東京都立 武蔵高等学校附属中学校

基本情報

東京都立 武蔵高等学校附属中学校

学校紹介

都立武蔵高校を設置母体として平成20年に開校。多摩地区唯一の併設型都立中高一貫教育校。高校は昭和15年、府立第十三高等女学校として創立。

住所

武蔵野市境4丁目13番28号

電話番号

0422-51-4554

過去の入試データ

募集人員

年度 2018 2019 2020 2021
60 60 60 80
60 60 60 80
120 120 120 160

応募者数

年度 2018 2019 2020 2021
295 302 240 293
240 291 272 220
535 593 512 513

受検者数

年度 2018 2019 2020 2021
277 287 230 275
231 271 262 211
508 558 492 486

合格者数

年度 2018 2019 2020 2021
60 60 60 80
60 60 60 80
120 120 120 160

実質倍率

年度 2018 2019 2020 2021
4.62 4.78 3.83 3.44
3.85 4.52 4.37 2.64
4.23 4.65 4.1 3.04

適性検査分析

  • 2021年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      【出典】
      文章1:河合隼雄「『出会い』の不思議」による
      文章2:村田沙耶香「となりの脳世界」による

      【出題形式】
      例年の出題から大きな変更はありません。文章1と文章2を読み、それについての読解問題が2題、作文問題が1題という構成です。作文の文字数も400字以上440字以内という例年通りの指定でした。
      問題1は、いわゆる「文章横断型」の問題です。傍線が引かれている文章2において「個性」がどのような意味合いで用いられているかをまずは整理し、そのうえで文章1から適切な箇所を探すという基本動作ができていれば、決して難しい問題ではなかったはずです。正答としては「自分らしい音」「生徒によって違う音」など複数考えられます。読解問題で正答が複数考えられるという出題の方針も例年通りと言えるでしょう。
      問題2も文章横断型の問いです。ただし「文章1の表現も用いること」という指示に注意しましょう。「も」ですから、文章1と文章2どちらの表現も使いつつ、解答を作成する必要があるということです。思考方法は問題1と同じで、まずは傍線が引かれている文章2から情報を整理し、解答の大枠を作成します。すると「もっと鳴らそうと欲張ったから」「もっと鳴らそうと力が入ったから」というような内容になるとわかります。それと同じ内容を文章1から読み取ります。最終段落に「『好む』は積極的だが、下手をすると気負いすぎになる。」とあります。もっと鳴らそうと力を入れすぎたことは、文章1における「気負いすぎ」に当てはまるとわかるでしょう。
      読解問題は2題とも基本的なレベルの出題でしたので、どちらも正解したいところです。
      問題3は文章内容をふまえて作文を書く問題です。
      ここ2年の作文問題では、「ひかるさん」という人物と友だちのやりとりを読んだ上で作文を書くという出題でしたが、2021年度はそうしたやりとりはなく、2018年度までと同様の形式での出題となりました。各段落に書くべき内容が細かく指示されていますので、それに従って作文を構成します。
      まず、第一段落です。文章2の「お稽古」の場面では、文章1における「知る」「好む」「楽しむ」のどの段階まで表されているかを示す必要があります。問題2がヒントとなります。問題2から、「お稽古」の場面では、もっと鳴らそうと気負いすぎたために「変な音」が出たと考えられます。文章1からは「好む」段階では「気負いすぎ」になるということが読み取れますから、この段階まで表されていると考えるのが自然でしょう。自分の意見は第一段落に書き、上述の「根拠」は第二段落に書きます。
      難しかったのは、第三段落ではないでしょうか。第一段落で示したものとは違う段階だと考える人にも、わかってもらえるように説明する必要があります。なおかつ、自分とは意見が違う人たちがどのように考えたのかも想像しなければなりません。難易度も高いうえ、文字数もこの段落に最も多く割く必要があるでしょう。たとえば「知る」の段階でとどまっていると考える人は、どのように考えてそう判断するのでしょうか。「知る」の段階は「主体的」「積極的」ではない受け身の段階のことです。文章2の「お稽古」の場面では、「とにかく素直に、素直に」「身体の全部を先生の言葉に任せるような感覚で」などとあるので、そうしたところから受け身な姿勢であると読み取ることもできます。「たしかに〇〇という部分から、『知る』の段階だと読み取ることもできるかもしれない。しかし△△」というような形で書くと書きやすかったのではないでしょうか。あるいは、「楽しむ」の段階だと考えている人は、どのように考えたのでしょうか。「楽しむ」段階とは、「客体の中に入ってあるいはそれを一体化して安住する」「安らぎ」がある段階だと書かれています。文章2では、たしかに気負いすぎてしまったところはありますが、その手前で一度「とても素直な音」を出すことに成功しています。そのときの音の感覚が、お稽古の後にも「今も身体に残っている」と述べられていますから、「客体」と「一体化」したと読み取ることもできるでしょう。そうした部分を根拠にとれば、「楽しむ」という段階まで表れていると考える人もいるかもしれません。
      さて、ここまで読み解いてみると、どの段階を選ぶにしても、ある程度根拠を持って書くことができるかと思います。したがって、第一段落では三つのうちどの段階を選んでもよく、それについて予想される反論を第三段落で述べ、さらにそれについての反論を展開できていれば点数がもらえる作文問題だったのではないでしょうか。
      適性検査Ⅱも含め「客観的に採点が可能で、かつ答えが一通りにはしぼられない」という出題の傾向が2021年度も色濃く残ったと言えるのではないでしょうか。

