inter-edu’s eye

府中市にある明星中学校・高等学校は、創立90年を超える伝統校です。新クラスや進路指導改革など、「変わる明星」という言葉に代表されるように変革期を迎えていますが、その一方で変わらず大事にしていきたい「凝念(ぎょうねん)」という脈々と受け継がれる教育理念があります。初回となる今回は、明星の根幹となる「疑念教育」に注目します。

12歳から104歳まで共有している「凝念」

中村賀一先生
お話をうかがった中村先生

姿勢を正して、心を一点に集中。そして、「凝念!」の掛け声とともに授業が始まり、授業が終わります。「凝念」とは、精神集中の一つで、「すべての始まりと終わりの切り替えに『凝念』という言葉を発して心を落ち着かせることで、勉強やスポーツに真剣に向き合うことができます」と教頭の中村賀一先生はその効果について説明しました。

心の成長にもつながる「凝念」の教えは、明星の創立以来脈々と受け継がれてきました。中学1年の12歳から1期生である104歳まで「共通言語」として心の中に生き続けているものでもあります。校舎や制服、周りの景色が変わっても、変わらない「凝念!」の声。80~90代の卒業生が学校に来て、「私たちが通っていたころと変わらない」と笑顔を見せる光景は、ほかの学校にはない明星ならではのシーンでしょう。

長い歴史が点ではなく、線でつながっていること、そして愛される学校であることが「凝念」の言葉の中に詰まっているのです。

地域の人にも見守られる環境

生徒たち

物の見方や考え方、価値判断など、「凝念」を通して育つ力はさまざまです。

入学当初、慣れない生徒も毎日、掛け声を繰り返し、精神を集中させることで次第に心が落ち着くようになるといいます。
「挨拶や、電車でお年寄りの方に席を譲るなど当たり前のことが自然とできるようになる」と中村先生は、生徒の日々の変化を実感しているそう。その成長は、学校内だけでなく近隣の地域の方々も実感しているそうで、「春は、なかなか落ち着かなかった生徒も秋になると落ち着くようで、次第に心温まるエピソードが増えるようになるんです。地域の方からお褒めの言葉をいただくんですよ」と目を細めます。
凝念教育には「生徒が自分で考えて行動してほしい」という思いが込められています。「バスや電車で席を譲ることもそうです。お年寄りが立っている姿を見て、気持ちを考える。すると、『助けたい』という気持ちが起き、席を譲るという行動に移すことが自然とできるようになるんです」と、中村先生。
こうした経験が生徒の自律と自立をはぐくむことにつながると明星では考えているそうです。

明星が目指す「手塩にかける教育」

手塩にかける教育

「凝念」と同じように変わらないもののひとつに「手塩にかける教育」があります。
その言葉の真意は「世話を焼き過ぎない」「手を掛け過ぎない」という思い。一人っ子が増えた現代では、すべてにおいて大人が助けてしまい、子どもの自主性が育たなくなってしまう可能性も考えられます。だからこそ、大人が世話を焼き過ぎず、優しい目で見守ることが必要であり、それが生徒の自主性をはぐくむことにつながります。

さまざまな体験を通して、自分で考えて行動する。その中で相談に乗ったり、背中を押したりすることが教員の役目である、と明星では考えています。
「時には生徒は失敗したり、つまずいたりするときもあるでしょう。そこで手助けしたい気持ちをこらえて、少々の寛容さを持ちながら生徒が一歩踏み出す瞬間を見守りたいと思っています」と学校全体で生徒の自主性の育成を目指しています。

変わらない芯の部分を持ちつつ、現代の子どもが取り巻く社会や時代の変化に応じて、変えた方が良い部分は変えていく。そのスタイルが明星には確立されています。

編集者から見たポイント

景色が変わり、制服が変わっても、色あせることなく続いている「凝念」の教え。科学技術が進歩し、次々と新しいものが生まれる現代の中であっても、こうした伝統は少しも薄れることなく心の中で大切に息づいています。世代を超えてひとつの言葉を共有できるというのは、学校の大きな財産ではないでしょうか。
新しく進化していく取り組みが、同校の「変わらないもの」と混ざり合うことで、どんな独自の教育が展開されていくのでしょうか。これからの連載で追っていきたいと思います。

注目のイベント日程

イベント 日程 時間
第4回 中学校説明会 6月17日(土) 14:00~
第5回 中学校説明会 7月1日(土) 14:00~
オープンキャンパス 7月16日(日) 9:00~15:00