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前回では、中高一貫校になった成立学園中学・高等学校(以下、成立学園)の大学合格実績が、大きく伸びていることが分かりました。今回は、その理由のひとつである、「中だるみ」と呼ばれる学力低迷期を克服する取り組みに注目。高校生になったばかりの生徒と、学年主任の西田先生にインタビューを行いました。

「なぜ勉強するのか」に気づく卒業論文

中高一貫生の学力推移イメージ図

みなさんは「中だるみ」という言葉をご存じでしょうか?
中高一貫校では高校受験がないこと(内進)による油断や馴れから、勉強不足に陥ったり、やる気が欠けてしまうことがあります。この状態が「中だるみ」と呼ばれます。

この中だるみ対策として、成立学園で行っているのが「卒業論文」です。中学3年になるとすぐに、将来就きたい職業について資料の収集から現場調査まで半年以上をかけて行い、読んだ相手に伝わるように構成した卒業論文を執筆します。「働くということ」をしっかりと考えるキャリアデザインは、生徒たちにどのような影響を与えているのでしょうか。今年、高校1年生になったHさんとTくんに教えてもらいました。

高校1年生 Hさん
高校1年生 Tくん

“役に立ちたい”という思いから生まれる目標

高校1年生 Hさん

インターエデュ(以下、エデュ):就きたい職業を決めたきっかけを教えてください。

Hさん:ドラマの中で活躍するグランドスタッフ(空港の地上勤務職員)に憧れていましたが、理系の私でも大丈夫だと進路指導の先生からアドバイスをもらって決めました。飛行機1機を飛ばすためには何百人もの力が必要という話を資料などから見聞きしたので、私もその中の一人になりたいと思っています。

キャリア講演会

中学校全生徒を対象とした「キャリア講演会」の様子。多くの体験授業やキャリア教育を通じて、中学生のうちに職業観を身につけていきます。

Tくん:「自分たちのことを見てくれている“先生”ってどんな職業なんだろう」と思ったのがきっかけでした。“先生”は大変な仕事だと感じているので、迷いもありましたが、卒論を仕上げていくうちに、覚悟ができました。

エデュ:卒論を書くにあたり、気をつけたことは何ですか?

Hさん:元グランドスタッフの英語の先生にインタビューし、仕事のいいところばかりだけでなく、大変なところもしっかり聞きました。コミュニケーション力が問われる接客業なので、お客さまを知るためにも、社会のいろいろなことに関心を持つことが大事だと教わりました。

将来の目標があるから今すべきことが分かる

高校1年生 Tくん

エデュ:卒論で目標を決めた後、勉強面に変化はありましたか?

Tくん:ありました。自分が教えたい教科の勉強も必要ですが、それだけでは知識の範囲が絞られてしまうことに気が付きました。得意な科目や必修科目に限らず、視野を広く持って勉強しています。

Hさん:英語が話せないと就けない職業なので、家で英語のDVDを見たり、CDを聞いたりするようになりました。TOEICで必要なスコアが取れるように、もっと英語に慣れていく必要があると思います。

卒論発表会

中学生全員と保護者の皆さんを目の前にして、自らの卒業論文をパワーポイントでプレゼンテーションする「卒論発表会」。

エデュ:卒論発表会の前後で「自分自身の成長」を実感したことはありますか?

Tくん:中学1年から3年まで中学校の全員が集まる前で発表するのですが、目指す職業をみんなの前で宣言するので、友だちと将来の目標を共有できて勇気づけられました。
今の自分に足りない勉強内容を、目標と照らし合わせて自分で考えることができるようになりました。

卒論の目的は将来を考えるキッカケづくり

学年主任 西田喜肥先生

「卒論発表は、高校でこうしたいという意思表示です。」
そうお話しされるのは、学年主任の西田喜肥先生です。目標を共有することで、生徒たちに「みんなが頑張るから、自分も頑張ろう」という気持ちが生まれるといいます。
そして、職業を調べていく中で、その職業に就くにはどういう資格が必要で、それを取得するにはどんな大学が適しているのか逆算していくため、今、勉強する目的が明確になるのです。

「進学の目的がはっきりしているので、普段の勉強に対する意欲も変わります。」と西田先生。例えば、毎日実施する英語の朝テストでも、以前と違って自分自身でしっかり復習できているおかげで、全員が合格する回数も増えたとお話しされていました。

学年主任 西田喜肥先生

また、中高一貫生については、「高校1年生になった内進生は、一番レベルの高いコースに入りますが、7月の期末テストではほぼ全員の平均点が上がる傾向があります。勉強をしようという意識が高いので、成績順位の高い位置を占めるんですよ。」とのこと。

成立学園では、今年卒業した中高一貫教育の1期生たちが、大学合格実績を大幅に伸長させています。西田先生のお話からも、“躍進の背景に卒業論文を土台にしたキャリアデザインあり”、と断言できるでしょう。

編集者が見たポイント

成立学園では、1年生のうちから多くの体験授業や職業体験を通して、本物に触れることができますが、生徒たちは、それらの体験から自分のキャリアと真剣に向き合い、卒論を完成させていきます。中学生のうちに、職業観を養いながら大学進学まで意識するので、目標達成に必要な学力向上に集中できるのです。これが、成立学園流の学びの一環なのですね!