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特別鼎談 神奈川県立保健福祉大学 x ena新セミ

ヒューマンサービスをミッションとし、保健・医療・福祉に貢献する人材を育成する神奈川県立保健福祉大学。保健福祉学部のリハビリテーション学科には理学療法学専攻と作業療法学専攻があります。地域に根差した公立大学には、どのような学びの環境があるのでしょうか。両専攻長にご登場いただき、巻頭特別鼎談をお届けします。

学生の意欲向上!理学は1年次に現場見学
作業は調べ学習の成果を高校生に向け発表

ena新セミ 森田 亮先生(以下、ena森田):まずは各専攻の4年間の流れと特徴的な学びをお聞かせください。

理学療法学専攻長 仙波 浩幸先生(以下、仙波先生):1年次で基礎科目と一般教養科目を、2年次で専門基礎科目を、3年次以降は専門科目を中心に学びます。特徴は早い段階で現場を知る機会があること。1年次の夏休みに見学実習を行い、現場体験をさせて学生のモチベーションを高めます。また、専門科目のほとんどがアクティブラーニングです。これを実現できるのは、ひとえに優秀な学生が揃っているから。卒業時には高い技能を身につけて社会に羽ばたいていきます。

作業療法学専攻長 森田 千晶先生(以下、森田先生):疾病や患者さんに対する理解を深めるために、1年次に「作業適用学」という授業があります。学生はグループになり、症例が掲載された事例集を見ながら、ある人がどんな症状や障がいを持ち、どのような治療とリハビリが行われたのかを調べてPowerPointでまとめます。そして夏のオープンキャンパスで高校生に向けて発表するのです。2年次の後期からは実習が始まり、3年次以降は総合実習・評価実習・地域リハビリテーション実習と現場での学びが増えます。実習を4年次の前期までに済ませて、後期は卒業研究と国家試験対策に本腰を入れます。

ena森田:1年次から現場や支援する方への理解を深める機会があるのですね。国家試験といえば、貴学は理学療法士・作業療法士のどちらも前回試験で合格率100%の実績を誇ります。

国家試験合格率100%の実績
模試と対策講座で備えは万全

仙波先生:リハビリテーション学科では、学生が本番までに何度も模試を受け、教員は国家試験対策講座を10回ほど行います。一人で勉強するのは精神的にも身体的にも負担が大きいので、「学年みんなで乗り越えよう」という雰囲気をつくり、学生同士のグループ学習を推奨しています。ちなみに理学の模試は10回あります。

森田先生:作業の模試は8回です。落ち込んだり伸び悩んだりしている学生には、担当のゼミ教員が声をかけてフォローします。学年20名と少ないので、全員の状況を把握して適宜サポートすることができます。

鼎談のようす
左:仙波 浩幸先生(理学療法学専攻長)、中央:森田 千晶先生(作業療法学専攻長)、右:森田 亮先生(ena新セミ)

各専攻とも1学年20名!
少人数だからできる丁寧な指導とサポート

ena森田:国家試験が迫ってくると、学生は「一発で受からなければ」というプレッシャーで胃が痛くなると聞くので、メンタル面の支援は重要ですよね。それにしても、各専攻とも1学年20名の少人数制は大きな特徴だと感じます。

森田先生:4学年80名の学生に対して教員が10名おり、1学年に教員2名ずつの担任制をとっていて、不安を抱えている学生に対しては、月1回の面談をしています。

仙波先生:特定の研究をしたいという学生がいれば専門の研究所へ連れて行ったり、優れた研究をする学生がいれば全国レベルの学会で発表させたり。少人数だからこそ、能力や積極性のある学生の希望に応えることができています。なお、同じ学科のため作業療法学専攻との関係性は濃く、さらに同窓会が頻繁に行われ、縦と横のつながりは非常に充実しています。そのうえ本学は神奈川県立のため、実習を通じて県内各地の施設と良好な関係にあり、多い年では9割が県内の病院施設に入職します。地域とのつながりも強みといえるでしょう。

