表現力や伝える力を問う独自の“自己表現入試”
inter-edu’s eye
「智の美」「芸(わざ)の美」「心の美」を教育目標に掲げ、自立した女性の育成を目指す女子美術大学付属高等学校・中学校(以下、女子美)では、その教育スタイルを入学試験にも反映し、独自の「自己表現入試」を実施しています。今回はその試験内容や対策について、入試委員長の小島礼備先生に詳しいお話をうかがいました。
事前に予告されるテーマについて考え、言葉にして伝える
インターエデュ(以下、エデュ):2018年度からスタートした「自己表現入試」について、導入した経緯を教えてください。
小島先生:本校では、美術の授業で自分の作品のテーマや作品に込めた想いについて文章を書くなど、学校生活のさまざまな場面で生徒自身が“自己表現”をする機会があります。そのため、生徒たちは「自分の感じたことをどのように表現し、他者に伝えるか」、を日々模索しています。そんな生徒たちのようすを見ていて、通常の学科試験では測ることのできない“表現力”や“伝える力”を持つ子どもたちの入学を期待し、「自己表現入試」を導入することに決めました。長年実施してきた2月1日の2科・4科選択入試、2月3日の2科入試に加えて、2月2日の午後にこの入試を行っています。
第1回 | 第2回 | 第3回 | |
---|---|---|---|
入試種別 | 2科・4科選択入試 105名 |
女子美 自己表現入試 15名程度 |
2科入試 15名程度 |
試験科目 | ・2科(国語・算数) ・4科(国語・算数・社会・理科) いずれかを選択 |
記述・面接 | 2科(国語・算数) |
試験日 | 2021年2月1日午前 | 2021年2月2日午後 | 2021年2月3日午前 |
エデュ:「自己表現入試」はどのような試験なのでしょうか?
小島先生:毎年、事前に今年のテーマを予告し、試験当日に具体的な課題内容を発表します。受験生は課題内容に沿って60分間で自分の考えを記述します。2021年度のテーマはすでに発表されており、「私が考える未来」となっています。学習塾で中学受験のための勉強をしていなくても、創造や表現することが好きなお子さんは力を発揮できる試験ですので、ぜひチャレンジしてみてください。
エデュ:これまで出題された課題内容について、具体的に教えてください。
小島先生:2018年度は女子美に入学したことをイメージして、自分が主人公の物語を創作してもらいました。昨年度の課題は3人の女の子が美術室で作業をしている絵をもとに、登場人物の人間関係を想像して物語を書くことでした。限られた時間の中で1,500字を超える長文を書き上げた受験生もいて、驚かされましたね。
エデュ:解答は記述式ですが、文字数制限はないのですね。
小島先生:ありません。ただ、この試験の採点において重視するのは、文字数よりも表現力や内容です。与えられたテーマをしっかり読み取って、伸び伸びと想像を膨らませ、自分の考えを他者に伝えるために情熱的に創意工夫しているかがポイントになりました。
エデュ:とても女子美らしい試験ですが、受験生はどのような対策をすればよいでしょうか?
小島先生:まず大切なのは、テーマにじっくりと向き合い、自分なりの考えを持っておくことです。2021年度の入試を受ける受験生は、未来の世界がよりよいものになる方法を具体的に考えて、試験に臨んでいただきたいと思います。加えて、普段から本を読み、世の中のさまざまな出来事や現象に興味を持って生活してください。
勉強においては、学校や塾での勉強を大切にし、しっかり勉強して、幅広く知識を集積しておきましょう。さらに、自分の考えを人に伝えられるよう、言葉に起こす練習をして、書くことに慣れておくのも大切です。
時間が経つにつれて存在感を増す「自己表現入試」の合格者たち
エデュ:「自己表現入試」で入学した生徒のようすはいかがですか?
小島先生:本校には強い個性を持った生徒が多くいますが、自己表現入試で入学した生徒たちはとりわけユニークな人材だと感じます。入学当初は目立つ存在ではありませんでしたが、時間が経つにつれて学業で頭角を現したり、良好な人間関係を築いたりと、さまざまな面で力を発揮して輝いています。人の心を動かす素晴らしい文章を書き上げて入学した生徒たちですので、柔軟性があり、コミュニケーション能力も高い印象です。教員として、今後の成長がとても楽しみですね。
エデュ:最後に、受験生にメッセージをお願いします。
小島先生:今年はコロナウイルスの影響で、例年よりも苦労や不安が多いと思いますが、受験勉強においては“めげないこと”が大切です。くじけそうなときは、自分が志望校の制服を着て学校生活を送っているようすを具体的にイメージしてみてください。そうすれば、自分が思い描く学校生活を叶えたい気持ちが膨らみ、勉強に力が入ると思います。
また、志望校について、親御さんはお子さんの気持ちを大切してあげてほしいと思っています。小6で明確にやりたいことや目標をもっているのは素晴らしいことですから、その意思を尊重し、お子さんの背中を押してあげてください。
編集者から見たポイント
教員の心を震わせる文章が多く、受験生の思いを真摯に受け止めるからこそ採点に苦労するという自己表現入試。教科の枠を超えた力を見出された“原石”のような生徒が入学することで、女子美がより個性豊かな学校になるユニークな入試のお話を聞き、ますます期待が広がりました。次回の記事では、10月末に開催された女子美最大の行事・女子美祭のようすを徹底的にレポートします!生徒の作品展示や、部活動や有志クラスによる展示などを写真とともにご紹介します。
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