inter-edu’s eye

女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美)の文化祭「女子美祭」が10月末に開催されました。女子美祭でお披露目されるクラス展示は、鏡友会(生徒会)の審査を通ったものに限られます。連載6回目となる今回は、女子美祭本番までの生徒の奮闘と、展示作品をご紹介する女子美祭レポートです。

必見!生徒作品ギャラリー ≫

企画書とプレゼンで表現の場をつかみ取る

鏡友会が安全性と企画内容を審査

クラス展示に向けた審査とは、どんなものなのでしょうか。鏡友会のY.Sさんにうかがいました。

Y.Sさん:出展の審査は2回行われます。まずは各クラスから提出された企画書を鏡友会がチェックします。高校15・中学12の全27クラスから書類審査で約半分まで絞り、選ばれたクラスが面接でプレゼンテーションをします。学年は関係なく、内容が良ければ中学1年でも審査をパスします。

企画書やプレゼンからは、企画内容や安全面をチェックします。企画内容がゲームの場合は、教室を細かく仕切った空間に生徒が2人常駐するシステムになっているか、そこに来場者が加わってゲームをするだけの空間の余裕があるかを確認します。
安全面で言えば、教室を仕切る壁の強度に問題はないか、さらに、内装で来場者の衣類を汚すことがないかという項目まで確認し、展示できるクラスを決定します。

クラス展示に向けた審査

クラス展示だけでなく、外階段やエントランスの装飾にも審査が必要となります。今年は、15クラスが展示や装飾に参加しました。

世界観から創り上げるクラス展示

各クラスには、女子美祭の責任者が2人います。来場者がゲームに挑戦するクラス展示「菊丸大百貨(化)店」(高1)の責任者であるM.Kさんは、企画書作りについてこう語ります。

M.Kさん:企画書は、責任者だけでなくクラスのみんなで考えて作ります。「菊丸大百貨(化)店」は、舞台を“古くからある昭和レトロな百貨店”とし、女子美祭がハロウィンシーズンに開催されることから、“来場者はゲームをしながら、百貨店にやってくるいたずらお化けから店を守る”という設定にしました。
企画書には、こうした設定やゲーム内容、景品や内装について記載します。内装はどんなデザインで、何を使い、どのように作るかまで細かく書きました。

クラス展示の責任者として鏡友会の面接に出席したM.Kさん

クラス展示の責任者として鏡友会の面接に出席したM.Kさん(写真右)から、「企画書作り」の秘訣をお聞きしました。

企画内容は女子美生らしく独創性があって面白いこと、そして安全性が守られていることが、審査に通る秘訣だと思います。

文化祭とは「異なる女子美祭」の魅力 ≫

全学年の力作・アイデア作がズラリ

エントランスやギャラリーには生徒の作品が展示され、中高6年間の美術教育をたどることができます。また、部活動での作品も多く展示されました。クラス展示と合わせて、たくさん取材したうちの一部をご紹介します。

  • エコバッグ作り

    中1の夏休み課題となるエコバッグ作り。お菓子などの包装紙を集めて装飾を施します。意外な見せ方に感心!

  • 自画像

    高2の夏休みは自画像を作成。写真と絵の違いがほとんど無いくらい丁寧な描き込み具合に驚きます。

  • 100枚ドローイング

    高3の夏休みは100枚ドローイングに挑戦。テーマも画材も自由ですが、とにかく100枚描くことが大事!

  • サイズが大きい!クジラのオブジェ

    通用スペースに置かれたクジラのオブジェも、かなり手の込んだ作品です。大人の身丈ほどもあるサイズ感にびっくり!

  • 七宝焼体験

    美術部による七宝焼体験。模様の下書きから着彩、焼成までを経て、世界でひとつだけのマイアクセサリーが完成します。

  • 似顔絵シール

    お気に入りの展示に投票すると、鏡友会メンバーの似顔絵カードがもらえます。もちろん女子美生のお手製です。

  • 占いをテーマにしたクラス展示

    高3による占いをテーマにしたクラス展示。どんなに小さなスペースでも、安全のために係員が2名待機しています。

  • カフェスペース

    高2によるアート美術館を模したカフェスペース。驚きの利益度外視な価格設定で、ミルクティーがまさかの10円!?

  • 絵画だけでないデザイン、「公園づくり」

    中3の授業で取り組む「公園づくり」。絵画だけでない美術教育を受けられるのが美大付属校ならではのメリットです。

各クラブも大活躍する女子美祭の展示 ≫

女子美のイベントが大好き!

クラス展示「ぬけだせ標識ライフ」(中2)で責任者を務めたS.Sさんに、学校生活についてうかがいました。

生徒会活動も行っているS.Sさん

鏡友会に在籍し、生徒会活動も行っているS.Sさんは、学校で過ごす毎日が楽しくて仕方がないと話してくれました。

S.Sさん:今年の体育祭では応援団に志願し、女子美祭ではクラス展示の責任者として面接に出席しました。昨年の女子美祭でも展示責任者を務め、中1でクラス展示を実現することができました。こうして活動するのは、学校のイベントがとにかく楽しくて、大好きだから! 生徒は美術が好きという点では似た者同士ですが、みんな個性的で、先生も生徒に負けないくらい個性が強い。だから入学してからずっと、毎日が楽しくて仕方ないんですよ。

楽しい学校生活も一生モノの学びの場 ≫

編集者から見たポイント

企画書を作成してプレゼンを行い、客観的に評価されて初めて、表現の場を与えられる女子美祭のクラス展示。つまり、生徒がしていることは立派なコンペティションなのです。審査の合否に関係なく、生徒が考えて経験すること自体に大きな意義があり、女子美祭は表現の場であるとともに生徒の成長の場でもあると強く感じました。もちろん、女子美祭に限らずさまざまな行事や展示会が開催されます。実際に学校へ足を運んでみて体験することをおすすめします!

連載第1回「可能性を広げる国際教育」 ≫