      適性検査Ⅱ

      【大問1】
      大問1は、倍数・約数の決まりを使い、整数の成り立ちについて考えさせる問題でした。
      問題1は、規則的に並んでいる整数の和を工夫して求める問題でした。九九の表の中から、ある決まった和になる範囲を見つける問題です。6つの数をそれぞれA~Fの記号に変え、その記号を使って解法を説明しなければなりません。ただ答えを求めるだけでなく、その求める過程を分かりやすく説明することが大切です。適性検査の問題を解きなれている生徒にとっては、それほど難しい作業ではないと言えるでしょう。
      問題2は、かけ算の式に必要な数を、サイコロの面に当てはめる問題でした。九九の表の中にある数を、かけ算の式で表し、さらにそれらをサイコロの面に書く問題です。1~7までの数を式に必要なだけ取り出せるように、6つのサイコロに分けて書かなければなりません。また、その数を書くときの向きも正しくする必要があります。立方体についてたくさん練習してきたかが問われたと言えるでしょう。

      【大問2】
      大問2は武蔵高附属中の独自作成問題です。「日本の農業」をテーマにした問題でした。
      問題1、問題2どちらも資料と会話文の内容を結び付けて解釈する力をみる問題でした。
      問題1(1)は、東京中央市場におけるキャベツとレタスの入荷割合について、グラフと会話文の内容から、各グラフで示された入荷割合がどの県に該当するかを判断する問題でした。(2)は、キャベツ又はレタスについて、平均価格が最も高い月が、最も低い月の何倍の金額になるかを求める問題でした。(3)は、図と表と会話文をもとに、キャベツとレタスの生産の特徴を説明する問題でした。
      問題2(1)は、会話文をもとに、農業に参加する団体が増えた理由について説明する問題でした。(2)は、会話文をもとに、農業に関係する日本の団体が抱えている課題を解決するための努力について説明する問題でした。
      大問2全体を通して、答えを作成するために必要な情報が、資料や会話文に分かりやすく示されており、得点しやすかったと言えるでしょう。

      【大問3】
      大問3は、磁石の性質を題材にした問題です。実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。問題1は、磁石の性質を利用し、磁石のついた鉛筆を鉄板の上に置いてある磁石の上で浮くかを例の図から考察する問題でした。
      問題2は、すでに行った実験とおもりをつり下げることができる最大の重さと、1辺3cm以下の正方形ではシートの面積に比例することから、つり下げられる重さとおもりの個数を考察する問題でした。2021年度は問題3がなくなり小問が1題減りました。

      適性検査Ⅲ

      武蔵高附属中の独自作成問題です。例年通り、大問2題構成でした。

      【大問1】
      大問1は立方体を題材にした問題でした。
      問題1は立方体を3つに立体に切り分け、それぞれの体積について考える問題でした。一辺の長さを自ら設定する点は過去の出題にならった形でした。
      問題2は立体の側面に5種類の色をぬる問題でした。立体を題材とした、場合の数を求める問題でしたが、8つの条件が指定されており、大変複雑な問題でした。
      問題3は立体を方眼紙の上に置き、電灯を当てた際にできる影についての問題でした。9か所の指定された場所から電灯の位置を選んで解くものでしたが、電灯と立体の高さから影の広がりを考えなければいけないものとなっており、非常に解きにくい問題でした。

      【大問2】
      大問2は、東京でクマゼミが増えているというテーマをもとにした問題でした。
      問題1はクマゼミが増えて事実を調査する方法を考える問題、問題2はクマゼミとモンシロチョウのどちらかを選び、それぞれの一生に対して、卵、幼虫、さなぎ、成虫の期間の割合をそれぞれ求め円グラフを作成する問題、問題3は5つの資料の中から2つを選び、クマゼミが増えた原因の仮説を立てる問題でした。
      仮説を立てる設問については、2020年度に続いての出題となりました。「セミ」という身近な題材が扱われており、問題1から問題3まで題材が一貫していたため、比較的解きやすい問題でした。また、割合の計算についても、桁数が小さく計算しやすいものとなっていました。

