「生き方を学ぶ」IBDP導入2年目の手応え

IBDP導入2年目の手応え

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茗溪学園中学校高等学校が国際バカロレア(IB)認定校となり2年目を迎え、確かな手応えをつかんでいます。そこで、実際にスタートして実感したことや授業内容など「茗溪学園独自のIB」を徹底的に解剖。そこから見えたのは「生き方を学ぶ」教育でした。

国際バカロレア教育の魅力

IBDPコーディネーターとしてカリキュラムの作成・評価をはじめとした重要な役割を担っている、入試部長の松﨑秀彰先生にお話をうかがいました。

世界標準の大学入学資格ともなるIB教育の導入を推進した松﨑秀彰先生
世界標準の大学入学資格ともなるIB教育の導入を推進した松﨑秀彰先生。

松﨑先生:茗溪学園では、2017年度から高校IBDPコースがスタートしました。IB認定校の指定を受ける前から本校では、高校2年生からUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)の奨学生への合格・留学という形で、すでに50名を超える生徒が海外でIBを受講していました。宇宙飛行士の星出彰彦さんもその中の一人です。UWC生からはIB教育の利点なども聞いておりましたし、本校の「全人的教育」や、知識を得て思考して発表するサイクルで「他者に伝えられてこその知識」という考え方を身につける点、体験を重視する点、課題論文を課している点などさまざまな要素が、IB教育と共通していることも分かりました。
2013年にこれまですべての科目を英語で受講する必要があったIBのプログラムを日本語で受講できるようになりました。本校でも多くの教員がIB資格を取得するためのワークショップに参加するなど(これまでに専任教員約70名のうち40名を超える教員がIB教員資格を取得しています)準備を重ねた末、晴れてIB認定校となり、高校生を対象としたIBDPコースをスタートさせました。

本校は、困難に挑戦する意欲や自信をつけさせる教育を進めてきました。教科にとらわれず、勉強、運動、芸術などをバランスよく学ぶだけでなく、行事を通して成功体験を積み重ねることも重要視してきました。こうした本校の教育を活かしながらIBを進められることは生徒にとって大きなメリットになるでしょう。将来、社会で生きていく上で必要な力、国境を越えた知識、教養が身につくIBを導入したことで、より高いレベルの挑戦が可能になりますし、IBDPコース以外の生徒にも応用できる学習のチャンスが広がると考えています。

生徒が“世界を変える”可能性

茗溪学園のIBDPコースではどんな学びが実践されているのでしょうか。その一端をご紹介いただきました。

M-CAS(茗溪学園キャス)の一部
生徒が自主的にアイデアを持ち寄って実施されたM-CAS(茗溪学園キャス)の一部。SSH指定校らしい理系のアイデアも多く見受けられます。

松﨑先生:実際に、IBのコア科目の一つにCAS(キャス)という科目があります。Creativity(創造性)、Activity(行動)、Service(奉仕)の頭文字をとったもので、生徒自らが課題を考え、行動に移し、体験から知識を得て、より深く自分を知るためのプログラムです。この考え方や評価方法を利用した、IB生以外も対象としたM-CASという企画を高1全員を対象に募集したところ、多くの希望者が集まり、福祉施設で音楽を演奏して交流するプログラムや双子についての調査をするなど生徒からさまざまなアイディアが出てきました。これまでも行事や体験を通した学びは重要視していましたが、M-CASを通して自律・自立させることで内発的な動機付けも高まることも分かってきました。今年は、中3から高2までM-CASの対象を拡大し、生徒のチャンスを広げていきたいと考えています。

IBDPコースは高校生のコースですが、中学では「グローバルコース」を設け、英語の授業を全て抜き出しで行い、その一部の授業でIBの学び方を導入しています。ペアでパラシュートを作って落ちる時間を測定し、ポスターを作り結果発表、といったことも行っています。その他の授業でも中学・高校共に一部IBの手法を取り入れたものも見られます。例えば、理科では、生徒自身がどんな実験をするかをデザインしたり、数学の統計の授業では、ペアになって比較するトピックを考え、実際にアンケートで調べて発表するような授業もありました。生徒自らが考え、学びたいことをデザインしたり、個人の持っている知識と新しい知識を結び付けさせることも重要なポイントです。
日本では深い知識を身につけることが重要視されがちですが、IBでは知識を活用するためのプロセスやスキルを重要視しています。本校ではこの両者の違いは「優劣」なのではなく、あくまでも選択肢としての「違い」だととらえています。どちらの授業でも自ら考え他者に知識を伝える取り組みでは、生徒にとって大変な作業だと思いますが、とても生き生きした表情を見せていますね。

旧来の授業イメージが覆されるハイレベルな授業

文系と理系の2クラスに分かれた授業を見学させていただきました。

大学ゼミ相当の高レベルな日本語授業
文学作品を一冊読み通して、記された文化的背景までをも考察する、大学ゼミ相当の高レベルな日本語授業。

松﨑先生:先ほど見ていただいたのは、「日本語文学A」という授業です。ギリシアの悲劇「オイディプス王」の翻訳小説を題材に、各生徒が場面を分析して発表し、生徒同士で議論するゼミ形式の授業です。この授業では、芸術性を教養としてとらえているだけでなく、分析して発表するという目的もあります。その文学が成立した時代背景、社会、文化に注目し、なぜ悲劇がその時代に受け入れられたのか、現代の文化と共通するものはあるのか、など多角的に考察します。IBDPコースでは、2年間で10~13作品を扱いますが、それぞれ1冊の文学作品を一部のみでなくすべて通して読みます。最終的には口頭試問やプレゼン、論文と文学評論を書く記述式テストなどでIBより評価をもらいます。授業を通してこれらの評価に向けての練習をしていきます。

高校生のうちにレベルの高い授業が受けられる!
高校生のうちにレベルの高い授業が受けられる! 生徒の皆さんが羨ましくもあり、心強くも感じられる授業見学でした。

だからこそ、IB教育では常に生徒が主体となり、考察し自ら発表することで知識を身につけていくことが重要視されています。これは、「生き方を学ぶ」ことに等しいと考えています。自分自身の人生をどうデザインしていくのか。自分の選択次第で人生は変えられるということを本校で体験し、自信を持って社会に出ていってほしいのです。

編集者から見たポイント

日々刻々と変化している社会で生きていくために、子どもはどんな力を身につける必要があるのか。IB教育は、時代に対応すべく毎年のようにカリキュラムが更新されているほか、評価方法も厳密に細かく定められているそうです。つまり、先生方も常に勉強することが必須となります。現在、45人の先生がIBの資格を取得し、生徒の学習をサポートしています。生徒が自信を持って考えを発信できる教育、生き方を学ぶ教育が、茗溪学園にはあります。