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inter-edu’s eye
九段下を最寄駅とする白百合学園中学高等学校(以下、白百合学園)と暁星中学・高等学校(以下、暁星)は、別学・キリスト教教育・フランス語教育・伝統校と多くの共通点を有しています。共学志向が強い傾向にありながらも、高い支持を得ている2校の対談が、この度実現。共通点を通して両校の学びについて聞きました。
※記事中の担当学年・生徒の学年は2019年2月時点のものです。
白百合学園中学高等学校
1881年、3名のフランス人シスターが児童養護施設と診療所とともに学校を設立。キリスト教の精神に基づき、人のために奉仕する人間の育成を目指す。外国語は中学では英語とフランス語の2か国語を全員が学習し、高校ではどちらか一方を第一外国語として選択。
暁星中学・高等学校
1888年、フランスとアメリカから来日した宣教師が創立。キリスト教の理念に基づき、他者への奉仕を最終的な目標とする。英語とフランス語を学び、中学校から第一・第二外国語の選択が可能。フランス語の授業では、フランスはもちろん欧米の文化についても深く学ぶ。
自分を見失うことなく
人生を切り拓こう
まずは学校の在り方について広報ご担当の先生方に語っていただきます。
世界規模で必要とされるキリスト教の精神
──キリスト教教育とフランス語教育は生徒にどんな影響を与えますか。
髙橋先生
では私はフランス語教育について。言語は文化の入口と言われます。フランス語を話せなくても困らないけれど、学ぶことで異文化に触れ、視野を広げることができます。意欲は生徒によってまちまちですが、習慣とはすごいもので、テストをすると全員できていて驚かされますね。
判断するのは生徒
──今の生徒は先生方の目にどのように映りますか。
田畑先生
真面目で素直な生徒が多く、みな自分の人生について真剣に考えています。
髙橋先生
そうですね。少子化で1人に対する親の期待が昔より大きくなり、やらなきゃいけないことが増え、子どもは真面目にならざるを得ない時代なのかもしれません。
──そうした生徒たちへの進路指導は。
髙橋先生
選択肢は多く与え、狭めるようなことはしません。決めるのは生徒であり、自分で判断するのはとても大事なことです。
田畑先生
本校も同様で、こちらがするのはアドバイスまでです。どのような進路を選択するにしても、核となる生き方がぶれないことが大切です。
──生徒の傾向や進路指導にも共通点が見られますね。
髙橋先生
兄妹で暁星と白百合学園に通うご家庭も多く、2校でワンセットのような感覚があります。
田畑先生
様々な点で違いよりも共通点の方が多いことを実感しています。だから暁星さんとは一緒にできることがありそうですね。交流の仕方はいろいろあると思います。
社会に出て実感した
伝える力の必要性
続いての登場は、数年前までは教わる側だった若手教師のお二人。現場に立ち、生徒と密に接する中で何を感じ、何を伝えたいと思っているのでしょう。
生徒にとって「面倒くさい存在」であること
──ご自身の学校の生徒の印象を教えてください。
伊藤先生
積極的な子が多く、意見を求めると生徒はどんどん手を挙げます。こういう環境に身を置けば、内気な子だって自然と発言できるようになるんじゃないかと思います。何を言っても受け入れてくれる空気が学校全体にありますから。
松本先生
白百合学園というと、おしとやかでおとなしい生徒が多いイメージがあるようですが、実際は明るくて元気な生徒が多いですよ。
──そんな生徒たちと、日々どんなことを意識して接しているのでしょう。
松本先生
教師が先回りして説明してばかりいると、自分で考えなくなってしまう。ですから、生徒が「分かりません」と言ったときは、“何が分からないのか”を自分で考えて、それを相手に説明できるよう指導しています。
伊藤先生
教師は生徒にとって“面倒くさい存在”でいいと思っています。中1生だと「楽しそうだったから、つい」と、自分本位で軽率な行動をしてしまいがち。そんなとき「これをしたら先生が怒るかな。そうなったら面倒くさいな」と気づいてもらいたいんです。自分の行動が周りにどう影響するのか考えて動けるようになってほしいですね。
教科書にある答えを導くことだけが学びじゃない
──生徒に身につけさせたい力や、必要とされる教育は何でしょう。
松本先生
「伝える力」ですね。理科の実験後にレポートを書かせると、実験がうまくいかなかったとしても、まじめさゆえか教科書通りの結果を書こうとする生徒が目立ちます。でもそうじゃない。大切なのは、「どうして教科書と違う結果になったのか」を考え、それを読む人に伝わるように書くことなんです。
伊藤先生
暁星には中1生が偉人について調べ学習をし、みんなの前で発表する「人間ドキュメント」という学びがあります。発表にあたり、生徒は人に伝えることの難しさを知り、どうしたらより伝わるかを考えるのですが、この過程そのものが教養になるのではないかと思います。そうした日常生活に直結しない部分に、人格を形成するような教育の重要な意義があるのではないでしょうか。
似ている? 違う?
