inter-edu’s eye
間もなく100周年を迎える、歴史と伝統ある自由学園。幼児生活団(幼稚園)から初等部、女子部(中等科・高等科)、男子部(中等科、高等科)、最高学部(大学)までの少人数制一貫教育を行う同学園では、どんな教育が行われているのでしょうか。今年4月に就任された、高橋和也新学園長にお話しをうかがいました。
「人間の土台を創る」自由学園の教育とは
「自労自治」を身につけ、仲間と一緒に「自由」を学ぶ
インターエデュ(以下、エデュ):自由学園はどんな学園ですか? ぜひ、高橋学園長のお言葉で、具体的な学園イメージを教えてください。
高橋学園長:本学園は、その名のとおり「自由を学ぶ園」です。
まず、「自由」とは、誰もが命とともに与えられているもの。その自由をどう使うかは、個々にまかされています。しかしながら、そのことに気づかない人は、自分でその使い方を考えることなく、周囲に流されてしまいます。生徒たちには、自由を使って何がしたいか、自由を使うには何を身につければいいか、自分で考えられる人になってもらいたい。そう思うのです。
それに、本当の幸せは、「競争」ではなく、「協力」から得られます。先日、本学園を卒業した社会人複数名を取材した記者から話を聞く機会がありました。
「自由学園の卒業生は、総じて自分のことだけでなく、チーム全体にとって何が良いかを一番に考える人ばかりだ」という内容でしたが、社会を少しでも良くするために何ができるのかを学ぶ自由学園の卒業生らしいエピソードだと思いました。
エデュ:自由学園で実践されている教育の特徴を教えてください。
高橋学園長:自分たちのことは自分たちで行う「自労自治」を通しての教育を行っています。また、それを学園全体で、段階的に展開しているのが特徴です。例えば、幼児生活団には“自分”の身のまわりのこと、初等部6年生には下級生を含む“自分たち”のこと、というように「自労自治」の「自」の範囲を少しずつ広げていきます。中高では、その範囲を学外にまで拡大し、福祉作業所や障害者施設、被災地訪問など、さまざまな体験から学ぶ「心優しきリーダー」を目指します。
また、本学園は、「責任が人を育てる」という考え方をもっています。生徒たちは、学年が上がるごとに責任感を高め、自治の精神をより強めていくのです。
例えば、寮内では、問題が生じると、室長や寮長をはじめとした上級生たちが下級生たちを集め、解決策を話し合います。学園という“社会”のなかで、生徒たち同士が“家族”のような関係を築いていくのです。
人生の財産となる経験を積み、未来の可能性を広げる
エデュ:学習面における特色は何ですか。
高橋学園長:「人間の土台」をつくることを理念としたカリキュラムを展開して、基礎をしっかり固めること、総合的な力を身につけることを目指しています。そのため、高等科においてもコース選択制を導入していません。全生徒が同じ内容を学んでいくのです。
例年行われる「学業報告会」も特色ある学びの一つです。授業で学んできたことを土台に、さまざまなテーマ(男子部は生徒が設定したテーマ、女子部は共通テーマ)でグループごとに探究し、プレゼンテーションを行います。教科の垣根を越えた、総合的な学びの機会となっています。
エデュ:最後に、自由学園が大切にしていることを教えてください。
高橋学園長:「本学園は、今回お話ししたような特色あるカリキュラムや寮生活のほか、登山や稲作・植林の体験など、独自性のある取り組みを行っています。そのため、「個性を伸ばす教育」に力を入れていると思われがちです。それはもちろん間違ってはいませんが、実際はそれ以上に、「可能性を広げる教育」を大切にしています。
ここで行われているさまざまな取り組みは、生徒が自分で好きな道だけを選択していたら、選ばない“扉”かもしれません。その“扉”を開けさせることで、生徒の可能性が広がるのです。そして、その“扉”の先で得た経験は、生徒の人生に役立つ大切な知恵となります。さらに、ここで出会った仲間たちともまた、ともに“扉”を開いた一生の友としてつながり続けるでしょう。
注目の学校行事・学校説明会
日時 | 内容 | 区分 |
---|---|---|
10月8日(土) 10:00~ |
体操会 自由学園の幼児生活団から最高学部までの全校生徒が日頃行っているデンマーク体操を中心に演技発表いたします。 |
合同 |
10月22日(土) 10:00~12:00 13:30~15:30 |
学校説明会 入試対策勉強会(小6中3対象) 女子部の勉強と生活の様子を生徒・教師より説明します。校内見学(寮を含む)、授業参観や昼食への参加が可能です。 |
女子部 |
10月22日(土) 12:00~14:40 |
学校説明会 教科教育について詳しく触れられる予定です。 |
男子部 |
11月19日(土) 11月20日(日) |
美術工芸展 4年に一度、幼児生活団から最高学部までの全校の美術工芸作品を展示発表します。 |
合同 |
編集部から見たポイント
高橋学園長ご自身も、自由学園男子部の卒業生だそうです。卒業後も同学園で築いた「人間の土台」が役立っていること、「自由学園の卒業生」という絆でつながった仲間が世界中にいることを実感しているそうです。
次回は、その男子部についての詳細を公開しますのでお楽しみに!