、部活動の魅力についてお聞かせください。

池本先生私が顧問を担当している陸上部では、先輩・後輩がお互いへの思いやりを大切にする気風があり、後輩の面倒見が良い先輩ほど、競技でも活躍しています。入学した当初、やんちゃ盛りだった生徒が6年間を通して、たくましさと優しさを兼ね備えた先輩に成長していく例をたくさん見ることができました。学年を越えて相手を思いやれるところは、京華生の美徳だといえます。

上沢先生文化系の部活動では、ほとんどが初心者から始まるので、いちばん身近で指導してくれる存在となる先輩との繋がりはとても強くなります。どんな部活動であっても、後輩から憧れや尊敬の眼差しで見つめられる自己肯定感は、私たち教員が教えてあげられるものではないでしょうね。コロナ禍で限られた練習環境にもめげず、目標に向かって協力し合うチームスポーツでは特に、生徒同士のアドバイスが自信や技術向上につながっていることがよく分かります。

藤田先生新設された英語ディベート同好会の顧問をしています。ディベート同好会は、当初6人の生徒で始まった有志の活動でした。東京予選を勝ち抜き、全国大会や世界大会に出場した先輩たちの様子を見て、後輩たちが自然と集まり、あれよあれよという間にメンバーは30人以上になりました。軽音楽部やハンドボール部といった部活も、生徒たちの自発的な集まりから始まった部活です。生徒たちの自発的なやる気を結実させていく、そんな雰囲気がありますね。

ディベート部の世界大会に向けた東京予選
ディベート部の世界大会に向けた東京予選
世界大会での夕食のひととき
世界大会での夕食のひととき

何かにチャレンジしたいという気持ちを応援するのが、獨協の校風です。

部活動のほかにも、それぞれの学校でユニークな活動もされているそうですね。

上沢先生50年以上の歴史があるスキー教室では、スポーツとして滑るのを楽しむだけでなく、みんなで夜の打ち上げ花火を眺めたり、新しい友だちを作ることもできる特別な校外活動になっています。修学旅行や勉強合宿とも異なる面白さがありますね。
団体行動からも、ルールの必要性や個性の尊重を学ぶ機会はたくさんあります。とっても不思議なことに、初めてスキーを体験した生徒が、何度も参加している私よりも上手になっていくんですよ。

藤田先生部活動以外にも委員会・行事等で活発に活動しています。環境問題に取り組んでいる緑のネットワーク委員会は、学校の域を超えた地域交流活動をしていますし、文化祭実行委員は学校全体を巻き込んで、コロナ禍でのオンライン文化祭を成功させました。生徒たちが作ったバーチャル獨協も好評でした。やりたいことを見つけたら、できない理由をさがすのではなく、どうすれば実現できるのか、そのために必要な方法を考える思考力と実行力を持っているのが獨協生の素晴らしいところです。

池本先生生徒主体で学校広報活動をしているKSN(京華スクールナビゲーター)という団体では、説明会でのプレゼンテーションを重ねてきた経験から、他者に思いを伝える技術に長けています。また、鹿児島県鹿屋市の地域創生を支援するコンクールに自主参加した生徒たちは、一般募集にもかかわらず最優秀賞を勝ち取ったほど企画力に優れているんです。
単なる達成感にとどまらず、自らの可能性に気づくことができた貴重な機会となりました。

KSNの活動
KSNの活動

鹿屋市の地域創生コンクール参加は、社会に貢献する必要性や楽しさを知るきっかけになりました。

学習指導面で、生徒個人へのフォローやご家庭との連携についてはいかがですか。

藤田先生獨協医科大学への併設校推薦枠が新設され、受験生の保護者からの強い関心を感じています。けれども、医学部進学を見据えた指導が中心になるわけではなく、勉強を頑張る仲間から刺激を受け、幅広い選択ができるように丁寧に指導をしています。また生徒・保護者ともにしつかりと連携をとっています。ご家庭内で、進路に関しての意見が合わないケースがありました。学年の教員と何度も話し合い、生徒も保護者も納得のいく結論が出た上で、受験勉強をスタートすることができました。先日、無事に医学部に現役合格し、生徒と保護者も号泣して喜んでいる姿を見たときは、嬉しかったですね。

池本先生精神面のフォローを重視しています。生徒一人ひとりに伝わる言葉で私たちの気持ちを伝えるようにしていますし、その繰り返しからお互いの信頼関係が良い方向に変わり、結果的に進路設計にも繋がっています。自分だけの価値観や判断基準に沿ってマイペースに過ごしていた生徒も、多くの面談を通して目標を定められたことで難関大学へ進学できました。男子校だからこそ、自分なりの信念を持ちながら個性を活かすことに特化した男子教育の環境が用意できていると感じます。