  • 2020年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      【出典】
      文章1:三浦しをん「愛なき世界」による
      文章2:日高敏隆「世界を、こんなふうに見てごらん」による

      【出題形式】
      例年通り、二つの文章が与えられたうえで問題1、問題2の読解問題と問題3の作文問題を解く形式です。
      都立中の出題としては珍しく、文章1が物語文の引用です。これに驚いた受検生も多かったかと思われますが、論説文、随筆文と同様に文章を通じて伝えたいことが明快に書かれているものでした。
      問題1は物語の中で「藤丸」「藤丸さん」と同一人物に対して呼び方が書き分けられている理由を問うものでした。文章を通じて登場人物を客観的に「本村」「藤丸」と書いていますが、傍線㋑は「それにしても、藤丸さんはすごい。と本村は思った」という表現から「本村」の内面の声が書かれていることがわかっていれば難しくない問いでした。落ち着いて、確実に得点したい問題です。
      問題2は昨年度の出題と同様、文章横断型の読解問題でした。つまり、文章2中の傍線㋒「いろんないきものの生き方をたくさん勉強するといいと思う」について、筆者がそう思う理由が問われていますが、その際に文章1の表現を用いるように指示があります。気を付けたいのは、「筆者がそう思うのは」といった場合の「筆者」とはあくまでも文章2の筆者であるということです。ですから、一度文章2において答えを考えたうえで、同じ内容を文章1から探すというステップをふまなくてはなりません。その発想があると、文章2の傍線㋒の直後「そうすることで、不思議に広く深く、静かなものの見方ができる」を言い換えた内容を文章1から探せばよいのだとわかります。
      問題3は作文問題です。昨年度は「ひかるさん」と「友だち」のやりとりを読んだあとに「ひかるさん」になりきって作文を書くというスタイルでした。今回も同様に「ひかるさん」と「かおるさん」のやりとりがあります。ただ、そのやりとりを読んだうえで「あなたの考え」が求められているところは昨年度と異なるところであり、いわば「オーソドックスな作文問題」だったと言えるでしょう。例年の共同作成問題と同様に、段落ごとにどういった内容を書くべきかの指定があります。その指示に確実に従い、かつ文章内容をふまえつつ第二段落、第三段落で自分の意見を展開するという問題です。

      適性検査Ⅱ

      【大問1】
      大問1は割り算の余りに注意しながら、約束・ルールに従って作業する問題です。
      問題1は縦50cm横40cmの画用紙6枚を、縦2m横1.4mのパネルに規則的に貼るときの、はしと画用紙、画用紙と画用紙の間の長さを答える問題です。
      問題2は横向きの画用紙38枚と縦向きの画用紙21枚をパネルの両面に約束通りに貼ったときに必要なパネルの枚数を答える問題です。
      問題3は正八面体の辺上をさいころの目と〔ルール〕に従って進み、ゲームが終わったときの点数を答えさせたり、ある得点になったときの目の出方を答えさせたりする問題です。
      特別な解法や知識は必要ありませんが、問題をよく読み、決まりに従えるかがポイントになります。
      【大問2】
      大問2は「日本の漁業」をテーマにした問題でした。魚類と肉類消費量に関するグラフや漁獲高のグラフと会話文をもとに分析・記述する問題でした。
      問題1の(1)は魚類・肉類の消費量の減少率、増加率を計算して求める問題でした。(2)は魚類・肉類の消費量の変化を表した表の数値をもとにグラフを作成する問題でした。
      問題2の(1)は会話文をふまえて漁業種類別の生産量のグラフから遠洋漁業か沿岸漁業のグラフを選択する問題でした。(2)は沖合漁業の生産量と日本全体の漁業の生産量も減った理由を資料と会話文から記述する問題でした。
      問題3は養しょく魚に対して消費者がさらなる品質向上を求めている点を、生産者側がかかえる問題点とその問題が起きる理由、問題を解決する取り組みを資料と会話文をふまえて説明する問題でした。
      【大問3】
      大問3は、車の模型を動かす実験を通じて、さまざまな条件下での結果を考察する問題でした。会話文をよく読み論理的に考察する力が問われました。
      問題1は、プロペラとモーターとかん電池を組み合わせた車の模型の重さについて、プロペラを回す前後の重さをそれぞれ計算する問題でした。
      問題2は、モーターの重さやプロペラの長さの組み合わせによって、車の模型の速さがどのように変化するかを実験結果から考察する問題でした。
      問題3は、ほを立てた車に角度を変えて風を当て、車の動きに関して考察する問題でした。

