他校を圧倒する茗溪学園の理数系プログラム

他校を圧倒する茗溪学園の理数系プログラム

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「科学技術人材の育成・探求力に富む人材の育成」を目的に文部科学省が指定しているスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)として、8年目を迎えた茗溪学園中学校高等学校(以下、茗溪学園)。高大・高研連携や個人課題研究などに代表されるハイレベルな活動で実績を残してきました。今まさに円熟期を迎えているカリキュラムへの取り組みについて、SSH推進委員長である宍戸雄一先生にお話をいただきました。

全校生徒のメリットになるSSHカリキュラムの魅力

たくさんの来場者を前にして研究発表を行う生徒たち。
たくさんの来場者を前にして研究発表を行う生徒たち。

インターエデュ(以下、エデュ):まずは、SSH指定校となった経緯を教えてください。

宍戸先生:本校では創立以来、科学教育で「本物に触れる」ことを重視し、実験やフィールドワークを多数行ってきました。本校の目指す人材が、まさにSSH事業の目的と重なっていたということになります。また、筑波研究学園都市に位置する一条校として、研究結果を外部に広く発信していきたいと考えたことも理由の一つです。

エデュ:指定されてから7年、既に始まった2期目に挑むゴールを教えてください。

宍戸先生:現在の目標は、「個人課題研究」を中心に据えたカリキュラムにより、生徒全員の探究力を高めていくことがまず挙げられます。それに加え、高2・高3の数学・物理・化学・生物で少人数を対象とした新たな科目を設置することを決めました。それによって、力のある生徒や強い意欲を持っている生徒をさらに伸ばすためのカリキュラム開発を行うことを目標としました。全員の力を伸ばす部分と、意欲のある生徒をさらに伸ばすという両面でアプローチしていく考えです。

2011年から続くSSH指定校としての取り組み ≫

ユニークな理数系カリキュラムとさらに発展する個人課題研究

個校外に向けて発表される個人課題研究の結果
校外に向けて発表される個人課題研究の結果。(写真は2017年度のもの)

エデュ:個人課題研究について1期目の研究開発から進化した点を教えてください。

宍戸先生:SSH指定校として、生徒に探究力を身につけさせることは重要な目的です。生徒たちが将来向き合っていく問題を解決するための汎用的なスキルを習得させる必要があるからです。2期目となる今期は、取り組みをさらにブラッシュアップさせました。これまで「探究活動」を広く発表する場が高2の個人課題研究発表会に限られていたのですが、今回から高1でも「ミニ研究」という形でステップアップしながら翌年に備えられるようになりました。テーマは自由で、各自が好きなものを追究。全員がポスターにまとめ、発表会を行いました。生徒たちは、初めての研究ですのでうまくいかないことも多く、テーマ設定の仕方が大事であることを、身をもって知ることになります。テーマ設定、研究の実施、まとめ、発表の一連のプロセスを全員が経験することで、高2の個人課題研究の質がさらに高まることを狙いとしています。

今年度の個人課題研究では、6月の下旬に中間発表会を行いました。初の試みで一般公開にしたのですが、各地の大学の先生やSSH指定校の先生方を含め、約700人が出席されました。「中間」発表ということで、自分の研究に何が欠けているのかを知り、今後の研究につなげることが主な目的だったのですが、発表終了後に生徒が述べていた感想を聞いて、まさにその目的が達成されていると感じました。

研究発表のテーマは「活性酸素による寿命の変化」や「フェルメールの光の表現」など多岐にわたります。
研究発表のテーマは「活性酸素による寿命の変化」や「フェルメールの光の表現」など多岐にわたります。

また、高校での取り組みだけでなく、中学段階でも「総合的な学習の時間」を用いて、グループ研究や個人研究に積極的に取り組んでいます。生徒たちは自分に興味があることを調べ、発表することがとても好きで、いきいきとした活動の様子を見ることができます。茗溪学園における個人課題研究は、問題発見力や問題解決力、表現力や論理的思考力を高めるだけではなく、生徒が自分自身の進路を考えるための仕掛けとしても捉えています。生徒は自分が設定したテーマ(方向性、分野)が本当に自分に向いているかどうか、自分がモチベーションを保って取り組めるかどうかを体験的に知ることになります。結果的に「自分には合わなかった」というケースもあるでしょう。深く探究してみなければ、本当に自分に向いているかどうかなどはわからないからです。その経験によって、生徒は大学入学をゴールとすることなく、より長いスパンで自分の進路を捉え、大学に進み、学び続けることができると考えています。

