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中学から大学まで10年間を通して、美術を学ぶことのできる女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美中高)では、入学してからの中高6年間、生徒たちはどのような学校生活を送るのでしょうか。また、女子美中高での経験が大学でどのように活かされるのでしょうか。今回は、女子美術大学に通う卒業生からコメントをいただきました。

K.Oさん 美術学科(洋画専攻版画コース)、女子美中高で写真部と科学同好会に所属
M.Hさん アート・デザイン表現学科(ファッションテキスタイル表現領域)、女子美中高で洋舞部に所属
N.Nさん デザイン・工芸学科(工芸専攻)、女子美中高で剣道部に所属
M.Oさん デザイン・工芸学科(プロダクトデザイン専攻)、女子美中高で洋舞部に所属

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女子美中高で過ごしたキラキラした毎日

インターエデュ(以下、エデュ):女子美中高在学当時のクラブ活動についての思い出を教えてください。

K.Oさん:写真部では部長を務め、イベントをはじめ日々のクラブ活動に力を入れていました。中学生の後輩が多く、薬品を使う暗室で注意しながら作業していたことが思い出に残っています。

M.Hさん:中1時はファッションアート部に入っていました。中2時には友達に誘われ、洋舞部に入部しました。当時のたくさんの体験が、今の私にとって大きな財産となっています。

エデュ:運動会や女子美祭の思い出はありますか。

K.Oさん:高校最後の運動会では着付けリレーに参加しました。(着付けリレーに関するレポートはこちら)卵から幼虫、最後には蝶に変身する一番の見せ場となる蝶の羽が完成した時には、みんなにも「すごい!」と言われ、頑張って良かったと思いました。本番では最優秀賞をいただき、感動してみんなで泣いた覚えがあります。

N.Nさん:高3で初めて女子美祭のクラス展示に参加することができ、会計の仕事をしました。準備期間中、クラス全員で一つのものを作り上げることが特に楽しかったですね。

女子美生のパワーを感じる運動会

さいたまスーパーアリーナを舞台に、高校生のレベルを超えた応援合戦が繰り広げられる運動会。女子美ならではのパワーをひしひしと感じられます。

わたしが進路を決めた理由

エデュ:高校でのコースはどのようにして決めたのでしょうか。

K.Oさん:絵具を重ねて表現をする油彩の技法が自分の気質に合っていると思い、絵画コースを選択しました。

M.Hさん:それまで自分が楽しいと思えた課題を振り返ってみて、デザインコースに決めました。

M.Oさん:絵を描くよりも作るほうが好きだったのでデザインコースを選びました。大学でもデザイン系を学びたいという思いもありました。

N.Nさん:画力を上げたい気持ちがあったので、絵画コースを選択しました。

日頃の集大成となる女子美祭

日頃の美術教育の集大成となる女子美祭では、高校生のデザイン力の高さに思わず感嘆。運動会と同様に、一見の価値があります。

エデュ:大学進学時の学部や専攻を決める際には、先生やご両親に相談はしましたか。

M.Hさん:ファッションテキスタイル領域と工芸のどちらを選ぶべきかを、先生に相談しました。

N.Nさん:工芸専攻に行くことは決めていたので相談する機会はなかったのですが、女子美中高と大学の分野の違いについては先生方のお話を大いに参考にさせてもらいました。

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今だからわかる女子美中高での貴重な経験

エデュ:女子美中高での学びが活かされていると実感することはありますか。

K.Oさん:ほかの高校から進学して来た人たちに比べ、触れたことのある画材や、経験した技法の数が圧倒的に多く、自分の表現に合った方法が見つけやすかったと思います。また、中学の頃から提出期限について厳しく指導をしていただいていたので、制作スケジュールを組み立てることにもすぐに慣れました。

M.Oさん:人として芯が強くなったような気がします。それに、大学でもいろいろなことを要領よくできるようになりました。

N.Nさん:女子美中高で学んだステンシルやデッサン、石膏での型取りなどの技術が、大学でも課題として出た時に活かせました。課題が多くても気後れせずに取り組めています。

エデュ:女子美中高から進学した仲間はどのような存在ですか。

K.Oさん:すべての専攻に女子美中高時代からの友人がいるので、お互いの専攻の違いをよく話し合っています。大学で将来の目標を見つける人が多かったですし、美術の未来を討論することもありました。