      適性検査Ⅲ

      独自作成問題で、例年通りの大問2題、小問6題の構成でした。
      大問1は算数分野で平面図形、空間図形の問題でした。問題1は四角形の面積を求める問題、問題2は面積が等しくなる時の図形の置き方、折り方についての問題です。問題3は積み重ねられた立方体の見取り図を作図する問題でした。設問どうしのつながりはないものの、設問が進むごとに難度が上がっていく構成になっており、特に問題3については、積まれている立方体を空間的に把握する力が求められる難問だったと言えるでしょう。問題1・2をきちんと得点することが重要となる問題構成でした。
      大問2は理科分野でヒキガエルを題材に「観察し、仮説をたて、調査する」問題でした。問題1は調査結果のグラフを読み取る問題、問題2は観察結果を元に仮説が正しくないと判断する理由を答える問題です。問題3は仮説を実証するためにどのような調査をする必要があるかを答える問題でした。最近の武蔵高附属中の出題と比較すると、身近な題材が使用されており、非常に読み取りやすい文章となっていました。また、観察結果をもとに複数の仮説をたて、その中から正しいものを調査するという一貫性のあるテーマとなっていました。求められている内容を把握するのに時間がかかる問題ではないため、資料から必要な情報をきちんと発見し、考えを筋道立てて説明することができれば得点できる問題でした。

  • 2019年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章1 かこさとし[談] 林公代[聞き手]「科学の本のつくりかた」 による
      文章2 かこさとし「地球」解説 による

      出題形式:例年通り2つの文章を読む問題形式です。問題1・2が読解問題、問題3が文章をふまえて400字以上~440字以内の作文問題です。
      問題1は本を読んで「面白さ」に触れると子どもはどうなるかを問う問題です。文章1に傍線が引かれますが、該当箇所を文章2から探しぬき出すという「文章を横断する問題」であることに注意する必要がありますが、解答の箇所は比較的容易に見つけられる問題です。
      問題2は「かこさんはどのような態度で本を書いているのか」を答える問題です。こちらも文章を横断して該当箇所を探し、ぬき出す問題でした。どのような内容を探すべきか、文章2の内容からある程度考えた上で文章1を読み返すという手順を踏めば難しくない問題です。
      昨年度同様、読解問題は比較的平易なものでした。
      作文は、文章1と文章2を読んだあとの「ひかるさん」と「友だち」のやりとりを読み、ひかるさんがその後示したと思われる考えを書くという形式でした。この形式に驚いた受検生も多かったかと思われます。ただ、結局のところ文章1と文章2の内容をふまえると書くべき内容がほとんど一通りに決まるタイプの作文でした。したがって形式は変わったものの、内容的には昨年度同様だと言えるでしょう。とにかく文章の流れに合わせて作文を書く練習をしてきた受検生にとっては取り組みやすいものだったはずです。

      適性検査Ⅱ

      大問1は、会話文中のさまざまな条件を読み取り、作業する問題でした。
      問題1は、1枚の紙を折ってしおりを作成する際、紙を折る前後で各ページの位置と各ページに書かれる文字の種類と向きを問う問題でした。
      問題2は8×8のマス目に模様を書いた際、模様の表現の仕方についての約束を読み取り、条件に当てはめる問題でした。
      問題3は、立方体にかかれたマス目の上を、すごろくのようにおもちゃを動かす手順を考える問題でした。各小問の難易度は高くありませんが、それぞれの小問の問題文が長く、条件を速く正確に読み取った上で、丁寧に作業する処理能力を問われた問題でした。

      大問2は「じゅんかん型社会」をテーマにした問題でした。リサイクル・ごみの減量について図と会話文をもとにして分析し、記述する問題です。
      問題1はグラフを読み取る文章が示され、その空欄数値を入れる問題です。
      問題2の(1)は会話文を読んで、グラフに表された数値をペットボトル・スチール缶・アルミ缶に判別する問題でした。
      (2)は会話文から紙パックの回収率が低い理由を記述する問題です。
      問題3は会話文と図からごみの総はい出量が減少した理由を記述する問題です。
      どの問題も会話文を丹念に読み、グラフと照合する必要があります。

      大問3は「紙の性質」についての問題でした。
      問題1が「和紙とその他の紙の吸った水の重さを比較」をする問題で、昨年度と同様に単量当たりの数字を求めて比較します。
      問題2は「紙のせんいの向き」を実験結果から推察する問題です。実験結果をどのように判断すれば良いか会話文で説明されていました。
      問題3は「のりを作成する最適な水の重さ」について考察する問題です。すでに行った実験の結果から、次に行う実験の結果の仮定を考えて、目的とする水の重さを考察します。いずれも実験結果を読み取る力を必要とする問題でした。