全員が学ぶ「ヒューマンサービス」
全人的に支援する医療人へ

ena森田:ほかにはどのような強みがありますか。

仙波先生:学生を持たず、一般教養科目を担当する専門部署・人間総合科があり、多くの教員が在籍しています。このため、一般教養科目はどれを選ぶか迷ってしまうほど種類が豊富です。また、1年次には学生が学科を超えてともに学ぶ「ヒューマンサービス論I」に多くの時間を充てています。さまざまな職業を理解し、一人の人間を全人的に支援するのがヒューマンサービスの考え。よって、本学には専門領域だけでなく、幅広い分野を勉強できる環境があり、理念に則った〝患者を一人の人間として支援できる理学療法士・作業療法士”が育ちます。

ena森田:最近はどのような授業が学生に人気でしょうか。

森田先生:作業でいうと、「園芸療法」は人気が高いですね。私が担当している「ハンドセラピー」は、理学の学生がほぼ全員受講した年がありました。「音楽療法」は高校生も気になるようで、入試の面接で「音楽療法を学びたい」と話す受験生がいましたね。学科を問わず、多くの科目で聴講や履修が可能なので、社会福祉学科の学生が作業療法を知りたいと「作業療法概論」を受講したこともありました。

仙波先生:通う養成校によっては、作業療法の授業を全く受けずに理学療法士になることがあります。しかし、理学療法士と作業療法士はリハビリを進める中で親密な関係にある。リハビリはチームで行うわけですから、そのチームを構成するメンバーがどんな仕事をするのか、専門領域の教員から学ぶことは重要だと考えます。

ena森田:チーム医療に貢献できる人材が育つ環境がうかがえます。先ほどのお話にもありましたが、県立大学ならではのネットワークを活用し、2022年は貴学全体で就職率も100%の実績がありますね。

義肢装具学(作業療法学専攻)の授業
義肢装具学(作業療法学専攻)の授業では手の装具を製作します

地域のネットワーク活かし就職率も100%
作業療法士の大いなる可能性に期待

仙波先生:理学では7~8割が医療機関に入職し、残りは教員になったり、スポーツトレーナーになったりしています。

森田先生:ぜひ多くの方に知っていただきたいのですが、作業療法士には、医療はもちろん福祉や教育現場など多種多様な場で活躍する可能性が秘められています。日本の作業療法はアメリカの作業療法をモデルに発展してきた歴史があり、アメリカでは刑務所で社会復帰の就労支援をする作業療法士がいて、日本でも同様の仕事に就いている方が数名います。また、神奈川県には警察署で働く作業療法士がいて、運転免許センターで高齢者や障がいを持った方を対象に免許の更新が可能か評価しています。そして、作業療法は精神科領域にもルーツがあり、本学には精神科領域や発達領域を専門とする教員がそれぞれ在籍しています。精神科領域専門の教員は横須賀市の自殺防止活動に携わっていますし、発達領域でいえば児童の発達障害についてアドバイスを求められることが増えています。

ena森田:近年、注目されている分野ですよね。作業療法士は今後、選択の幅が広がっていくだろうと強く感じました。世間一般の方にとって、作業療法士の多様な可能性はあまり知られていないと思います。医療職を目指す中高生にこのような情報が行き渡れば、志望者が増えるのではないでしょうか。職種理解の推進は、医療専門予備校である我々が担うべきことだと痛感しています。では最後に、リハビリ職を目指す学生にメッセージをお願いします。

森田先生:作業療法士は将来性があり、多くの方を支援できる有意義な医療職です。理系分野が苦手でも大丈夫。精神面でのサポートも多いので、心理学に関心のある学生にもおすすめです。

仙波先生:チーム医療が主流の今、本学では理学療法士の能力を持ったうえでチームのリーダーになれる人材を育てています。「リハビリを極めたい」「先駆的な理学療法を学びたい」という方は、本学でともに学びましょう。

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