N.Nさん:同じ科の仲間とは、常に情報交換や行動をともにしています。異なる科の人たちでも女子美中高出身者同士で関わることは多いですね。

美を追求すること

みんなが協力して美を追求することが、お互いの心の美も磨くことにも繋がります。

美術を活かした就職に向けて

エデュ:大学卒業後の就職先は決まっていますか。

K.Oさん:一人でも多くの子どもたちに、創造の楽しさを通じて“自分を表現する”方法を知ってもらいたいので、教員になりたいと思っています。ただ、社会の仕組みや厳しさを知ってからにしようと考えているので、卒業後は企業向けのweb広告制作会社でデザイナー職に就きます。勉強不足だと思っていたデジタルを勉強していきます。

M.Oさん:コンセプトを大事にした企画やマーケティングなど、商品を作ることが好きなので、仕事としてずっと美術に関わりたいです。

女子美の教育理念

美術を通して日本文化に貢献する有能な女性を育成することが、女子美の教育理念となっています。

M.Hさん:女子美中高の洋舞部で体験した衣装の制作が今の目標に大きく影響しています。作ることも着ることも好きなので、衣装関係の仕事を目指しています。

N.Nさん:大学の工芸科で学んだことを活かせるような仕事に就きたいので、伝統的な手工業系や工房関係を志しています。これからじっくり実現に向けて考えていくつもりです。

エデュ:来年に大学を卒業するK.Oさんはどのような就職活動を行いましたか。

K.Oさん:キャリアセンターを活用した就職活動を行いました。センターの方に相談にのってもらうことで、とても気が楽になりました。相談だけでなく、履歴書・ポートフォリオの添削や面接の練習もしていただき、今振り返ってみても絶対に一人では乗り切れなかったと思います。

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10年一貫で女子美生になるということ

エデュ:女子美生になって良かったと感じることはありますか。

K.Oさん:女子美中高に入学してからは、個性をそのままに「絵が上手くなりたい」という共通のビジョンを持っているみんなと一緒にいるうちに、自分と見つめ合う時間がたくさんできました。内気だった私がいつの間にか写真部の部長を務め、卒業式では先生に「一生忘れないと思う」と言わしめるまでの明るい性格になりました。

M.Hさん:人と周りに流されずに自分が好きなことを見つけることができました。女子美中高に行っていなかったら、絶対に今の自分はないと思っています。

N.Nさん:個性的な仲間が多いので、どんな趣味や嗜好でも共感してくれる人や分かろうとしてくれる人が、必ず1人はいて、自分を偽らないで過ごすことができました。

女子美中高の6年間はかけがえのない時間

皆さんが口を揃えて言うのは、「女子美中高の6年間はかけがえのない時間だった」という母校への愛ある言葉でした。

エデュ:中高時代を過ごした母校に対して今、どのような想いを感じていますか。

K.Oさん:女子だけの美大付属校は女子美中高しかありません。作品にも女子美中高独自のカラーがあるので、唯一無二な特色を発信し続けてほしいです。

M.Oさん:常に遊びにいきたくなる、女子美中高の時に戻りたくなるくらい、とっても濃い6年間でした。先生も親しみやすく、学校全体の雰囲気が大好きです。

M.Hさん:楽しいことも辛いことも経験できた場所で、一つひとつの思い出が素晴らしく、手放しで自慢できる学校です。現役の女子美中高生をみて羨ましく思うほどです。

エデュ:最後に女子美中高を目指す受験生へメッセージをお願いします。

M.Oさん:女子美では一生の友達ができ、強い意志、粘り強さのある人になれます。女子美中高の時が人生の最高潮といってもいいくらい楽しかったので、皆さんにも味わってほしいです。

N.Nさん:女子美中高では行事に積極的に全力で取り組むことが1番大切で、必ず楽しかったと思えるはずです。自分のやりたいこと、好きなことに出会えると思います。

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編集者から見たポイント

卒業しても、心の片隅にはいつも女子美中高時代の思い出があるという4人からは、母校愛がひしひしと伝わってきました。女子美中高でしか経験できないことが数多くあり、現在の大学生活に役立っているようです。美術を共通点にして友だちと過ごす中高6年間は、これから入学してくる皆さんにとっても、きっと濃密な時間になることでしょう。4人の言葉がそれを証明しています。

連載第6回「女子美祭のクラス展示」 ≫