      適性検査Ⅲ

      例年通り、武蔵高附属中独自作成の大問2題構成でした。
      大問1は「図形の切断」を題材にした問題で、問題1の正方形を直線で分割する問題から、問題2の折った正方形を切断し広げたときの形を考える問題、問題3の立方体の切断を通して三角柱の切断へと発展していく問題でした。武蔵高附属中の問題としては珍しく、どこかで見たことがある、だれもが一度はやったことがある問題でした。とはいえ、ルールを正しく理解する必要があることに加え、実際に手を動かし作業を通して規則を見つけなければならないなど、武蔵高附属中らしいアレンジがされていました。作業に時間がかかったとしても全問正解したい問題でした。
      大問2は「クロマトグラフィー」を題材にした問題でした。〔問題1〕は実験方法と結果を答える問題でした。〔問題2〕は実験結果を予想し、計算過程を説明する問題でした。〔問題3〕は実験方法を考え、手順と結果を説明する問題でした。ほとんどの受検生にとって初めて見る問題だったと思われます。いずれの問題も会話中の説明を読み取る力と科学的考察力が求められた武蔵高附属中らしい問題でした。慌てずにしっかりと会話を読み理解を深め、その上で課題をどれだけ落ち着いて考えられたかで点数が分かれる問題だと思われます。

  • 2018年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章1 串田孫一「考えることについて」による
      文章2 出口治明「人生を面白くする 本物の教養」による

      出題形式:例年通り、2つの文章を読む問題形式です。問題3までありますが、問題1が(1)・(2)とあるので、文章読解の問題が計3問、最後の1問が作文問題です。
      内容:文章1・文章2ともに、「ものの考え方」について書かれています。
      問題1の(1)は「知ること」の出発点にある気持ち、(2)は、「知ることができた」ときの気持ちを答えるものでした。どちらも解答となる箇所(かしょ)は見つけやすいものでした。問題2は、理由説明問題ですので、因果関係を読み取るだけです。必ず正解したいところです。問題3は、例年と同様の400字以上440字以内の作文で、テーマも「これから学校生活や日常生活の中で、何を大事にし、どのように行動していくか」という頻出のものでしたので、取り組みやすかったことでしょう。

      適性検査Ⅱ

      大問1はさいころを扱った問題でした。受検生にとってはなじみ深い題材です。
      問題1は展開図を書く問題で、実際にさいころの面のスケッチを描くものです。問題2はさいころの目を使って式を立てる問題でしたが、ルールに従うことができれば答えることは簡単です。問題3は鏡に映したさいころについて考える問題です。6の目以外が4個ずつ映ることに気が付けば正解にたどり着ける問題です。
      大問2は「橋」をテーマにした問題でした。
      東京の日本橋周辺の江戸時代から現在にいたるようすについて、図・表、会話文をもとにして分析し、記述する問題です。問題1は橋の役割などまとめた表の穴埋め問題、問題2は江戸時代の店の種類などの割合を求める問題、問題3は地図と年表を使って日本橋周辺の町ようすの変化を記述する問題でした。記述問題は、会話文と計算した割合、地図と年表を関連づける必要がありました。
      大問3は「花粉や黄砂の測定結果」について考察する問題です。
      問題1が「花粉を顕微鏡で観察し、花粉の数を求める」問題で、単位量当たりの計算を必要とします。問題2は黄砂を観測する装置の仕組みの説明から、計測結果を考察する問題です。初めて知る観測装置なので、会話文や図を読み仕組みを理解する力が必要です。問題3は「日本で黄砂が観測される原因と気象状況の関連」について考察し記述する問題です。身近な話題ですが、問題文や資料から観測の方法や分析の仕方を読み取る力が必要な問題でした。

      適性検査Ⅲ

      例年通り、武蔵高附属中独自作成の大問2題構成でした。
      大問1は「来場門の作成」を題材にした問題でした。
      問題1はストレートな算数の面積計算の問題、問題2もストレートな体積を指定された直方体の展開図を描く問題で、たいへん平易なものでした。問題3はルールに基づき規則性を探す問題で、時間が多めにかかるでしょうが解答作成に迷う問題ではありませんでした。
      大問2はシカの食害から食物連鎖、個体数のバランスへとつながっていく問題でした。問題1はグラフの読み取りで平易なものでした。問題2は調査方法の工夫を考える問題で、解答を作成しにくい問題でした。問題3は食物連鎖の図をもとに、ある条件下でコヨーテの数が減らない理由を考える問題で、やはり解答を作成しにくい問題でした。
      大問2の問題2・3をじっくり考える時間を作れたかどうかが明暗を分けるのではないでしょうか。