上沢先生私の場合は、普段の学校生活を見られない保護者との連絡時には、生徒が頑張っている様子を伝えて安心してもらえる言葉をかけるように心がけています。高校生になったら周囲の雰囲気が変わって、自然と勉強に身を入れる生徒が多いので、心配しなくても大丈夫ですよ。
高校で特進クラスに入った生徒たちは、「あいつには負けたくない!」という対抗心からクラスメイトとの切磋琢磨を始めることで、大きく学力を伸ばす様子をたくさん見てきました。

クラスメイトとの切磋琢磨
クラスメイトとの切磋琢磨

日大への推薦資格を持ちながら、他大学にもチャレンジできる安心感があります。

男子の成長、分岐点はどこに?

続いて中学生ご担当の先生方より、男子が大人に変わっていく過程や受験生を抱えるご家庭へのアドバイスを伺いました。

西村博樹先生
西村博樹先生
古池俊明先生
古池俊明先生
今井真吾先生
今井真吾先生

男子生徒に共通する ”育ち方” って、あるのでしょうか?

西村先生男子はどのタイミングで「覚醒」するか分かりません。急成長を遂げるタイミングは一人ひとり異なります。
だからこそ常に生徒を見守り、そして根気強く声をかけ続けます。6年間で「男の子」が「男子」へと成長していくしかけが、男子校にはあります。男子の心をくすぐるプロフェッショナルが、ご子息の主体性に火をともしていきます。

古池先生特に男子の成長曲線の描かれ方は個々で大きく異なりますが、日々の学習や部活動、行事などの学校生活を「きっかけ」として、飛躍的に向上する瞬間があります。一度スイッチが入れば、男子の成長は決して止まることはありません。男子校は体験から学ぶ機会が多く設けられている特徴がありますが、そんな「きっかけ」を掴んでほしいという願いも込められているのではないかと感じています。

今井先生男子はいきなり変わるという話、よく分かりますね。個人でタイミングは異なりますが、日常の挨拶やちょっとした会話のような細やかなコミュニケーションから入っていかないと、いきなり口数を増やしても耳を貸してくれないのは家庭内と同じです。どういった声かけが琴線に触れるかは人それぞれなので、教員間でも情報共有を絶やさないようにしています。

生徒たちのようす
生徒たちのようす

「毎日のお弁当を用意してくれるお母さまに、感謝の心を忘れずに!」という声かけもします。

受験生をサポートされている保護者の皆様へ、メッセージをお願いします。

今井先生女性であるお母さまは、息子が何を考えているか理解できず、自分のようになってほしいという願いから叱ってしまう場合もあるでしょう。しかし、人生を乗り切るのはお子さん自身ですから、時々褒めてあげることを忘れずに、未来に向かって足を踏み出す手助けをしてあげましょう。

古池先生受験期から中学生にかけて、徐々に大人よりも仲間(同年代)からの評価を大切にする時代に入っていきます。保護者の皆様には、時に一歩引いてサポーターのような存在になって支える機会を設けて頂くことで、子どもたちの自己基盤もより整えられていくのではないかと思います。

西村先生学校生活を通じて、多くの仲間と過ごし、多様な価値観の中に身を置くことで、自らの考えがブラッシュアップされていきます。その際、集団生活の中で、相手の意見に耳を傾け、自分の意見を伝える場面が数多くあります。ご家庭でも、ご子息とコミュニケーションをとっていただくことで、それが入学後も活きてきますし、何より、親子の絆はさらに深まっていくでしょう。

編集者から見たポイント

同じ男子校とはいえ、それぞれに指導スタイルの異なる3校ですが、自らの意思で歩み始めてほしいという願いから一人ひとりを見守るという共通点がありました。人間味あふれる先生方と、個性を抑える必要のない環境ですくすくと育つ生徒たち。文京区の男子校には、ひとつの物差しでは測れない温かみと、奥深さを感じます。

「男子校のこと、もっと知りたい!」という受験生保護者の皆さまへ
6月13日(日)開催予定の「東京私立男子中学校フェスタ」がお勧めです。
完全予約制・入替制となり、現役生は来場しませんが
部活動など生徒の活動紹介は動画配信されるなど、随所に工夫が施されています。
都内屈指の男子校が一堂に会する、絶好のチャンスをお見逃しなく。

男子中フェスタ2021男子中フェスタ2021

取材協力

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:京華中学・高等学校/獨協中学校・高等学校/日本大学豊山高等学校・中学校