中学生がテーマトーク
最後は中3生の男女4人が共通点をテーマに話します。どこが似ていて、どこが違うのでしょうか。
テーマキリスト教教育
Sくん
キリスト教教育を通じて、自分の考え方や感じ方が変化したかな。相手を思いやったり感謝できるようになったり。
Kさん
シスターでもある校長先生が毎週朝礼で聖書についてなどの話をしてくださるところが学校の自慢。
Hくん
Sくん
校長先生が? それはインパクトがあるね。
Sくん
宗教教育の一環で「宗教講話」という時間があって、この前は国境なき医師団の方の講演で。そういう特別な経験ができるのはいいところかな。
Tさん
白百合学園では生徒会が主導して講演会を開いているよ。
Hくん
Sくん
それもすごいね。
テーマフランス語教育
Hくん
6時間のうちの2時間は、ネイティブの先生からフランスの文化を教わるんだ。
Kさん
白百合学園も言語の背景にある文化を学ぶことを大事にしているよね。
Tさん
うん。授業の中で文法も会話も教わることができるから、ネイティブの先生からの質問に答えられたときはすごくうれしい。
Hくん
暁星では100年以上前からオリジナルのフランス語教材を使っていて。
Kさん
Tさん
えー!
Hくん
だから国名の表記が今と違っていたり。ネイティブの先生が現代の話を盛り込んで授業を進めてくれて、昔のことも今のこともしっかり学べるところがすごくいいんだ。
テーマ別学
Sくん
一芸に長けている生徒がたくさんいるから、いろんな得意分野を持つ仲間と6年間過ごせるところがいい。あと、男子しかいない環境は好きなことが思い切りできて楽しい!
Tさん
そこは同じで、女子校も本当に楽しい!!
Sくん
暁星と白百合学園は似ているところがたくさんあるって分かった。白百合学園の生徒はしっかりしているイメージがあって、その通りだったことも。
Kさん
Tさん
いやいやそんな。
Tさん
女子校・男子校それぞれのよさがあるね。男子校に通う兄も楽しそうに学校のことを話すから、私も男子校に行ってみたいな。
編集者から見たポイント
両校が伝統の教育を続けているのは、今までも、そしてこれからも世の中で必要とされる力を育成できるからであり、その教育を受けている生徒は内面の成長や視野の広がりを実感していました。先生方が強く意識していた「判断する力」「考える力」「伝える力」。この3つの力を中高6年間で養うことで、両校の生徒は世界へ大きく羽ばたいていけることでしょう。
イベント情報
白百合学園中学高等学校
イベント | 日時 | 概要 |
---|---|---|
学校見学会 | 2019年5月25日(土) 9:00~10:00 11:00~12:00 13:30~14:30 |
要予約・定員制。生徒・先生の案内で校内施設の見学があります。クラブ活動の様子もご覧いただけます。 |
体験学習会 | 2019年6月22日(土) 10:00~11:30 13:30~15:00 |
要予約・定員制。クラブ活動、創作、実験など様々な体験を用意しています。小学5・6年生が対象ですが、午後の部は小学4年生も参加できます。 |
学校説明会 | 2019年7月6日(土) 14:00~15:30 |
要予約。学校生活の紹介を中心とした説明をします。 |
学園祭 | 2019年9月22(日)・23日(月・祝) 9:00~15:30(入場は15:00まで) |
小学生相談コーナーや校内見学ツアーがあり、生徒、先生が対応します。 |
暁星中学・高等学校
イベント | 日時 | 概要 |
---|---|---|
学校見学会① | 2019年7月13日(土) 9:00~12:00 |
予約不要です。 説明会は実施せず見学のみとなります。 個別相談ブースを設置します。 予約が必要なイベントを開催する場合があります。 学校サイトでご確認ください。 |
入試問題解説会 | 2019年8月31日(土) | 予約が必要です。 学校サイトでご確認ください。 |
入試説明会 | 2019年9月14日(土) | 予約が必要です。 詳細は学校サイトをご覧ください。 校長や教員だけではなく、生徒やOBのプレゼンを交えながら、暁星を紹介します。 ネット出願のみのため、窓口出願用の入学願書は配布しません。 |
学校見学会② | 2019年10月19日(土) 9:00~12:00 |
予約不要です。 説明会は実施せず見学のみとなります。 個別相談ブースを設置します。 予約が必要なイベントを開催する場合があります。 学校サイトでご確認ください。 |
企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:白百合学園中学高等学校、暁星中学・高等学校
田畑先生
キリスト教の教育を通して、私たちは目に見えない大きな存在に支えられ、生かされているということを学んだ生徒は感謝の気持ちを持てるようになります。また、弱い立場の人の気持ちに寄り添い、その人のために行動しなさいという教えを学ぶことにより、共感する気持ちも持てるようになります。これからの国際社会では、環境問題やエネルギー問題などの難題に立ち向かうために世界中の人々が歩み寄り、協力しなければなりません。そのとき、キリスト教の教育で学んだことが活かされるでしょう。