我が子の自立を妨げているのはパパとママ!? 親と離れたとき発揮する「子どもの力」

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我が子が親と離れた場所で何かをするとき、どのような不安が頭をよぎりますか?
未就学児なら、「泣いてしまう」「親を探して戻ってきてしまう」「周りの子と仲良くできず縮こまってしまう」など、こどもの性格によって心配事はさまざまでしょう。しかし、そうした事態を乗り越えた先に我が子の成長があることを、保護者の方は理解しているはず。背中を押すタイミングを見極めることは難しいものです。
こどもが楽しみ、学び、協働する環境が整ったエデュテインメント施設「キッザニア」では、日々、たくさんの初体験や成功・失敗体験が生まれています。1人でパビリオンに入ることはもちろん、中には保護者と離れて施設を巡り、予約から仕事体験まで済ませる未就学児もいるといいます。そこで、パビリオンでこどもと接するスタッフ「スーパーバイザー」に、未就学児でも安心の環境や、体験を通して感じたこどもの力について聞きました。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム

Akiさん

スーパーバイザー Akiさん

幼稚園教諭として10年間働いた後、キッザニアに就職。入社9年目。スーパーバイザーは経験と知識に応じて5つのステージに分けられる中、Akiさんは最上位のダイヤモンドステージのスタッフとして活躍中。2019年には、全スーパーバイザーの規範・手本となり、スーパーバイザーの代表としてイベントに参加したり、スタッフの研修を行うプレミアスーパーバイザーを経験。

これまでに担当したパビリオン

銀行、デパート、商店街、電子マネーセンター、プリント工房、CMスタジオ、家電専門店、コールセンター、発明工房

予約から参加まで幼稚園児が実践

キッザニアの対象年齢は3歳からですが、親と離れて仕事体験を楽しむ未就学児はたくさんいるのでしょうか。

Akiさんはい。幼稚園の団体がご来場したときは、園児が自分たちで予約や仕事体験をしています。私自身、幼稚園教諭を経てスーパーバイザーになり、施設の素晴らしさを実感したので、元職場の幼稚園に「遠足で来ませんか」と提案しました。その幼稚園は、いまでも毎年来てくれています。

Akiさん

未就学児が安心して仕事体験を楽しめるよう、施設にはどのような仕組みがありますか。

Akiさん案内専門のスタッフがいますし、清掃スタッフも含めて施設内にいるスタッフはお子様のサポートができるよう研修を受けています。また、初めて来た方は体験を受付する「JOBスケジュールカード」の色が違うので、各パビリオンのスーパーバイザーが受付時に未経験者かどうか分かり、プラスアルファのサポートができる仕組みになっています。

未就学児だと泣いてしまったり、反対に周りのこどもを泣かせてしまったりと、親として心配なケースが多いと思われます。そうした事態にはどのように対応されていますか。

Akiさん知らない人の集まる場所に飛び込むことは、勇気がいりますよね。不安で泣きそうなお子様がいたら、たとえば銀行のパビリオンなら「こんばんは、銀行員のAkiです」と自己紹介をして“私は仲間だよ!”とアピールし、仕事体験の前に安心感を与えるようにします。親元からなかなか離れられないお子様がいたら、本来なら銀行のパビリオンで行う業務のいくつかを保護者の方のそばで体験してもらい、「お財布を中で準備しています。私と一緒に銀行に来てくれますか?」などと、段階を追って親子の距離を置き、一人で仕事体験ができるまで寄り添います。
一方、元気があり余るお子様には、仕事に興味を向けるように努めますね。私たちが第一に考えるのはお子様の安全です。そこが問題ないと判断できたら、活発なお子様であろうとできるだけ自主性を尊重したいと思っています。

こどもの体験が親の意識を変える

未就学児の体験で、印象に残っているものはありますか。

Akiさん「発明工房」に来てくれた男の子との出会いは忘れられません。
発明工房の仕事内容は、飛行機の形を選び、組み立てて飛ばすこと。どうやったらより遠くにまっすぐ飛ぶのか考えて、パーツを選んで機体や羽の形を動かしながら実験を重ねます。
そんな発明工房に、ある日、未就学児の兄妹がやってきました。キッザニアに入場して2時間が経っており、体験の履歴が分かるJOBスケジュールカードを見ると、5歳のお兄ちゃんは参加しても全て途中でキャンセルしていたことが分かりました。
その後、飛行機を作るところまでは順調でしたが、飛ばしてみるとうまくいかず、お兄ちゃんはお母様のところへ戻ってしまったんです。そこで「まずは私の手を飛び越えられるか試してみよう」と、目標設定を変えてみました。少しずつ、私が遠くに離れるごとに、手を超えて遠くに飛ぶようになりました。「できた!」と喜んだお兄ちゃんは、実験を続けることができました。30分間の仕事体験が終わるころには、腕を横に広げて自分が飛行機になり、実験場を走り回っていたんです。入場して2時間、ずっとキャンセルを繰り返していた彼のそんな姿に、嬉しさがこみ上げてきましたね。