  • 2017年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章1 木皿泉「木皿食堂2 6粒と半分のお米」による
      文章2 武田双雲「伝わる技術」による

      出題形式:例年と同じく2つの文章を読む問題形式です。問題3まであり、文章読解の問題が2問、最後の1問が作文問題です。
      内容:問題3の問題文にも書かれているように、文章1・文章2ともに、「自由」についての考え方について書かれています。問題1、2は、どちらも「具体例を一つ、本文中から探して書きなさい」というものでした。2題とも具体例を探すという問題になったのは、これが初めてです。どちらも解答となる箇所(かしょ)は見つけやすく、とくに問題2は、「何のためにそうするのかがはっきり分かるように」という指示まで出されていますので、必ず正解したいところです。問題3は例年と同様の400字以上440字以内の作文で、テーマも特別なものではないので、取り組みやすかったことでしょう。

      適性検査Ⅱ

      大問3つの構成でした。大問1は「図形」がテーマで、立体の見方・対称性・規則性を見つける問題です。簡単な例を具体的に書き出して、作業をする中で解答を導き出していけるとよいでしょう。特に問題1は必ず得点したいところですが、同じ大きさの正三角形を答えるというようなミスは禁物です。問題2は、Aグループの枚数が(3の倍数+1)、Bグループが(3の倍数)になっていることに注目し、その差の1は3本の対角線の交点がある「き」の三角形であることに気が付ければスピーディーに解答にたどりつけます。問題3は問題文の誘導に従って規則性を検証する問題です。
      大問2は「食」をテーマにした問題でした。図や表だけでなく、会話をもとにして分析をするという毎年恒例の形式が中心でしたが、割合を計算する問題が小問で出たり、記述の際の条件が少なくなったりと、例年とはやや異なる部分も見られました。書くべき分量も多いので、他の大問に差し支えない時間で解き終えたかがポイントでした。
      大問3は「時間を計ることを題材にした理科実験」を考察する問題です。問題1が「太陽、ふり子、ろうそく」のいずれかの法則から時間が計れる理由を記述する問題で、教科書範囲の知識が必要とされました。問題2は実験結果を考察し、比例の関係を導く問題でした。問題3は対照実験について考察する問題でした。いずれも、決して目新しいものではなく、あわてずに考えれば正解にたどり着ける問題です。

      適性検査Ⅲ

      武蔵高附属中独自作成の問題で大問2つの構成でした。大問1は「3目並べ」を題材にした問題でした。通常の3目並べでルールを確認した後、立体化して空間把握力をみる問題に発展していきます。説明をする問題は初めての空所補充になり、昨年度に比べて解きやすくなりました。
      大問2は「塩の作り方」を題材にした、会話の読解が正解への鍵となる武蔵高附属中らしい問題でした。大問1同様、昨年度より解きやすく感じた受検生が多くいたことでしょう。
      総じて、今年度も適性検査Ⅲは高得点が必要と推測されます。

  • 2016年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章1 菊田まりこ「本は心の友だち」による
      文章2 茂木健一郎「ある時脳ははばたく」による
      出題形式:例年と同じく2つの文章を読む問題形式です。問題3まであり、文章読解の問題が2問、最後の1問が作文問題です。
      内容:文章A・文章Bともに、読書をすることのメリットが書かれています。どちらも読書をするべきだという立場で書かれているので、問題3の作文テーマ「読書が与えてくれるもの」につながる文章でした。内容としては、どちらも平易な文章でした。問題1、2は読解問題です。問題1は、解答の仕方に指定が多くあるので、書きやすいはずです。問題2も筆者の考えを読み取る問題なので、正解したいところです。問題3は例年と同様の400字以上440字以内の作文で、テーマも頻出のものなので、取り組みやすかったことでしょう。

      適性検査Ⅱ

      大問3つの構成でした。大問1は「渋滞」を題材にした作業中心の問題で、ルールと条件に従い作業を行えば平易に解答を導き出すことができました。必ず得点しなければならない問題です。
      大問2は「光」に関する問題でした。光による悪影響を考える問題、グラフを適切に比較して読み取る問題、割合の計算を正確にする問題で、比較的解きやすい問題でした。
      大問3は「アゲハチョウの幼虫のからだのしくみと蛹化する環境についての実験」を考察するものです。資料から幼虫の体のしくみを考える問題が1問、実験結果から結論を導き説明する問題が2問の、小問3題で構成されています。

