専門性の高い教員の授業が受けられる「工芸・立体コース」
inter-edu’s eye
高校2年生からコース別授業を行う女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美)。2019年度から「絵画コース」「デザインコース」に加えて、工芸素材の性質や特性を学びながら道具の扱い方を習得する「工芸・立体コース」が新設され、生徒の進路の幅がより広がることが期待されています。今回は工芸・立体コースの授業を受け持つ中村幸喜先生と柗井圭太郎先生、志澤京香先生にインタビューを行い、コースの内容や魅力について、たっぷりお話をうかがいました。
国内外で培った豊富な知識と技術で生徒をサポートする
インターエデュ(以下、エデュ):先生の専門分野や経歴について教えてください。
中村先生:彫金・鋳金を専門としています。学生時代にイタリアとイギリスに留学し、大学院の博士課程を修了して、本校の教員になりました。教員になってからも作品づくりを続けていて、6年前には海外で学術などの調査研究ができる本校の海外研修制度を利用してイタリアのフィレンツェで半年間ジュエリーの彫金技術を学ぶなど、技術の研鑽に努めています。
エデュ:教職に就いたきっかけや理由を教えてください。
中村先生:美術予備校でのアルバイトや大学院博士課程のときのティーチングアシスタントの経験を通して、生徒と一緒に考えながら作品づくりをサポートすることが好きだと気づき、この道を選びました。自分で作品をつくるだけの人生よりも、生徒の作品にたくさん触れたいと思ったのも大きな理由です。
エデュ:生徒を指導する際に心がけていることはありますか。
中村先生:生徒が取り組む課題を、事前に自分でやってみることです。制作工程を確認しておくことで生徒が苦戦しそうなポイントが分かり、道具の使い方が難しい箇所も把握できるので、アドバイスがしやすくなります。さらに、生徒がどの程度のクオリティの作品がつくれるか想像しやすくなりますので、課題における生徒たちのゴールの目安を知ることもできます。
多様な選択肢を提案し、生徒に自信を持たせる
エデュ:先生の専門分野や経歴について教えてください。
柗井先生:漆芸を専門としています。漆芸と聞くとお箸や汁椀を想像すると思いますが、私は漆を使った現代アート作品をつくり、ギャラリーなどで発表しています。
エデュ:教職に就いたきっかけや理由を教えてください。
柗井先生:美大卒業後に様々な学校で講師をしていた際に、他者を指導することにやりがいを感じたことと、指導を通して生徒から気づきを得て自分自身の技術も向上すると実感したことが大きなきっかけでした。女子美生はお互いの作品を素直に褒め合えるところが大きな美徳だと感じます。素晴らしい生徒たちの学びをサポートできることに、日々充実感を得ています。
エデュ:生徒を指導する際に心がけていることはありますか。
柗井先生:美術は答えがなく、完成までの道のりが無限大にあり、時には失敗することもありますが、生徒が頭の中で思い描く「作りたいもの」をなるべく実現させてあげたいと思っています。生徒にアドバイスする際は、「こうするといい」と指示するのではなく、様々な方法を伝えて、生徒自身が選択して作品づくりを進められるようにし、自信を培えるように導いています。
教員になり、お世話になった母校に恩返しを!
エデュ:先生の専門分野や経歴について教えてください。
志澤先生:中高大の10年間を女子美で過ごし、教員になりました。専門は染織で、繊維が糸となり、布となり、立体的な衣類に変化していくおもしろさに魅了されたことがきっかけです。今は女子美で開催される教員展などで作品を発表しています。
エデュ:教職に就いたきっかけや理由を教えてください。
志澤先生:テキスタイルデザイナーとして就職することも考えましたが、教育実習で女子美付属を訪れたときに生徒がとても魅力的で、「彼女たちに教えることができたら自分の毎日も豊かになるだろう」と強く感じて、教員の道を選びました。また、母校への愛情も大きな理由です。自分が生徒だった頃、先生方にたくさんアドバイスをいただき、それが今でも大切な糧となっていますので、私が得たものを後輩たちにより良い形で還元したいと思いました。
エデュ:生徒を指導する際に心がけていることはありますか。
志澤先生:工芸・立体コースでは工芸制作・立体制作・デッサンの3分野に分けてステンドグラスや鋳金、木彫など、約3週間に1回のペースで素材が異なる課題に取り組みます。課題を進める中で生徒が素材に対して苦手意識を持ってしまったときにどう接するかが重要で、「なぜ苦手なのか」「苦手な中で力を発揮するにはどうしたらいいのか」を生徒と丁寧に話し合って、よりよい作品ができるように導いています。
整った環境で作品づくりに没頭し、自己を確立する
エデュ:工芸・立体コースの強みについて教えてください。
中村先生:絵画コースはキャンバスやパレット、絵の具を用いて表現しますが、工芸・立体コースでは課題ごとに道具や素材が変わり、使い方や特性をしっかり理解しないと課題をこなすことができません。ほかのコースよりも未知の世界に触れる機会が多く、作品の制作を通して道具の役割や正しい片付け方、メンテナンスなど幅広い知識を習得できるのが魅力です。最近は環境面の整備も進み、ガラスを研磨する機械や特殊なろくろ、水粘土を練る機械など、プロの工房のような施設が揃い、より深い学びができる環境が整っています。
エデュ:工芸・立体コースで学ぶ生徒の様子はいかがですか。
柗井先生:コツコツ地道な作業ができる生徒が多いです。工芸・立体は作品づくりにかけた時間や手間が出来に比例するので、地道な作業に楽しさを見出し、集中して取り組むことが大切になります。
志澤先生:協力しながら物事を進められる生徒が多い印象です。周囲と連携し、他者を巻き込みながら作品づくりを行っています。こうした力は社会に出てからも役立つと思います。
エデュ:工芸・立体コースで学ぶ生徒への期待を教えてください。
中村先生:多様な道具を使いながら作業工程の順序を考える力を養うことで、物事の段取りを考えられる大人に成長してほしいです。また、工芸・立体コースでは人が使うものを作ることが多いので、ものを使う相手の気持ちに寄り添えるようになってほしいと願っています。
柗井先生:自分らしさを見つけて、表現できるようになってほしいと思っています。そして、大人になったときに「工芸・立体コースで学んだから今の自分がある」と思ってもらえるよう、授業を展開していきたいです。
志澤先生:「こういう作品をつくりたい」という理想と実際の結果がイコールになることは難しいですが、理想を実現するために地道に努力して、諦めない力、試行錯誤する力を身につけてほしいと願っています。興味があることをひたむきに追求して、自分を確立しながら作品をつくり、作品だけではなく、作品の作り手自身も素敵だと思ってもらえるような人に成長してほしいです。
編集者から見たポイント
バラエティ豊かな課題と素晴らしい設備が整っていて、専門性の高い先生方からアドバイスをもらいながら作品づくりができる工芸・立体コース。物作りが好きな生徒にとっては最良の環境であり、高校の時点で大学での学びを先取りしているため、大学進学の際に後悔しない学部選びができると感じました。
イベント日程
イベント名 | 日時 |
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中・高 学校説明会/高校 作品品評会 | 2021年9月11日(土) 11月13日(土) |
運動会(さいたまスーパーアリーナ) | 2021年9月22日(水) |
女子美祭(大学併催) | 2021年10月24日(日) |
連載コンテンツ
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2022年1月25日
運動会