エデュ:数学・物理・化学・生物の探究科目について教えてください。

宍戸先生:今年度からスタートしたばかりですが、少人数のメリットを活かし、深い内容の学習ができています。文科省は「Society5.0に向けた人材育成」と題する政策提言をまとめ、この中で、Advanced Placement(AP)を今後、日本の高校教育に導入していく考えを示しています。探究科目でも積極的にAPの内容を扱っていきたいと考えています。別の言い方をすると、現行の学習指導要領の枠を超え、高大接続を意識したカリキュラム開発を目指すということです。

筑波大学をはじめとした難関大への進学実績 ≫

SSHのカリキュラムで成長した生徒の姿

屋外でのフィールドワークによる研究も大切な活動のひとつ
屋外でのフィールドワークによる研究も大切な活動のひとつ。

エデュ:数多くのカリキュラムを通して実感した生徒の成長はありますか。

宍戸先生:生徒は発表に向けて準備がさらに増え、とても忙しくしています。しかし、プレゼンテーションの経験から学ぶものは多く、生徒たちは楽しみながらプレゼンスキルを高めることができています。また、ポスターやパワーポイントを作成するためには、PCを扱うスキルも必要であり、茗溪学園のカリキュラムの中で、自然にそれらのスキルが高まっていきます。個人課題研究のように全員必修のプログラムはありますが、希望者対象のプログラムもたくさんあります。屋久島研修、海外研修、大学の研究室訪問、科学オリンピックへの挑戦などです。希望者対象のあらゆるプログラムを経験した生徒が「この学校は宝の山ですね」と話していました。多くのプログラムから学べるものはたくさんありますが、自分が何を学んだかを他者に表現することができ、自分がどうあるべきかが徐々に明確になっていくところにプログラムの成果、生徒の成長があるように思います。そういう意味では、カリキュラムの成果は生徒の進路意識と強く関連すると思います。

また、筑波大学と連携して高1で進路講演会を実施しています。大学全般の説明、文系・理系それぞれの先生からの全体講演、さらに分科会。分科会では約10程度の学群・学類の先生が来校し、学問領域の説明などをしてくださり、今後進むべき方向性を考えていく生徒たちに対してアドバイスをしてくれます。ここにTA(Teaching Assistant)として、茗溪学園の卒業生が積極的に関わってくれることもあります。生徒に供給されるプログラムは数多く、多岐にわたっています。

研修のようす2
校内でも学年の枠を超えたプレゼンテーションによる知識の共有が図られています。

エデュ:SSHに携わる先生方が指導する際に工夫していることはありますか。

宍戸先生:校内で行われる教員研修会の中で、個人課題研究の指導スキルを高める研修や勉強会を開催しています。個人課題研究では定量的なデータを処理し、考察していくことが求められるため、統計分野についての知識が豊富な教員が講師となって、教員向けにレクチャーを行うこともありました。また、個人課題研究の指導実践例などを紹介し合う有志の勉強会もあり、ベテランから若手まで、学び続ける教員集団を目指しています。

SSH関連の活動報告一覧 ≫

編集者から見たポイント

生徒たちが将来向き合うことになるさまざまな問題を解決するためのスキルを高めることを使命としている茗溪学園では、全員必修の個人課題研究を軸にしてスキルを磨いています。次回の連載では、こういった学習面を環境や精神的な側面から支える「寮」での生活について詳しくご紹介します。どうぞご期待ください。

学校説明会・イベント日程

イベント名 日時
学園説明会
(中学校・高校入試説明会)
10月20日(土) 14:30~16:30
茗溪学園美術展2018 11月6日(火)~11日(日) 9:30~17:00

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