      適性検査Ⅲ

      武蔵高附属中独自作成の問題で大問2つの構成でした。大問1は「ルールに従い、正方形と立方体の展開図において、経路を作成する」問題でした。作業重視の問題であり、例年に比べ平易でした。 大問2は武蔵高附属中定番といってもよい、身近な現象を題材にした問題でした。今年のテーマは「水と氷」でした。問題は大問1と同様に平易なものだったので、問題3を充分な時間をかけて書き切れたかどうかが合否に影響するのではないでしょうか。今年度の適性検査Ⅲは高得点が必要と推測されます。

  • 2015年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章1 木下 是雄「理科系の作文技術」より
      文章2 養老 孟司「メッセージのメッセージ」より
      出題形式について:小石川中・武蔵中・富士中・大泉中の共通問題は、公開されたサンプル問題(小石川中・武蔵中の過去問題)とほぼ同様の形式で、「メッセージ」について書くものでした。大きな形式上の変更はありませんが、総計の文字数は最大500字以下と、心もち少なくなっています。
      内容について:文章1・文章2に共通するのは「コミュニケーション」、「人間同士の伝達」です。問題1・問題2は部分要約の問題で、問いのキーワードから内容をしぼっていけますが、どの言葉を利用し、どこを削るか、つきつめて考える必要があります。問題3の課題「人が何かを伝えあうときには、どのようなことが重要か」というテーマはこれまでの都立中でもよく出題されてきたものです。

      適性検査Ⅱ

      大問3つの構成でした。大問1は「うるう年」を題材にした計算中心の問題でした。うるう年の計算法がきちんと説明されていたので、受検生は得点しやすかったはずです。
      大問2は「水車を題材にした、資料の読み取りと割合の計算」の問題でした。武蔵中の独自作成問題で、従来の傾向を踏襲した出題でした。どの小問も条件が複数ついているので、正答率は低いと予想します。
      大問3は「発泡スチロールでできた立体を水中に沈め浮力により水面上へ打ち出す実験」について考察するものです。小問3題で構成されています。

      適性検査Ⅲ

      武蔵中独自作成の問題で大問2つの構成でした。出題傾向は従来通りで、大問1は「図形と規則性」に関する問題でした。図を描く、いろいろな規則を試してみるといった、作業を通して考察を深めていく問題でした。作業のスピードが求められ難易度が高い問題でした。
      大問2は「飛ぶ」をテーマに、資料を読み取り科学的考察を行う問題でした。問題1と3は比較的解きやすい問題でしたが、問題2が難問でした。問題選択が合格への重要な要素となりました。

  • 2014年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章A 保坂 弘司「玉勝間・花月草紙ほか」 口語訳は、菅野 雅雄「近世散文集評論 玉勝間」より
      文章B 加藤 秀俊「独学のすすめ」より
      課題文2本のうち、文章Aが昨年同様に口語訳付きの古文でした。昨年と比較すると、口語訳は理解しやすいものでした。文章A、Bとも論旨が明確で筆者の主張はつかみやすかったことでしょう。今年も正確な要約力と論述力が決め手となります。口語訳が理解しやすいものになったことから、昨年より易化したことは間違いありません。

      適性検査Ⅱ

      例年通りの大問2題、小問9題の構成でした。大問1は「風向きと地形」を題材にした問題、大問2は「木の年輪と大陸の氷床」を題材にした問題でした。いずれも、設問の最初に会話文が与えられていて、出題されている題材に対しての理解を深めてから複数の資料が与えられるものでした。出題内容については、例年出題されている資料の分析や割合の計算のほかに、風向きを考える問題や木の年輪から年代を推測する問題、氷床から気温の変動を考える問題など、理科系の問題の割合が昨年よりも高くなりました。とはいえ、これらの問題は理科の知識を要求しているのではなく、あくまでも提示された資料を適切に読み取り活用する力をみるという点で、例年通りの出題傾向と言えるでしょう。今後も、理科系、社会系の問題どちらであっても文章や資料から課題に対する手がかりを見つけて分析し考察し、結果をまとめる力が必須でしょう。
      難易度は昨年度とほぼ同じと推定されます。少なくとも小問9題中5題の正解は必要でしょう。

      適性検査Ⅲ

      大問数は2題、小問数は7題と、問題のボリュームは例年通りですが、構成に変化が出ています。今まで算数系1題・理科系1題の構成だったものが、今年度は大問1・2とも算数系が中心となり、理科系は実験方法を考察する小問が1題だけに変わりました。出題内容も対称図形に関するものが3題と、やや偏りを感じさせる構成でした。
      とはいえ、図を描く・変化を調べるなどの「作業を通して解答を見つけていく」といった傾向には変化がなく、より解答を作りやすいものや数値を選択する考察力が求められた点も例年通りでした。
      それぞれの問題の難易度ですが、条件設定が昨年より平易になり、質問の意図も昨年以上に読み取りやすくなっているので、昨年より易しくなりました。7題中5題の正解は必要でしょう。