成功体験を積むことができたんですね。保護者の方の反応はいかがでしたか。

Akiさんとても喜ばれて、「親が『できないだろう』といって体験の機会を奪ってはいけませんね。発明工房も難しいかなと諦めかけていたけれど、最後までやり通すことができて安心しました」とおっしゃっていました。

発明工房

こどもだけでなく、親にも発見や変化があるのですね。

Akiさん発明工房には、長い時間をかけて集中して飛行機作りをするお子様がいます。保護者の方は、我が子が周りの子より進行が遅れると心配したり、よかれと思ってアドバイスをしたりしますが、私は没頭することが“考える力”を十分に発揮している証拠だと思うので、体験後、保護者の方に「発明家として、お子様の姿勢は素晴らしかったです。諦めない心があるからこそ、ずっと飛行機に向き合っていましたね」と伝えます。すると目から鱗が落ちたように「そういう見方があるんですね」と驚いてくださいます。キッザニアは、こどもの体験を通して、大人が違う角度から我が子の力に気づいたり、職業への意識をほんの少しだけ変える可能性がある場所だと感じています。

年齢が小さくても得られる大きな自信

こどもが安心して楽しみ、その経験が親にもさまざまな気づきを与えることが分かりました。「まだ早いかな」と足踏みしてしまう保護者の方に向け、メッセージをお願いします。

Akiさんキッザニアの魅力は、本物に触れる体験ができることです。緊張感や楽しさ、ときには悔しさも味わい、感情の起伏があるからこそ印象に残る体験ができます。異年齢の子と協働し、年上の子から「小さい子がこんなにできるなんてすごいね」と言われると、お子様にとって大きな自信につながります。
不安を感じても、お子様の背中を押してあげてほしい。保護者の皆様にも、私たちスーパーバイザーとともにフォローする側に立ってくださると嬉しいです。

キッザニアの魅力は、本物に触れる体験ができることです

未就学児におすすめのパビリオン

ガードマン

ママと離れられない!
そんなお子様に

  • パビリオン警備センター
  • アクティビティガードマン
  • 仕事内容キッゾや貴重品を回収して金庫室やパビリオンに輸送し、保管する。厳しい訓練を受けたガードマンとして、「お客様の大切な財産を守る」という重要な任務をやり遂げ、責任感やチームワークの大切さを学ぶ。

Akiさんガードマンというと難しいイメージがあるかもしれませんが、未就学児にはぜひおすすめしたいですね。仕事体験の約30分のうちパビリオンの中で活動するのは10分程度で、挨拶や警備のレクチャーはパビリオンの外で行います。保護者の方が近くで見守ることができるので、離れることに不安を感じるお子様に向いていますよ。仕事には警備や輸送、トランシーバーを使った連絡などがあり、一人ひとりに役割が与えられるので、やりがいがあります。

ミルクフードマーケター

自由な発想を
チーズケーキのトッピングで表現

  • パビリオンミルクハウス
  • アクティビティミルクフードマーケター
  • 仕事内容お客様が喜ぶ乳製品の新商品を開発。自分でトッピングを考え、「商品開発シート」にまとめる。
  • 施設の特徴併設している「乳幼児エリア」では、粉ミルクや離乳食を提供している。また、調乳・離乳食用の電子レンジも設置。

Akiさん季節毎に設定されたテーマに合わせて、新商品のチーズケーキのトッピングを考える仕事なのですが、生クリームをふんだんに盛りつけて雪だるまを表現したり、缶詰のミカンを使って月に見立てたりするこども達がいました。アイデアを自由に形にすることができ、こどもの創造力を発揮できるパビリオンだと思います。

お馴染みの絵本や図鑑が作れる
新パビリオンが12月17日にオープン!

出版社

世界に1つだけの本を作ろう

  • パビリオン出版社
  • アクティビティ編集者
  • 仕事内容出版社の仕事内容と編集者の役割を理解し、図鑑または絵本の編集に挑む。
    図鑑「講談社の動く図鑑MOVE」をベースに、大迫力の生きものの写真を使用して見開きを編集し、1冊の図鑑を作り上げる。
    絵本さがしもの絵本「どこ?」(作:山形明美)のページ作りに挑戦。ジオラマの森の中に“さがしもの”となるアイテムを配置して撮影し、オリジナルの「どこ?」を完成させる。

Akiさん図鑑と絵本で受付時間が分かれるので、まずはどちらかを選びます。図鑑の編集では、読者が“あっ!”と驚く大迫力の生きものの写真から、「魅力的!もっと知りたい!」と思う写真を選び、見開きページを編集します。絵本のジオラマの撮影では、読者が何度も探したくなるような場所を考えてアイテムを配置してもらいます。
図鑑と絵本どちらとも専用のタブレットを使って表紙を編集し、世界で一冊しかない自分だけの本を完成させるので、保護者の方もこどもが編集した本にきっと夢中になるはずです。
また、こども達には好奇心を持っていろいろなことに向き合うことの大切さや本をつくる喜びを感じてほしいですね。私がスーパーバイザーを務めますので、ぜひお越しください。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:KCJ GROUP INC.