      ボーダーライン

      適性Iが前年に比べて易化、適性IIが変わらず、適性IIIが易化により、総合点でのボーダーラインは75%前後となるでしょう。

  • 2013年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      出典:
      文章A 兼好法師「徒然草」 口語訳は峯村文人・齋藤義光「徒然草研究」より
      文章B 森博嗣「自分探しと楽しさについて」より
      課題文2本のうちの文章Aが口語訳付きの古文(兼好法師の「徒然草」)でした。口語訳とはいえ言い回しが現代文風ではなく、文意の読み取りに苦労した受検生が多くいたと考えられます。とはいえ、テーマはコミュニケーションなので、作文そのものは書きやすかったはずです。したがって、文章Aに関する問題1の2題ができたかどうか、古文に驚いてあきらめたりせず粘り強く読解に取り組む精神力が合否を分けてしまう感があります。

      適性検査Ⅱ

      例年通りの大問2題構成でした。大問1は「よさこい祭り」に範を取った「よさこいソーラン祭り」「大江戸舞祭り」を題材にした問題、大問2は「トキ」を題材にした問題でした。いずれも、課題に対する手がかりを見つける読解力・分析力、複数の資料・分析結果をまとめる考察力を問う問題でした。
      計算問題をはじめ、何が問われ、どのように答えればよいかが分かりやすい問題がほとんどで、昨年より易化したと言えるでしょう。
      小問9題中6題は正解する必要があったでしょう。

      適性検査Ⅲ

      大問数は例年通り2題で、条件を満たす解答を作業を通して探していく問題が増え、昨年以上に読解力と計算力、作業力といった即応力が求められる問題でした。また、自分で適切な数値を決め、それについて説明・作業する問題が2題出題され、どのような数値が説明しやすいか考察力が問われました。
      全体的に昨年度より条件が単純化され解きやすくなっているので、6割程の得点が必要と思われます。

      ボーダーライン予想

      適性Iが難化、適性II・IIIが易化したことで、55~60点がボーダーラインになると予想されます。

  • 2012年度 適性検査分析
    • 適性検査Ⅰ

      本文の文章量(総計)は、約2300字。2011年は約2100字、2010年が約2500字ですから、ほぼ平均的な文字数と言えます。長文が二つ出される形式は初年度から変わりなく、「二つの文章」の関連について問うものです。この形式は都立では武蔵高附属中と小石川中が行っています。
      2011年度は「要旨が対立する二文」を読解し、どちらかの意見を選んで書く形式が出題されました。2012年度は「要旨の似ている二文」を読解し、その共通点を主題として意見を書く形式が出題されました。どちらも、作文の課題を自分の読解力で理解し、立場・意見を出すための基盤を設定することが大切です。
      武蔵高附属中受検のために必要なポイントは、要約記述力と作文力を充実させるということです。多くの記述問題、作文をこなし、その都度添削を受けて書く力を伸ばしていきましょう。

      適性検査Ⅱ

      2011年度同様、大問2題・小問8題の出題で、大問1は貝塚を題材にした問題、大問2はオゾンホールを題材にした問題でした。
      開校以来、年を追うごとに文系(社会系)、理系(理科系)の区別がつきにくくなってきた適性検査Ⅱですが、2012年度は完全にといっていいほど区別が無くなったといえます。問題文中の解説・表・グラフなどの資料の読み取りと分析、そして課題に対する考察力を見ていると予測されます。今後もこの傾向は続くと思われるので、各種統計資料の読み取り・分析の練習を十分積んでおくことが不可欠です。
      特に人口問題、ごみ・環境問題、食料問題、エネルギー問題など統計資料の読み取りが必須である単元は、それらが問題視されてきた原因・現状などを基本的知識として身につけておきましょう。

      適性検査Ⅲ

      2011年度と同様に大問2題・小問6題の構成でした。運動会を題材にした問題と、「量る」をテーマにした問題で、どちらも数理的な思考力、分析力が求められています。
      また、これまでの出題と比べて、私立中入試における算数・理科の「ある単元を知っていると有利になる」という問題を、意図して排除したのではと思われる出題でした。適性検査Ⅱの出題内容と合わせて考えると、適性検査Ⅲでは出題の方針通り、科学的・数理的分析力、総合的考察力を知識に影響されない問題でみていこうという方針が固まったのではないかと思われます。 したがって、今後も今年度のような、単元を特定しにくい出題が続くと予想されます。